第2章 FILE22:内乱12 決戦前 中編
「アイオリア様……」
「ヒルト? 前にもいったけど、言いたいことは、どんどんいって欲しい」
遠慮がちにヒルトが口を開いた。
「あ、あの、5,000の兵をそろえるなら、力押しの方がいいじゃないですか?」
「うん、ウチの部隊の練度が高ければ、それでもいいんだ。どんな奇策を駆けられても、整然と 対応できればいいのだからね。数の力は無視できないが、質が悪すぎては話にならない。先の戦闘で僕がやったとおり、ちょっとした奇襲で総崩れになる」
アイオリアはリュエルとヒルトに、地形図の模型を動かして説明を続ける。
「練度の高い部隊相手に、むろん指揮官の資質も必要だけど、同じ作戦を取れば…… そうだな、僕なら左翼部隊の半数で壁を築き、残り半数で包囲殲滅する作戦を取る。奇襲をかける方が、圧倒的に兵力は少ないからね」
アイオリアは奇襲を受けた部隊の模型を動かし正面の敵に当たる部隊と、奇襲をかけた敵を食い止める部隊に分け、地形図の上に配置しなおす。
「練度が高い部隊なら、相手より多い兵力をそろえての力押しでもいいんだ。だけど、相手の方の練度が高ければ、つけこまれるだけだし、今回は寝返った部隊もいるわけだしね」
「アイオリア様は、そこまで考えていたのですか?」
横から、リュエルの声が上がった。
「リュエル、視野は大きく持て。小さい事に気がつく洞察力は必要だが、全体の動きを見て判断しないと、つけ込まれる隙を作ることになるぞ」
「はい、心にとめておきます」
ヒルトはアイオリアを見上げている。
「アイオリア様には、秘策があるのですか?」
今回の作戦のことだろう。出来るだけ被害を少なくしたいから立てた策だが、それほど複雑なものではない。
「秘策というほどではないよ。今、考えているのは単純な作戦だ。そうだ、今の状況から僕がどのような作戦を考えているか当ててみてくれ、宿題だ。期限は作戦が発動されるまで」
リュエルは、しまったという顔をしたが、ヒルトはいつものように無表情だ。
「そんな顔をするな。誰かの助けを借りてもいいぞ。人に助けてもらう事は恥ずかしい事ではない。助けてくれる人がいるということは幸せな事だよ。それに私の考えに近い答えを出した方に賞品を出そう」
「本当ですか?」
喜色を浮かべるリュエル。
「あ、あの、わたし、欲しいものがあるのですけど、それでも、よろしいでしょうか?」
ヒルトが自分からこのような事を言うのは珍しい。
「わかった。欲しいものを贈ろう」
アイオリアは2人に微笑みながら言った。
次回予告
嫌がらせのような攻撃。
その攻撃にコウレクト砦の反乱軍は苛立っていた。
次回 内乱13 決戦前 後編
風は貴方にどんな物語を残しましたか?
次回はコウレクト砦、反乱軍側の描写になります。
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