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第2章 FILE17:内乱07 法の神官


 前方に村が見えた。記憶が確かなら、サラスという人口、100人ほどの小さな村だ。

「全軍停止」

 そう言ったアイオリアをリュエルがいぶしげにみた。副官であるシャリアールが、改めて全軍に停止を命じる。

「リュエル、ミュラー殿はどこにいる?」

「従軍神官殿は、補給部隊に同行なされています」

「すまないが、呼んで来てくれ。ひと仕事してもらう」

 リュエルが、馬を駆り後方に消えていく。

「シャリアール、村との交渉が終わるまでここで小休止だ。見張り以外は装備を解いても良いぞ」

 アイオリはヒルトの方を見た。いつものごとく表情を隠してはいるが、最近は微妙な変化で感情を読めるようになった。

「ヒルト、どうかしたのか?」

「……交渉事を任せるのに、ミュラー殿で大丈夫でしょうか? ミュラー殿は、フェン教徒以外には冷たすぎます」

 アイオリは少し困った顔をする。

「我が軍団の従軍神官はミュラー殿だけだしな。それに、彼女もプロだよ。仕事に感情は持ち込むまい」

「ですが…… いえ、アイオリア様が、お決めになられた事です。口が過ぎました」

「いや、気になったことは進言してくれ。皆の進言を無視するようになったら、僕も終わりだろう」

 アイオリアは、ヒルトにそう言って笑ったが、ヒルトは笑わなかった。




「ミュラー司祭様」

 リュエルが馬を降り女性の前に進み出た。ファン教の黒い神官服を着ている硬質の雰囲気の美人だ。雪のように白い肌とプラチナブロンドの髪が人目を引く。

「リュエル君、ご機嫌はいかが?」

「ええ、主の加護のおかげで良好です」

 リュエルの胸元で、本と剣を模したファン教のホーリーシンボルが揺れた。

「今日はどんな御用?」

 ミュラーがそう言って笑った。

「今日は仕事ですよ。アイオリア様が力を貸して欲しいそうです」

「やっと、初仕事ね。ここ一ヶ月、暇すぎて左遷させんされたかと思ったわよ」

「まだ新設されたばかりですから、それに勝戦が続いていますし、ミュラー様の仕事が少ないのも無理はありませんよ」

 だが、ミュラーはため息を吐いた。

「……ミュラー殿は、アイオリア様がお嫌いですか?」

 リュエルが不安げにミュラーに訪ねた。

「そうね。嫌いではないです。ただ、不本意なだけで…… 他の神を信仰しておられるのなら我慢できますが、よりにもよって無神論者なんて」

 リュエルは慌てて頭を振った。

「それは違います。アイオリア様は、ファン神やガイア神、その他の神々にも敬意を払っています」

「当たり前です。でも、ご本人はどこの神も、信じていないではありませんか」

 そう言って頬を膨らませるミュラーを見て、リュエルは苦笑を浮かべた。意外と子供っぽい所のある女性だ。

「でも、アイオリア様だと、シューフ教辺りに入信しそうですが…… それでもよろしいのですか?」

 リュエルはマイナーな神の名前を挙げた。

「風と自由の神…… 不本意ではありますが、今の状態よりはいいです」

 そう言って、憮然とした顔をするミュラーにリュエルは手を差し出した。

「そろそろ行きましょう。ミュラー様は、僕の馬に乗ってください」

 リュエルはミュラーを自分の馬に乗せると、手綱たづなを取って歩き出した。




 次回予告


 微妙なバランスの中で均衡が保たれる教会内。


 その中に均衡を破る一石が投じられた。


 次回 内乱08 狂戦士バーサーカー


 風は貴方にどんな物語を残しましたか?


うきゃー また新キャラ登場。

でも、ミュラーさんはほとんど脇役だろうなぁ。


次回はゼロが大暴走です。

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