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第2章 FILE16:内乱06 復讐の刃 後編

 フェンリアは男が振り下ろしたかまを、左手で払った。

「遅い!」

 フェンリアの拳が男の顎に突き刺さる。男の膝から力が抜け、カクンと崩れ落ちた。

「次!」

 フェンリアの声に、くわを持った青年が「はい!」と返事をして鍬を振り上げた。フェンリアの顔に苦笑が浮ぶ。普段は気の良い青年なのだろう。いちいち返事をして襲い掛かってくるとは……

 フェンリアは男の攻撃をひょいと避けた。次の瞬間、フェンリアの右足は青年の頭上にあった。修道服がめくれ露出したその形良い脚をそのまま、垂直に振り下ろす。ゴスっと、鈍い音がして、青年は白目をむいて崩れ落ちる。

「もっと、鍛えなおしてらっしゃい。次!」

 振り返ると誰もいなかった。いや、床を這うようにして、入り口に向かっている男の姿があった。

 フェンリアはため息を一つ吐くと、ツカツカと近づき、首根っこをつかむ。

「た、助けてくれ。俺は無理矢理、連れてこられたんだ!」

 フェンリアは泣き叫んで許しを請う、男の首に腕を回し耳元で囁いた。男の動きがピタリと止まった。

「ねぇ。教えてくれない。彼等に復讐しようとしているのはあなた達だけ?」

 男は首を振った。

「そうなの。他の人達はどこにいるの?」

「……教会」

「そう。ありがと……」

 フェンリアは腕に力を込めた。数秒後、頚動脈けいどうみゃくを締められオチた男が、床に転がっていた。

「さて、急がないと。ゼロ、早まらないでよ」

 フェンリアは服のほこりを払うと教会に向かい走り出した。




 ゼロは、困っていた。彼のまわりを村人が取り囲んでいる。若い男達が多いが小数、年配の男性や女性も居た。

 手にはかまくわ、棒きれ、中には古びた剣を持っている者もいる。

彼らの要求は、「村を襲った兵士達を、引き渡せ!」だ。

 個人的には引き渡してしまっても一向に構わないのだが、ここで彼らを引き渡すと…… 後が怖い。怒ったフェンリアと対峙するよりは、千人斬りやって見せろと言われた方が遥かにマシだ。

 かと言って、このままの状態を維持するのも難しい。その内に暴発するのは目に見えている。

「大人しく、渡せやゴラァ!」

 如何いかにも短気そうな青年が、角材かくざいを振り上げて襲ってきた。

 ゼロは三節棍さんせつこんで角材に鋭い一撃を加える。角材は乾いた音を立てて真っ二つに裂けた。それを見た青年が腰を抜かして床にへたり込む。

 村人達の包囲の輪が少しだけ広がった。だが幾人かの青年が、さやから剣を抜こうとしている。その様子を見たゼロは殺気のこもった声で言った。

「おい! それを抜くと、命のやり取りになるぞ!」

 青年達の動きが止まった。

 さて、どれだけ時間が稼げるか?

 純白の悪魔と呼ばれていた頃なら、悩む間もなく全員を斬り捨てていた。フェンリアと出会ってからはなるべく殺さないようにしていたが、このくらいの人数なら数分でカタが付くだろう。

 昔の方が楽だったと思う。だが、「信じているからね」と言って笑うフェンリアの笑顔が曇るのは不本意だった。




 次回予告


 村の近くまで進軍した正規軍。


 無用な混乱を避けるため従軍神官を村に派遣する。


 次回 内乱07 法の神官


 風は貴方にどんな物語を残しましたか?


フェンリアのブーツには鉄片が貼り付けられていたはずですが…… それが脳天に、ゴスッと…… 生きているか青年(笑


ゼロの三節棍は、棒状(こん)にすることも可能で、材質はミスリル銀。これはフェンリアからもらった物です。

フェンリアと出会う前はハルバードという、両手持ちのやりおのを合わせたような武器を愛用していたと設定です。

外伝3で、この辺りを書こうかと思っていたのですけどね。


さて次回は、アイオリア達に一旦戻ります。


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