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第2章 FILE11:内乱01 事の起こり

 門閥貴族フーリレイ=ニス侯爵が死去した事に端を発した内乱は、当初、短期間で鎮圧されると思われていたが、派遣されたリクトール上級千騎長じょうきゅうせんきちょう率いる兵3000騎が全滅したとの報告に軍上層部は蜂の巣をつついたようなありさまである。

「たかが2000の戦力に敗れたというのか」

「賊軍に魔族が居たとの報告もあるが……」

「リクトールのヤツも、情けない」

「相手は、たかが2000足らず、一軍(兵力10000)をもって当たればよい」

「2000の敵に10000も投入したら、いい笑いものだ」

「兵力の基本は、敵より大群をそろえることにある。名よりも実を取るべきだ」

「魔族への備えはどうする。和平どころか一時停戦も拒否したのだぞ。こちらから、頭を下げる事などできん」

 しばらく結論はでそうにない。その会議室の隅へ、カーラインはアイオリアを呼び出した。

「カーライン様、フーリレイ侯爵が叛乱を起こしたなど初耳ですが?」

「ルノア司祭が滞在しているからな、緘口令かんこうれいが出ていた。フーリレイ=ニス侯爵が亡くなったのは知っているな? 彼は公金を着服していて役人連中が口を出せないことをいいことに私服を肥やしていたのだが、侯爵が病により急死。せこい事に役人どもは息子のロレイ=ニスに、親の着服した公金の返還を求めたわけだ」

「せこいと言うより、情けないですね。それで、ロレイ侯は返還を拒否したわけですね」

 アイオリアがあきれたようにいうと、カーラインは頷いた。

「その通りだ。そして、リクトール上級千騎長じょうきゅうせんきちょうが派遣されたが全滅。本人も全治1ヶ月、兵も帰ってきたのは500足らずだ。リクトールも無能ではないのだがな」

 そこまで言うと、カーラインはアイオリアに意味ありげな視線を向けた。

「私にやれと?」

 カーラインは頷きつつアイオリアの肩をポンポンと叩いた。

「無理ですよ。我々の軍団は編成中で戦場に出せるのは2000ほどです。それに指揮官が居ません」

「大丈夫。アイオリア千騎長せんきちょう

「私は百騎長ひゃくきちょうですよ。カーライン公爵」

「褒美の先渡しだ。父上、いや、カーライル王には話を通してある。それに、リクトール配下の生き残りもつけてやるし、上手うま鎮圧ちんあつできたら上級千騎長じょうきゅうせんきちょうだ」

 アイオリアはため息をついた。

「それでも、千騎長が指揮できる兵力は1000ですよ」

 カーライルは苦笑して答える。

「俺には将軍の権限が与えられている。反則気味だがその指揮権を一部貸し与えるということで問題ない」

 それは反則気味ではなくて、反則だとアイオリアは思った。実際の戦場で上官が指揮を取れなくなった場合に、部下が指揮権限より多くの部下を統率しなければならない羽目になることがある。指揮権の『一部譲渡』または『貸し与え』というのは、その矛盾をごまかすための緊急回避的な処置に過ぎない。

 だが実際問題として現場レベルではよく行われていることである。これは階級の設定ミスだとカーラインは考えており、千騎長と上級千騎長の間に新たな階級を新設する必要があると軍上層部に何度も訴えている。

「その状況では、拒否権は無いじゃないですか」

「やれるか? アイオリア」

「やらなければならないでしょう。カーライン様、御考えのままに」

「すまぬな。苦労をかける」

 アイオリアは頭を振った。

「それは、カーライン様に剣と忠誠を捧げた時に、覚悟をしております」

「そうであったな。では、戻って部隊の編成を頼む。俺は頭の固いじい様どもを、黙らしてくる」

 2人は拳の甲をコツンとぶつけ合うと、それぞれのするべき事を遂行する為に別れた。




 次回予告


 アイオリアたちの前に立ちふさがった敵軍は、平民の寄せ集めだった。


 しかし、無視するわけにはいかないアイオリアは。


 次回 内乱02 緒戦


 風は貴方にどんな物語を残しましたか?


以前、以下の階級説明をしましたが。


上級将軍(軍の最高司令官)

将軍(1万以上の兵を率いることが出来る実戦部隊の長)

上級千騎長(1万以下の兵を統率。砦の指令官や地方の治安維持部隊長、後方支援部隊の長など)

千騎長(1千以下の兵を統率)

百騎長(100人程度の部隊を統率)

十騎長(10人程度の部隊を統率)


階級に関しては私の設定ミスですね。千騎長と上級千騎長の統率できる兵力数に差がありすぎです。


カーライル王子は王族であるため、将軍待遇が与えられています。


上級将軍に関しては通常は国王のことです。

他に引退した将軍に与えられる『名誉階級』でもあります。

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