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第2章 FILE08:再会


「カインです。入りますよ」

 ドアをノックして部屋に入ってきたのは、カーライン王子だ。部屋の中には黒髪の女性がいた。蒼いガイア教の神官服を着た美しい女性だ。

 しかし、カーラインは知っていた、美しさだけでなくその女性の辛い過去も、その過去を乗り越えた心の強さも…… 5年前に出会った時に、この人のように強くなりたいと願った。今でも憧れのひとだ。

「ルノアさん。ミシェイルも私も心配したのですよ。戦場に残るなんて……」

 ルノアと呼ばれた女性は、静かに微笑んだ。

「手紙で伝えた通りよ。元気にやっているわ」

 ルノアはミシェイルと育った孤児院の園長には、近況を知らせる手紙を出していた。

「ルナさんから話を聞いた時は、ミシェイルが取り乱して大変だったのですから」

「でも、カインがちゃんと支えているのでしょう?」

 カーラインが顔を赤くした。

「5年前の約束もありますから……」

 カーラインは懐かしそうな顔をする。その約束をした時は、もう1人の女性がいたのだが、今は、音信不通になっている。ルノアにとっては姉ともいえる人だが、ルノアもカインも心配はしていない。そのうちに何事もなかったようにひょいと顔を出すだろうと思っている。

 懐かしそうな顔で微笑むカーラインに、ルノアは真剣な顔をして頭を下げた。

「ル、ルノアさん? 一体何を……」

「ごめんなさい。王位継承権を放棄したのは、あのの為でしょう」

 カーライルは笑顔を向けた。

「顔を上げてください。もちろん、ミシェイルの為と言うのもありますけど、正直、自分の為ですよ。王位よりミシェイルを選んだだけです」

 だが、ルノアの表情は曇ったままだ。

「それで、よかったの? 弱い人たちを守れる王になりたいと言っていたでしょう?」

 カーラインは「あははっ」と笑った。

「王でなくとも、政治は出来ます。それにミシェイルを側室にするつもりはありませんよ。今のこの国では、庶民の女性を正室に迎えられませんからね。私の妻になる女性は1人でいい。ガラにも無い事を言っていますね」

 ルノアは首を横に振った。

「ミシェイルを、お願いねカイン」

「言われなくても。それに僕の方が彼女を必要としていますから。ところで、肝心の和平交渉はどうなっています?」

 必要となれば、幾らでもポーカーフェイスで各国の王や将軍達と渡り合う女性なのに、今日の彼女は考えている事がすぐ表情に出た。カーラインは、それだけで彼女の苦労の程が見て取れた。

「難しいわね。カーライル王は、「フィロス砦と金山を明け渡せ」の一点張りだし。レイバ様も捕虜釈放のカードしか切ってくれないから…… レイバ様は、カーライル王の方から和平を求めない限り、本気で戦を終わらせる気は無いでしょうね。今回は時間稼ぎ、カーライル王も多分同じね。負け戦が続いたから軍を再編する時間が欲しいのよ」

「それでは、戦は?」

 ルノアがカーラインの言葉を継ぐ。

「終わらないわね。お二方には、力の無い民のことを考えて欲しいのだけど…… でも、努力はしてみるわ。諦めたらそれで終わりだもの」

「ルノアさんは変わらないね。僕も努力はしてみる。僕も平和な方がいい」

 カーラインは笑って言った。そのときドアがノックされ、金髪で杖を突いた女性が部屋に入ってきた。

「ルノア姉さん」

「ミシェイル。目は大丈夫なの?」

 ミシェイルの目は2年前に事故で失明しかかった。今でも人影や光の強弱はわかるらしいのだが、はっきりと見えているわけではない。

「姉さんのばか!」

 ミシェイルがルノアに飛び込んできた、そのアメジストのような瞳には涙が浮いていた。

「ごめん。ごめんね、ミシェイル」

 ルノアはミシェイルをギュッと抱きしめた。




 次回予告


 ルノアにお茶に誘われたヒルト。


 時間は穏やかに流れ。


 次回 ティータイム 前編


 風は貴方にどんな物語を残しましたか?


今回と次回、次々回の話はストーリーの大筋にはほとんど関係ありません。


今回の話は、1章の最後にあった和平交渉のためにルノアがリューム国に訪れているということを示すためです。

まともに相手されなく、暇なため次話ではゆっくりお茶を飲んでいたりします(笑

ミシェイルもカインも今回は顔見せだし。


サブタイトル、ティータイムの前後編以降から物語りがまた動き出します。タイトルの戦記にあるように戦争シーンですよ。

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