第2章 FILE06:アイオリア=ロウ
「そうだね。細かい事は明日にしよう。お腹はすいていいないかい?」
ヒルトはフルフルと首を横に振ったが、次の瞬間、クーとお腹が鳴った。
「はは、遠慮することは無い。コティが来たら準備させよう」
アイオリアはやさしい微笑を浮かべた。その微笑を見れば彼が武勲を上げた騎士だとは信じられない。
「……本当にアイオリア様ですよね?ごめんなさい。あ、あのイメージと全然違うので……」
「そうか。ヒルトには僕がどのように見える?」
「ええっと…… 学者や文官のように見えます」
言いづらそうなヒルトを見て、アイオリアは声を立てて笑った。
「そうだろうね。今日は皆からそう言われたよ。駆け出しの学者のようだとね」
コン、コンと扉をノックしてメイド服の少女が入ってきた。
「お呼びでしょうか? ご主人様」
「コティ。彼女はヒルト=アルフォンス。騎士見習として迎える事にした。部屋はリュエルが準備しているので、湯浴みと怪我の手当て、それから食事を頼む」
「はい。承りました」
コティは、アルフォンスに頭を下げた。
「それではヒルト様。こちらへ」
コティがヒルトを部屋から連れ出した。
1人、部屋に残ったアイオリアは、机の引き出しから酒のボトルを取り出す。アイラという土地で作られるウイスキーで、結構高価なものだ。そのウイスキーをボトルから直接あおった。強いアルコールが喉を焼く。
この間、いや、つい1ヶ月前までは考えられない状況にいる。周りから向けられる期待や憧れ…… だがアイオリアは自分がただの殺人者だと思っている。
「人殺しと罵られた方がましだな……」
ヒルトの言葉通り、彼女の瞳には憎しみの色は無かった。だがその事がアイオリアには辛い。
「いや、糾弾されたがっているのは僕自身か」
アイオリアは自虐的な笑みを浮かべまたウイスキーをあおった。
「おう、ようやく戻ってきたな」
戻ってきたアイオリアにシャリアールは杯を揚げて見せた。空になった酒瓶が2本ほど増えている。
「1人、見習を取ることにしました」
「そうか。坊主も少しは楽できていいじゃないか」
アイオリアは苦笑した。
「そんなことを聞いたら怒りますよ、彼」
シャリアールは、ガハハと豪快に笑う。
「お前さんも、坊主も真面目すぎる。少し柔らかくなったほうがいい。ほら飲め!」
結局2人は、空が明るくなるまで飲んだ。
次回予告
アイオリアは軍を統括する上級将軍に呼び出された。
そこでであった人物とは?
次回 カーライン王子
風は貴方にどんな物語を残しましたか?
アイオリア…… アル中になってしまいそうです。
そんな感じで飲まれると、酒がかわいそうだからやめような。
アイオリアの基本的な考えはこんな感じです。
英雄、勇者と祭り上げられていますが、人殺しが嫌いで軍人(騎士)である自分すら容認できていません。
人が死ぬことを嫌うルノアすら、ある程度受け入れていますから、この作品の中でアイオリアが一番人が死ぬことを嫌っているでしょう。
でも彼は軍人ですから職業として人を殺します。地位が上がればなおさらですね。このことが物語にどう影響してくるのでしょうか?
では次回は今週中かなぁ。(たぶん)