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第2章 FILE02:暴走


 それは唐突に起こった。騎乗していた馬が、いなないたかと思うと、敵陣に向かって走り出した。必死に馬を止めようとするが止まらない。それどころか、どんどんスピードをあげて敵陣に向かっていく。

 馬上の若い騎士は、ため息をひとつ吐き馬上槍ばじょうやりを正面に構えた。

ふと、俺はここで死ぬのだろうか。という考えが浮かぶ。貴族とは名ばかりの貧乏な家に生まれ、両親を無くし、食う為に騎士見習になったのが4年前。

 やっと、騎士に叙勲じょくんされて10日足らずで初陣。しかも、その初陣で馬が暴走して、先陣をきることになった。不運続きの人生だ、生きて帰ることが出来たらそれこそ奇跡だろう。

 そんなことを考えているうちに、敵陣に突入していた。不運な兵士達が槍で衝かれ、馬で踏み潰される。夢中で槍を突き出し近くにいる兵士を倒していく。

 騎士達が敵陣にあけた穴に、歩兵達が突撃して傷口を広げていく。いつの間にか混戦状態で敵味方入り乱れている。

 6人ほど倒した時、再び馬が暴走した。その弾みで槍が手から離れる。馬から振り落とされないようにしがみ付きながら、馬に括り付けてあった長騎剣ちょうきけんと呼ばれる、刃渡りが2メートルほどもある大剣を引き抜く。

 怖くても、訓練通りに身体は動くものだな。と他人事のように考える。

 その間も、馬は兵士達を蹴散らしていた。運悪く逃げ送れた者は踏みつけられ、蹴り飛ばされ、さらに運の悪い者は長騎剣により首をはねられた。

 敵の前衛部隊を突破する。

 周りを見回すと味方が5騎ついてきている。古株のベテラン騎士達だ。鎧についた古傷と、汚れがそれを物語っている。

 6騎が一塊になって、一気に敵の本陣に向け突撃する。

 途中で2騎が弓矢により落とされたが、かまわずに敵の本陣に突入する。

 騎士達が、次々と敵兵士達を切り伏せていく。青年、真新しい鎧に身を包んだ若い騎士、アイオリアは一際立派な鎧を着た騎士に向かって剣を構えると馬ごと突撃した。




「まさか、敵の大将を討ち取るとは……」

 あの後のことは、良く覚えていない。

 敵軍が敗走した後、総大将のデフロット将軍から、十騎長じゅうきちょうに任じられ、更に白銀に輝く鎧まで賜った。それから、全軍の前で若き英雄だの勇者だのと紹介された。はずだ……

今、思い出しても赤面ものだ。

 自分は何もしていない。馬が暴走して、落馬しないように敵の攻撃をうけないようにしていただけなのだが、勇者だの英雄だのと呼ばれている…… 人生何が起こるかわからないものだ。

 しばらく休んでいると、腕の震えも止まった。部屋の外から聞こえてくる剣戟けんげきの音も、落ち着いてきたようだ。

 砦に突入した時にはぐれてしまった部下達と合流しないと。ふと、そう思い剣を杖代わりにして立ち上がる。

「アイオリア十騎長」

 名前を呼ばれ、部屋の入り口を見ると、革鎧を来た10代前半の少年が立っている。今朝自分の部下になった少年だ。今回の戦いのために徴兵されたと言っていた少年で、名前はリュエルと言う名前だったはずである。

「他の者はどうした?」

 本当ならば自分で統率すべきなのだが、気が付いたら1人だったのだ、いまさらながら部下達のことが気になった。

「は、はい。みんな無事です。十騎長もご無事でよかったです。砦はほとんど制圧しましたが、指揮官のバロスが見つかっていません」

「そうか。よし、みんなと合流しよう」

 そう言ってアイオリアは部屋の入り口に向かう。

「十騎長!待ってください」

 敵兵の死体を見た、リュエルが慌てた声で呼び止める。

 アイオリアが、振り返るとリュエルが興奮で震えた声で言った。

「アイオリア十騎長が倒されたのですか?」

「ああ、それがどうかしたのか?」

 リュエルは敵兵の1人を指差して答える。

「バロスです」

「へっ?」

 アイオリアは間の抜けた声を漏らした。




次回予告


武勲を挙げたアイオリアは1人杯をかたむける。


そこにベテラン騎士が訪れて。


次回 酒盛り


風は貴方にどんな物語を残しましたか?


運だけで出世する主人公です(笑

ちゃんと剣で敵将を討っているあたり、それなりの実力はありますけど、その実力が表に出るのはいつになるだろう(笑

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