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第1章 FILE17:軍議


 軍議は大方の予想通り2つに割れた。

 軍師パンドラの、和平交渉を行うにしてもフィロス砦の周囲にある都市や砦は落とすべき。と言う主張には軍部が支持し、従軍神官ルノアの早急に戦乱を収め、人材、物資の消耗を押さえ軍事力の回復と富国に力を注ぐべき。と言う主張は文官達が支持をした。

「今述べたようにこれらの小都市はリューム王国軍がフィロス砦の攻略を計画する際に、橋頭堡として利用される恐れがあります。現段階で各都市の守備兵は千を超えていません。現兵力の3分の1、1万もお貸しいただければ戦果をあげて見せます」

 ルノアが静かに挙手する。それを見たパンドラがルノアを指名する。

「ルノアさん、何かありまして?」

「落とした都市はどうするつもりですか? 近隣にある都市、砦は5つ。それを維持するために兵力を分けるとなると各個撃破されるのがオチです。いずれ取り返されるものなら、ここで兵力分散の愚を犯すべきではないのではないですか?」

 ルノアの言葉を聞いて、パンドラの瞳がスーと細くなる。

「そうね。敵兵ごと焼き払うのが一番いいのだけど、貴女は反対するのでしょう?」

「当たり前です。貴女は、まだそのようなことを」

「何か勘違いをなさってません? 貴女の仕事は命を救うことかもしれませんが、私の仕事は兵士を効率よく殺すことですのよ。味方が1人死ねば、敵を2人。味方が千人死ねば、敵を2千人殺すように策を立てるのが、私の仕事…… 貴女は否定するでしょうけど、戦は外交手段の1つに過ぎないわ。善も悪もない。戦闘で失われる命も、最初から折込済みですわ」

 2人が睨み合う。周りの武官、文官もその迫力に圧倒され、沈黙を守っている。

「貴女は文官達をまとめる立場にあるのでしょう? 彼らの進言にも耳を傾けたらどうですか?」

「聞いているわよ。その上で、今、落とすべきだと判断したのですわ。知っての通り、わが軍は、これ以上の戦力の増強が難しいのに対し、リューム国軍には可能です。ならば、敵兵力は削れる時に削るべきよ」

「彼らは、今の段階で敵に攻勢に出られたら、支えきれないと言っているのです。古来、飢えて勝利を収めた軍はありません。和平交渉がまとまらなくても、短かいながらも、時間を稼ぐことができます」

 2人の舌戦が途切れたタイミングを見て、若い女性文官が挙手して立ち上がる。大きなまるいとんぼめがねが幼い顔をさらに幼く見せているが、その胸の盛り上がりが奇妙なバランスで魅力となっている。ルノアが彼女がよく黒騎士の1人、ジェニスと一緒にいることが多いのを思い出した。

「ミレイ=アレスです。ルノア従軍神官の発言について、補足させてもらいたいのですがよろしいでしょうか?」

 レイバが黙って頷く。

「物資についてですが、我が軍だけで消費するのであれば3ヶ月ゆうに持ちます。しかし、今までの方針通り非戦闘員等の保護を続けるのであれば、これから落とす都市の規模を考えれば、2ヶ月持たないたかと思われます」

 レイバがミレイに問い掛ける。

「ミレイと言ったな。では、充分な物資の補給にどれほどかかる?」

「2ヶ月…… 人員をさいてもらえれば1ヶ月」

「わかった。他に意見のある者は?」

 その時、荒々しく扉が開かれ兵士が飛び込んできた。

「アリア砦に、敵軍接近中! 至急、来援を請う!」

 レイバがパンドラに向き直る。

「アリア砦に居るのは誰だ?」

「バロス殿の配下の2千と、ガウロ殿の配下4千が駐留しています」

「彼らは篭城策をとると思うか?」

 レイバの問いにパンドラは首を横に振って答えた。

「バロス殿だけならば……」

 レイバはため息をついた。

「俺のミスだな。フレイア。7千の兵を預ける、救援に向かえ。但し、到着前に砦が落ちた場合は敗残兵をまとめて戻れ。その他の判断は任せる」

「御意。兵七千を率いアリア砦に向かいます」

 フレイアが颯爽と会議室から出て行く。

「ミレイ=アレス。補給に関する全権限を与える。必要なスタッフをパンドラに申請しろ。パンドラ、人事に関しては優先してやれ」

「わ、わ、私ですか?」

 ミレイが目を白黒させる。

「そうだ。不満か?」

「わ、私は、まだ若輩の身で……」

「ない経験は、周りの者に補ってもらえ。人を使うことも必要だ。パンドラ、ルノア、そして他の者も、頼まれた時は協力してやってくれ」

「他の事はアリア砦の件が片付いてからにする。いいな?」

 レイバが会議室を見回し、最後にパンドラとルノアを見る。

『御意』

 二人の声が重なった。



次回予告


会議終了後レイバはパンドラを呼び出す。


その話の内容とは?


次回 レイバの決断


風が貴方に物語を運ぶ。


美玲ちゃんの登場です。と言っても1章での出番はこれだけですが(笑


ミレイ=アレス

魔王軍の文官。金髪に深緑色の瞳、童顔に大きなトンボめがねがチャームポイント。

童顔にめがねっ娘、小柄な体躯に巨乳な人。

隻腕の騎士ジェニスとは恋仲。

女性キャラ結構いますが、設定で巨乳と書かれているのはこの娘だけだったりします(笑


実は第1章は次回で終了です。で、次回の更新が終われば2章に突入です。

年内に2章の更新に行けるかな?


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