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第1章 FILE15:見舞客 後編

「お邪魔してよろしいかしら」

 食欲のないルノアが昼食として出された野菜スープと格闘していると、パンドラが入ってきた。ペットの子犬が後ろをチョロチョロついて歩いている。更にその後から、金髪の少年がティーポットの乗ったワゴンを押して部屋にはいってくる。

 はじめて見る顔だ。整った顔立ちに青と黒のオッドアイ、そしてきらきら光る金髪に、そして頭に黒い猫耳が…… よく見ると黒い尻尾もしっかり付いている。

 このような魔族は、特殊な能力を持つ者が少ないということもあり、好事家の貴族たちに高く売れる為、奴隷商人達に狙われることが多い。少女なら普通の奴隷の20倍以上の値で取引されるという。

「この子可愛いでしょう? 上げませんわよ」

 少年を見るルノアにそんなことをのたまうパンドラ。

「いえ、そうではなくて……」

「身寄りがないというので、私的に雇いましたの」

「そうですか」

 もしかして、この子を見せにきたとか? ルノアはそんなことを考えた。

「ルノアさんとは、お茶の約束がありましたわね」

「あ、はい」

 ルノアの意外そうな顔を見たパンドラは、くすりと笑った。

「あの場での冗談だと思いまして? 私は冗談など言いませんわよ」

 そして、入り口に向かい声を掛ける。

「ヴァネッサさん、いいかげん入ってきたらどうですか」

 すると、やたら緊張したようなヴァネッサがゆっくりと入ってきた。そしてベッドのそばまでくると思いっきり頭を下げた。

「ルノア殿。申し訳ない。私のミスだ。部下を掌握できなかったせいで貴女に怪我を負わせてしまった」

「か、顔を上げてください。ヴァネッサ様」

 あわてるルノア。先ほどの黒騎士たちといい、真面目な人たちが多すぎる。

「そうですわ、ヴァネッサさん。みんなルノアさんの自業自得です」

 猫耳の少年が用意した、ジンジャークッキーをかじりながらパンドラが言う。

「ルノアさん。感情で行動するのはやめくださいませんか。あの時も貴女がレイバ様の盾となる必要はなかったはずです。レイバ様は完全武装していましたから、致命傷には至らなかったはずですし、毒についても貴女が無事ならどうとでもなったでしょう?」

 少し怒ったような表情でパンドラがルノアに言う。

「あの時は、考えるより身体が動いてしまいました」

 パンドラの言うとおりだ、鎧を装着していなかったルノアが盾にならずとも、レイバが深手を負うことは無かっただろう。

「過ぎてしまったことはいいでしょう。でも貴女は自分の影響力というものを考えた方がよろしくてよ。もし貴女が死んでいたら、ヴァネッサさん達は処刑され解放した兵士達にも追撃部隊が送られたでしょう。気を失う前に貴女が止めなければ、レイバ様は言葉の通り実行していたはずです。あとグロウや信者の人達も暴発していたかもしれないわね」

 反論のしようがない。持祭じさいのルナからも似たようなことを何度も言われた覚えがある。

「貴女の言う通りね。忠告は心に留めておきます」

「そうね。これ以上お茶が不味くなる話を続ける事もないでしょう。ヴァネッサさんもどうぞ」

 パンドラが人形のような愛らしい顔で微笑む。先ほどとは別人のようだ。

 そのお茶はパンドラの「とてもよい、葉が手に入りましたのよ」と言う言葉の通りとてもおいしかった。




「ルノア様!」

 暇をもてあましたルノアが聖典を読んでいると、ガイア教の蒼い修道服を着た女性が入ってきた。年の頃25、6で金色の髪をポニーテールにしている。

「ルナ、どうして?」

 ルノアの呟きにルナが答える。

「もちろん、志願してきたのですよ。志願がする者が多すぎて選考が大変だったのですよ」

 後で知ったことだが、ルノアが教団に従軍神官の任地変更届を提出した直後から派遣志願者が殺到したそうだ。教団本部としてはルノアの従軍神官の任を解き、本部での仕事に従事させたいと考えていたらしいが結局はルノアの希望を優先した。

 ルナがルノアの手を握り涙を流す。

「別れた時はもう合えないのかと思っていました。よく、よくご無事で……」

 ルノアがそんなルナを見て微笑を浮かべた。

「ルナ。貴女も物好きね。また苦労をかけるわよ。私は我儘だから」

「ええ、覚悟は出来ています。でも今回は私も言いたいことは言わせて貰います。この前のように1人で戦場に残るマネはさせませんからね」

2人は手を取り合ったまま笑った。




次回予告


レイバはルノアに現状の魔王軍の詳細を告げる。


それはこれからの方針を決めるためであった。


次回 その夜のこと


風が貴方に物語を運ぶ


今回はパンドラ、ヴァネッサ、ルナの3人。はからずも3人とも女性です。


パンドラ=フィス

魔王軍の軍師。

フワフワの金髪、白磁のような肌、天使の笑みと鈴の音のような声を持つ人形のような少女。しかし、悪魔のような献策をすることもしばしば。

好きなものは蜂蜜茶に賛美歌、ペットの子犬。魔法の腕は一流だが、切り札の為めったに使うことは無い。


ヴァネッサ=クロウリー

小さい頃から剣術を学び、19歳にして上級千騎長の地位にある。茶色のショートカットに、黒い瞳の美しい女性。

男らしい面も多々あるが、女性らしい気遣いもできる可愛い人(笑

ハットのことが好きだが、素直になれない。


ルナ=ハーフムーン

ガイア教の侍際。金髪をポニーテールにしている。瞳はダークグリーン。

ルノアに心酔している。ルノアのレイバに対する気持ちを短時間で見抜き、成就して欲しいと思っている。


とまあ設定集からの抜粋ですけどこんな感じです。

実際にはもっと詳しい設定をしてますよ。全部載せると大変のことになるのでこの程度ですけど。


年内はあと何回こうしんできるかなぁ。

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