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第1章 FILE11:夢現(ゆめうつつ) 後編

 ルノアは頭を振る。私は復讐を望んでいない。そう言い聞かせる。

 確かに復讐を望んでいた頃もあったが、たくさんの人との出会いがルノアを変えた。だから、戦争で孤児となる子供たちを少しでも減らしたいと従軍神官になった。

 深呼吸して気持ちを落ち着かせると、意識を集中し魔導式を構築する。

「慈悲深きガイアよ。傷つき倒れたこの者に、癒しの奇跡を」

しかし、何も起きない。あわててもう一度唱えるが何も起きない。

「魔法が使えない。何故?」

「神官様……」

 少年がすがるような目で、ルノアを見つめる。

「応急処置を施して、近くの村に運びましょう。案内して」

 少年が頷く。

 ルノアは神官服のすそを裂くと、包帯の代わりに男の傷口にきつく巻きつける。

「少し我慢してください。村まで運びますから」

 痛みを訴える男にそう言って、ルノアは男を肩に担いで歩き始めた。




 2時間ほど山道を歩いただろうか。まだ村は見えてこない。ルノアもさすがに体力の限界にきていた。

「神官様、下ろしてくれ」

 男が言う。ルノアは男を木の根元に下ろした。

「父ちゃん」

 少年が男にすがりつく。

「神官様、10年前にロスタの村で会っているよな?」

 言葉を発しようとするルノアを男が手で制す。

「黒い髪に黒い瞳、この大陸じゃとても珍しい。それに、その目だ、強い意思のこもった目。本当にいい女になったな」

 男が咳き込み、血の塊を吐く。

「しゃべらないで下さい。村に運んで医薬品さえあれば」

「無駄だよ。あと2時間はかかる。何故、助けた? あのまま放っておけば、とっくにくたばっていた。あんたにはそうしていいだけの理由があるだろ? 俺があんたの両親を殺したんだ」

「それ以上言わないで下さい。本当に置いていきたくなります。でも、この子には親が必要でしょう?」

 少年の頭を撫でながら言う。

「俺が死んだら、こいつを頼みたい。どこかの孤児院にでも入れてくれたらいい」

「嫌です。貴方は保護者の責任を放棄するつもりですか。ご自分で育てなさい」

 ルノアは即答するが、口調こそしっかりしているが、男の声もだんだん小さくなっていく。顔色も土気色だ、これ以上は持たない。

「父ちゃん、嫌だよ、死なないで…… 嫌だよ……」

 父親にすがって泣く少年の姿が、また10年前の自分の姿とダブった。ルノアは心の中でガイアに祈りをささげる。

 ガイアよ。無力な私に力をお貸しください。お願いです、この親子を救う力をお貸しください。

 精神を集中し、深く深呼吸する。そして癒しの魔法の魔導式を構築する。その魔導式はいつもの癒しの魔法と異なるものだった。

 自分が構築しようとしたものと異なる魔道式が勝手に構築されていく。魔道式の形からすると召喚系の魔道式。そして、ルノアも初めて知る魔法ルーン呪文ワードが自然と口から漏れる。

「慈悲深きガイアよ。我、依代よりしろる者。その力の代行者。その死者すら甦らす力の代行者なり」

 ルノアが淡い蒼の光に包まれる。ルノアが男に触れると、傷が塞がり顔色がよくなる。そして荒かった呼吸が穏やかになる。

「天使さま……」

 少年にはルノアの背中に蒼く耀く12枚の翼が見えた。そしてルノアの姿は蒼い光とともに空に消えた。




次回予告


空に消えたルノア。


彼女が次に現れた場所は……


次回 ガイア神


風が物語を運ぶ。


おはようございます。久しぶり(11日ぶり)の休みなので、昨夜に続いて更新しました。

今日中にもう1話ぐらい更新したいですね。感想が無くても、アクセス数が少なくてもがんばりますよ(笑


今回の新魔法は召喚系の魔法です。次回、本文中で少しだけ説明します。

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