帝国への道
街の馬車は日の出と共に出発するため乗客はシスターさんを含めて3人しかいない。
シスターさん以外の残り二人は広い馬車の隅っこで小さく固まって近づくなというオーラを放っている。
街から帝国までは大体2日ほどかかりしかも山の中を真っ直ぐ突っ切って行くためひたすら殺風景の森の中を行くため退屈な2日間になりそうである。
「お客さん、見たところシスターみたいだけど帝国に何の用事だい?」
街を出発して数時間、静まり返った重い雰囲気に馬を操っているおじさんが話しかけてくる。
「はい、ちょっと移動で…」
軽く会釈して受け流す。
「あの、一ついいですか?」
さらに数時間進み今度はシスターさんが声を出した。
「おおぉ、どうしたんだい!」
声をかけられたおじさんは嬉しそうに答える。
「さっきから魔物の姿が見えないのですが…」
普通ならば山などに行けば必ず一匹は見かけるのだがシスターさんの乗ってる馬車の周囲には魔物どころか動物ですら一匹も見ていない。
「ふっふっふー、それはなぁ、シスターさんよぉ」
おじさんが自慢げ話し出す。
「上を見てみな」
おじさんが上を指差す。
「上?」
シスターさんが見上げると馬車の天井に沢山の文字が書いてあった。
「これは…何ですか?」
天井にまるで呪いのように書かれた文字列が書かれていた。
「あれはな魔物避けの呪文さ、あれのおかげで魔物とか動物とかがよって来なくなるんだよ、おかげで少人数で特に警戒しなくても移動が出来るわけよ、までも悪魔とか強力な奴や人間には効果ないけどな」
ハッハッハと軽快に笑いながらも視線を前から離さないあたりベテランの感じがする。
「人間にも効果がないってことは山賊なんか襲撃された時はどうするんですか?」
「それはな…ちょうど来たぜ」
おじさんが言いかけた時にちょうど山賊が数人馬車を囲むように現れた、その中の一人が一歩前に出る。
「命が惜しかったら抵抗せずにおとなしく従いな。」
「このように珍しく山賊がでた場合は…」
おじさんは脇にあるレバーを思いっきり引く。
「なんですかそれは?」
「これはな、この馬車にある迎撃機能さ、これで並の人間なら暫く動けないんだよ」
シスターさんが周囲を見回すと山賊達が固まっていた。
「じゃあ行きますか」
おじさんは馬車の前に山賊がいるにも関わらず、強引に進んでいった。
「あの、あれ大丈夫何ですか?」
目の前にいる山賊は動けずに馬車に吹き飛ばされていく。
「さすがシスターだな、でも山賊なんかに同情なんていらないぜ、少し遅れたから飛ばすぞー」
ムチを鳴らして馬達を急かす。
その後は特に何事も無く帝国に到着出来た。
閲覧ありがとうございます。