新しい試薬
「おや、一人ではないんですね」
「ええ、前から私のお世話をしているシスターよ」
「シスター、ですか…あぁ確か報告にありましたね、しかし、ずいぶんと変わりましたね、もしかして一時期薬の服用を止めてましたか?」
「ななん解んの?」
カザリは余裕を装っているようだが完全に声が震えている。
「薬を飲まなかったらこうなることは解っていましたからね」
「え…」
「処方する薬の効果くらい把握はするものでしょう、まぁどの程度飲んでいなくてそしてどの期間薬を飲んでいたかはわかりませんがね」
「これ、元に戻るのですか?」
「元に…かぁ、とりあえずこの薬を試してみましょうか、これはまだどんな効果があるか完全には把握してませんが」
「完全にってこれで元に戻るのかなぁ」
「まぁ、現状はこれしかないですね、毎日ちゃんと飲んでいればこんな事にはならなかったのですが…」
「うっ…、ごめんなさい」
「こうなった事例はほとんど無いのですから記録なんてあって無いような物です、この薬は開発段階なんですよ、全く…毎日ちゃんと飲んでいればこんな事にはならなかったのですがね」
「ぐぬぬ」
「あまりカザリちゃんをいじめないで下さいな」
流石に見かねたのかシスターさんが横やりを入れる。
「おお、怖いですねぇ、とりあえず茶番はこれくらいにして薬の説明ですが」
鞄から薬の入った袋複数を取り出す。
「まず、いつもの薬をいつもの量とこっちは今回の薬は少量ね」
二種類の薬をわかりやすいように分ける。
「あ、ありがとうございます」
シスターさんが薬を受け取って一応薬を確認する。
「確かに受け取りました」
「では私はコレにて帰りますね、また薬が無くなりそうになった時に来ますねー」
「もう帰ってしまうんですね」
帰ろうとするのをシスターさんが制止する。
「ええ、もうする事がないですからね」
「せめて何か食べていきませんか?」
「シスターのご飯はおいしいのよー」
自慢するようにカザリが付け足す。
「それはいい提案ですが残念な事にそれは出来なんですよ、申し訳ない」
すごく残念そうに答える。
「そうなんですか…、ではせめて何か連絡する手段は無いでしょうか?」
「え、屋敷の人には連絡できるように取り計らってもらっているはずですが?」
「え…」
シスターがカザリを見る、カザリがすぐに目線を外す。
少しの沈黙のあと薬を持ってきた人が耐え切れなくなったのか切り出す。
「では自分はもう帰りますね」
「はい、では私はカザリちゃんにお話しがありますので、もし何かありましたら速攻で連絡入れさせていただきますね」
シスターさんから黒いオーラが発せられる気がする。
「それではー」
薬を持ってきた人は逃げるように帰っていった。
「さて、カザリちゃん他にもいろいろあるんじゃあないのかしらぁ」
「洗いざらいしゃべらせていただきます!」
「どうでした、様子を見てきた感じは?」
「なんていうかすごく親子って感じがしましたねぇ」
「親子…ねぇ」
「あそこまで進行して平然としてましたからね、やはり心は大切なようですね」
「てか何段階目よ?」
「おそらく5段階目と思われる、精神的にも安定して振る舞いも子供っぽく演技という感じでもない」
「てことは見直しかなー、でも費用が掛かるねー」
「これ以上だと割に合いませんね」
「だねー、あとはあっちの方かなぁ」
「あれもいつ暴走するかわからないですからね」
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