カザリという少女3
部屋まで案内してくれた人が言っていたように屋敷には人の気配がほとんどなかった、少ない気配を頼りに屋敷の住人のいる所に向かう。
「あのすいません、ここの領主様でしょうか?」
勢いよく一番近くにいた人間に詰め寄る。
「あ、あのもうしわけありません、私は使用人です」
「あぁ、ごめんなさい、領主様はどちらにおられるかご存知ですか?」
「今の時間でしたらおそらく執務室かと思いますが…、あのどのようなご用事で?」
「カザリちゃんの外出許可をもらいに」
「え、別に外出の制限などは聞いておりませんが」
「…え」
「お嬢様の外出云々については特に制限は聞いておりません、あでも日没までには帰っていただければと」
「そ、そうだったのですか、すいませんありがとうございます」
「いえいえ、それでは私失礼しますね」
「はい、無駄な時間を取ってすいませんでした」
使用人と別れて少し迷いながらもなんとか部屋に戻ってこれた。
「あら、おかえりまさい」
「ただいま…特に制限なんて無かったんですね」
「そうね、特にその辺は聞いてないわ、でも今の私を見て普通の人はどんな反応するかしら」
三つある目を大きく見開く、普通の人間なら腰を抜かしそうだ。
シスターさんは最初は違和感がなく首をかしげるが目が三つあることが普通じゃないことに気づき納得する。
「あぁそういえば、なんとか隠したりすればいけたりしませんか?」
カザリは一度溜息をついてから。
「そうだったわね、それじゃああなたを片目を閉じたまま生活できる?」
「できないこともないけど不便かなぁ」
「不便って…貴女なら平気かもしれないけど私は不自由でしかたがないわよ!」
カザリが熱弁する。
「え、っとあの、ごめんなさい」
「別にいいわよ、私は別に外に出たいとは思ってないわ、ずっとここでごろごろしてたいのよ、それにお菓子もあるし」
どこからかとりだしたお菓子を幸せそうに頬張る。
シスターさんはため息をつき近くの椅子に座る。
「晩御飯も楽しみにしてるからね」
晩御飯の準備まで時間があるためとりあえずこの部屋にある道具の確認をする、この規模の屋敷なら掃除道具などは他の部屋にあるはずだがカザリの部屋には収納場所がいくつもあり必要そうな道具類はだいたい揃っている。
寝具もあり部屋のスペースも十分にあるので寝ることには困らなそうだ。
「なにしてるの?」
「道具の確認ですよ、何があるか確認しないと、そういえば晩御飯のリクエストとかありますか?」
「うーん、夜は肉でも焼いてくれればいいかな」
「わかりました」
肉を焼くだけならそこまで時間がかからないのでシスターさんが持ってきた置いてある荷物を少し広げる。
「実は荷物いっぱいあったのね」
「そうですね、着替えとかいろいろありますよ」
「へーっていうかよく収納できるわね」
この世界に某猫型ロボットの持っている四次元ポケットのような便利なアイテムは存在しないのでシスターさんの鞄一つと修道服からありえない量が出てきたので驚いていた。
一通り荷物の整理が終わったので調理場に下りて早速料理を開始する。
肉料理を希望されたので無難にステーキにする、といってもカザリは見た目は小さな女の子なので分厚く切って豪快に焼くわけにもいかないので一口サイズ小さく切ってる。
それから玉ねぎと生姜をすりおろしすそこに濃口醤油と砂糖、白ごま、料理酒、みりん、酢、胡椒、水を入れてよくかき混ぜる。
できたソースに小さく切った肉に漬ける。
次にキャベツとトマト、ブロッコリーを切って皿に盛りつける。
それから一度肉をソースから取り出して肉だけ焼く、火が完全に通ったら皿に盛りつける、その上にソースをかける。
食材の中にパンがあった、一つ食べてみると一日以上経過したものではないとわかったのでそれを添えて上に持っていく
「晩御飯が出来たので持ってきまし…」
「いくら私の胃を掌握したところで心までは掌握できるとは思わないことね」
ビシッと指をつけつけて言い放つ、涎が出ていなければ決まっていた。
言い放ったあとすぐに椅子にすわり料理をここに置けとばかりに催促する。
シスターさんはそれをほほえましく思いながら机に料理を並べていく。
机に置かれるなり早速手を伸ばして食べ始める。
「ねぇ、これすごくおいしいんだけど、いままで食べてたパンが全く別の料理に思えるわ!」
この言葉を喋ったきり食べ終わるまで一言も話さなかった、それほどおいしかったようだ。
シスターさんも途中で食べ始め食べ終わる頃にはすっかり満足したようすだった。
「あら、薬は飲まないの?」
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