COLOR
車の中でなんとなく思いついたので、書いてみました。超荒削り。
白は天蓋の光源の色。黒は光が遮られてできる影の色。灰色は、天蓋間近に伸びた建物たちの色。この三つの色が、現在の人類の全ての世界。
効率を求め技術を高め続けた人類は、恵みをもたらす太陽光さえも、有害な紫外線を放つからと拒絶し、地下へと潜り、空の替わりに天蓋を作り、紫外線を放たない人工的かつ、人体にとって完全に無害な照明で満たした。
そこにあるのは、家畜を生むための工場。天蓋を通し、濾過された水を貯めるための無色透明な池。ガス交換の効率を求め、極限まで品種改良され色を失った植物。それが人類にとっての世界だった。
そして人々はそのモノクロの世界で、日々効率良く社会を回すための歯車として、ただひたすら効率を求めて仕事をしていた。劣った者は効率の低下を招くと処理され、優れた者の血肉となり。優れた者は他者よりも効率よく動けるように、自分が誰かの糧にならないように、日々競い合っていた。
その中で、まだ歯車となるには未熟な少女が一人居た。彼女は生まれた時に、遺伝子の検査の時点で「正常」ではあるが、その中では「劣等」と判断され、「優等」になるための機会すら与えられず、いずれ肉となるべく生かされていた。しかし、そんな劣等な人間にも自我は存在する。自我があれば、人は己を高め続けると、そのほうが効率が良いとして残されている。
彼女は己の生まれを悲しむこと無く、いずれ肉となることを承知で日々を生きていた。そして、どこか風の噂か、非効率的な噂を耳にした。
「天蓋の向こうには色がある」と。色とは何ぞ。色ならばこの地下都市に満ちているではないか。白。黒。灰。その三色が満ちているではないか。それ以外に色など無いし、天蓋に向こうなど無い。この世界では天蓋こそが、空であり、果てであり、世界の枠である。枠の外には何もないはずである。
しかし、彼女はそれがどうにも気になってしまって、調べてしまった。効率よく肉にされるために与えられた娯楽品のデータの中に、「あお」「あか」「みどり」など自分の知らない色を表す言葉が存在していた。遺伝子に刻まれた、効率を求めて行動するという世界の常識が、彼女を動かした。天蓋の向う側には、色がある。いずれ来るべき処分の日までに、一度は見てみたいという好奇心が。
本来ならそのような行動は取るはずがない、として鍵の設置されていない部屋を抜け出し、工場から抜け出す。
時間は夜。天蓋の照明が消されているが、「なぜか」ほんの僅かに前が見える程度の闇の中を少女は進む。肌への刺激が増していることは興奮による脳内麻薬の分泌により気づかず、ひたすら進む。夜間は誰もが外を出歩くことを禁止されているこの世界では、外を歩くのは少女の他に誰もいない。よって彼女は誰とも出会うこと無く、天蓋と大地をつなぐ柱に辿り着くことができてしまった。そして、迷わずエレベーターの扉を開いて、天蓋の向こう側を見るために、最上階のスイッチを押す。少女を載せた箱は音もなく上昇し、いずれ最上階へ。
エレベーターの扉が開き、外に出る。そこは未だ彼女の知る世界の内側だった。しかし上を向き、手を伸ばせば触れられるほどの位置に、天蓋がある。迷うこともなく手を伸ばし、触れる。そして、照明の一枚が簡単に動いて、いとも簡単にズレた。その隙間の向こうは、未だ黒。天蓋に手をかけて、その上に。自分の知る世界の、外側に。
何も無い。その光景に悲しみを覚え、辺りを見渡す。そして、一つ明るい場所が見えた。圧倒的な白。思わず目を細め、顔をかざすほどに強烈な光。その向こう側にあるものを想像した彼女は迷うこと無くそちらへと駆け出し、色を求めてその中へ。求めていた色を見るために。
ホワイトアウト。そこで彼女の体は奥深くまで紫外線という炎に焼かれ、一瞬でその生命活動を停止した。
黒石迩守 氏のヒュレーの海(n5369ba)に少し影響を受けてます。うい。
あれには遠く及びませんが。




