表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

遺言シリーズ

自筆証書遺言

作者: 尚文産商堂

「わしも、そう長くないな…」

彼は、震えている右手を見ながら、ポツリと言った。

「そろそろか……」

手元に紙とペン、それに実印を用意した上で、誰も来ないように、メイドに告げた。

人払いをすますと、ゆっくりとした手で、遺言状を書き始めた。


最後まで書き切ると、封筒にいれて、ロウで封印を施し、さらに封筒の外側にも自らの名前を書き加え、実印を押した。

メイドを呼び出すと、これを託すとだけ言い残し、スゥと一息はいた。

同時に、心臓の鼓動も鳴り止んだ。


メイドは大慌てで医者を呼んだが手遅れであり、逝去した。

メイドに託された遺言状は、この時点で相談を受けた、故人の友人である弁護士の手に渡り、家庭裁判所へ検認の申し立てを行った。

法定相続人として、別居中の妻、独自に生計を行っている息子がいる。

妻は本人が、息子は代理人である司法書士が、それぞれ家庭裁判所へやってきた。

また、メイドも、検認作業にくるようにと、裁判所からの命令があった。


申立人の代理人である弁護士が、裁判所の部屋に集まった人たちの前に、メイドが持ってきていた遺言状の封筒を取り出し、裁判官へ渡した。

封印があることを確認し、さらに、表紙に署名、捺印がされていることを確認した。

「これは、現時点まで一度も封印が破られていない遺言状として認めます。これより、検認作業を行います」

ペーパーナイフを使い、立会人全員の目の前で、封印を切った。

そして、中にある遺言書本体を取り出し、目の前で検認を始めた。

「遺言状。一つ、家宅については、身辺の世話をしてくれたメイドに譲る。一つ、金銭債権については我が唯一の実子たる息子に譲る。一つ、その他一切の財産については、最後までいてくれなかったが水に流してくれると信じている妻に譲る。以下、本名、死亡時の日付が記載されています。以上で検認を終了します」

それからは、全員が異議を唱えなかったため単純承認され、遺言通りに執行された。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ