第20話 ボン太郎の特効薬
「そうか~、ボン太郎の植木鉢が割れて、土が崩れてしまいましたか~」
ニングは「あちゃ~」という感じで額を手でペチンと叩いた。
「盆栽は成長が遅いよって、根が土に馴染むんは時間がかかる。枯れることはないとは思いますが、そりゃ心配ですわな~」
ニングは腕を組んで「うんうん」と頷き、來楓の心配に同意した。
「來楓さん、ほなこれを使いなはれ」
そう言ってニングは小さな小瓶を取り出した。
その中にはキラキラ光るピンク色の美しい液体が少しだけ入っていた。
「もうあとちょっとしかありまへんが、これはエルフの里に伝わる秘薬中の秘薬「植物万能薬」でんがな」
凄そうな薬の名前に來楓はしげしげと「植物万能薬」を眺めた。
「これを植物に一滴垂らせばどんなに萎れた植物も足が生えて走り出すほど元気になりまっせ」
ニングの言い方はとても大げさだと思ったが、來楓は「植物万能薬」の輝きが本当に神秘的で美しかったので、効果はありそうだと期待した。
「貴重な薬をありがとうございます。先生、ありがたく使わせていただきます」
ニングは來楓の機嫌が幾分でも直ってくれて、ほっと胸を撫でおろした。
「來楓さん、ワテにできることでしたらなんでも力になりますさかい、またいつでも気軽に訪ねてきてください」
來楓は「わかりました」と頷いた。
「元の世界に帰る方法の件はほんまに申し訳ないんやが、どうか気を落とさんと頑張っておくれやす」
來楓はニングが本当に自分を気遣って元の世界に帰る方法を教えないということをようやく受け入れることができた。
そして「わかりました」と返事をしてニングに抱きつくと「先生がこの世界に異世界転生してくれて……この世界の近くに居てくれてよかったです。元の世界に帰れなくても、せめて先生がいてくれたことで孤独に押しつぶされずにすみそうです」と最後にもう一度だけ涙を流した。
「來楓さん、そういってくれて嬉しゅうおすわ。そやけど來楓さんは見た感じ、ワテがおらんでも優しい人たちに囲まれているように思えまっせ」
ニングは久造、ニュウ、ゴブリンたち、そして精霊水馬を見渡した。
「皆さん、すんませんが來楓さんのことをよろしゅうお頼みします」
ニングは全員に深々と頭を下げた。




