第12話 自分以外の異世界転移者
來楓は全身の毛が逆立つような心のざわめきを覚えた。
それは自分と同じ異世界転移者が近くにいるという親近感と、エルフを率いてゴブリンたちを追い出した得体の知れない脅威に対する恐怖感の混合だった。
「私たちの他に異世界転移者が……」
來楓は様々な考えや思いが次々と沸き上がったが、気持ちに素直に従うなら、思いは一つだった。
「私……その異世界転移者を見てみたい……。その異世界転移者に会ってみたいです……ッ!」
來楓の目の奥に決意の炎が燃え上がった。
───それを見た久造は、そのことを寂しく思った。
なぜなら得体の知れない異世界転移者は自分たちにとって危険な存在であるかもしれないからだ。
しかし、それはもちろん承知の上で、來楓が「会ってみたい」と願う気持ちも同時に理解できた。
高校生の女の子が急に異世界に転移したのだ。
不安や寂しさ、そして元の世界に帰りたいという思いはどれ程のものか。
そんな來楓が自分と同じように、異世界から転移した者がいると知れば何を思うか───?
───もしかしたらその転移者が元の世界に帰る方法を知っているかもしれない。
───もしかしたらその転移者が自分と同じ世界から転移した同郷者かもしれない。
───もしかしたらその転移者と同じ境遇の者同士、協力し合えるかもしれない。
希望的観測であっても、そう思ってしまうことはごくごく当たり前で、必然といえることだった。
その為、久造は、こうした來楓の考えを、思いとどまらせることはできないと悟った。
久造は覚悟を決めた。
「よし。わかった。來楓ちゃん。その異世界転移者に会いに行こう」
すんなりと久造が了承してくれたことに來楓は驚いた。
「久造さん、いいんですか?」
久造は決意をあらわすため、深くゆっくりと頷いて見せた。
「もちろんじゃ。話を聞いてワシもその異世界転移者のことが気になったのじゃ。ひょっとすると、そやつがワシらの学校を奪おうと攻めてこんとも限らんからのう。早めに様子を窺っておいて損はないじゃろう」
來楓は久造の言葉を聞いて、そういった危険性があることに初めて気づいた。
「確かにそうでした……。ゴブリンたち同様に私たちも居場所───つまりこの学校を奪われてしまう危険性がありましたね……。だとすると下手に会いに行って自分たちの存在を知らせてしまうことはしない方が良いように思いましたが、どうでしょう?」
「うむ。それはそうじゃが、そやつとの接触は時間の問題じゃろう。───何せ学校は目立つからのう~ッ!」
久造は学校を振り返って自虐的にカラカラと笑った。
「いつかは見つかってしまうのは必定じゃ。それならばこちらから会いに行って先手を打つことで、相手の機先を制することができるかもしれんぞ」
來楓は久造の考えも一理あると思ったが、やはり危険性が高い事実は否めず、自分が軽はずみに「会いに行きたい」と発言したことを恥じた。
そんな來楓の様々な感情や思い、考え、そして悩みや葛藤を汲み、久造は來楓の肩に優しく手を置いた。
「來楓ちゃん、知ってしまった以上、もうそやつを無視することはできん。覚悟を決めて会いに行こう。なに、心配はいらんぞ。ワシも一緒に行く。何かあれば來楓ちゃんだけは命に代えても守るから安心しておくれ」
久造は胸を叩いたが、そのことがかえって來楓の申し訳ないと思う罪悪感を増幅させた。
「そんな……。会いたいと言い出したのは私です。私の我がままで久造さんを危険な目に合わせるわけにはいきません」
「なんの。來楓ちゃんが異世界に転移したのはワシのせいでもあるんじゃ。じゃからそこは気にせんでおくれ───じゃなくてッ! き、危険なところに來楓ちゃん一人で行かせるわけにはいかんッ! それこそ一人で行かせて何かあったら悔やんでも悔やみきれんからの~ッ! わは、わはははは~……ッ!」
一瞬、久造が何か気になることを口走ったような気もしたが、來楓は久造が自分を心配してくれることをありがたく思った。
「ニュウッ! ニュニュニュゥ~ッ!」
「お、おお、そうかッ。ら、來楓ちゃん、ニュウも一緒に行くといっておるぞ」
「ニュウまで……」
來楓は、ニュウが二本足で立ちあがって小さな手をいっぱいに広げる姿を見て頼もしく思った。
「ありがとう、ニュウ。ニュウが一緒なら本当に心強いよ」
來楓はニュウを抱き上げると両手でニュウを抱きしめた。
「ギャギャギャ~ッ!」
続いてゴブリンたちが騒ぎ出した。
「なんじゃ、お前たち? 何をそんなに騒いでおるんじゃ?」
久造はゴブリンたちが火が付いたように騒ぎ出すので怪訝に思った。
「ニュウ、ニュッニュ~!」
ゴブリンたちが何を騒いでいるのかニュウが通訳をした。
「なんと、お前たち、そうなのか……。來楓ちゃん。このゴブリンたちは自分たちも一緒に行くと申し出ておるぞ。道案内をしてくれるそうじゃ」
その申し出に來楓は驚いた。
「あ、あんたたち……。でもいいの? 相手はあんたたちの住処を奪った敵なのよ?」
「ギャギャギャ~ッ!」
「うむ。だからこそ自分たちが最も相手に詳しいので道案内をしたいそうじゃ。そしてそうすることで來楓ちゃんのお弁当を奪ったことへの罪滅ぼしをしたいそうじゃぞ」
それを聞いて來楓は苦笑いをした。
「あんたたち、意外と義理堅いのね。わかったわ。そういうことなら断れないわね。本当は道案内なんて必要ないんだけど、あんたたちがそういうなら仕方なく罪滅ぼしをさせてあげるわ。
───というのは冗談で、あんたたち、本当にありがとう。あんたたちを危険な目に遭わせるのは気が引けるけど、すごく助かるわ。あんたたちの言う通り道案内をしてくれる人が必要だもの」
「ギャギャギャ~ッ!」
ゴブリンたちは「自分たちに任せろッ!」と言わんばかりに拳を突き上げて雄たけびを上げた。
「───それじゃあ、行きましょう。エルフを率いてゴブリンたちの住処を奪った異世界転移者に会いに行きましょうッ!」
皆さま、お世話になっております。柳アトムです。
第一章はここで終了です。
ここまで拙作を読んでいただきまして本当にありがとうございました。
貴重なお時間を割いていただきましたこと、心より感謝申し上げます。
( ᵕᴗᵕ )
さて、第二章では來楓が自分以外の異世界転移者に会いに行きます♪
いよいよ学校を飛び出して異世界へ冒険の旅に出ますので、乞うご期待いただけますと幸いです。
この後も、皆さまに「面白い!」と思っていただけるよう頑張ります!
(๑•̀ㅂ•́)و✧
宜しくお願い致します。
( ᵕᴗᵕ )




