第二話 妖怪屋敷の招待
がしゃどくろとの戦いから一夜明けた次の日。
影羅は何事もなかったかの様に自身が通う中学に登校していた。
ここは私立星華中学校。
星華町の中で一番大きな学校で寮も完備されている名門校だ。
ちなみに寮に住まず家から直接通うことも可能で影羅もそうしている。
ホームルーム直前の教室で自分の席に座る影羅。
一見何ともない様子だったが実際体は中々ボロボロだった。
(いてて・・・傷はもう塞がったけどまだ痛みは残るな・・・)
痛む箇所を軽く抑えながら心の中で思う影羅。
だが今の影羅にとってそれは大した問題ではなかった。
それとは別に気になる事があるからだ。
(春奈・・・どうしてるのかな?)
時は遡り昨日の事。
がしゃどくろを倒し友達になった影羅と春奈。
その事に二人が喜び合っていると
「あぁ〜〜〜!!」
「ど・・・どうしたの!?」
突然大声をあげた春奈に影羅も近くにいた寝夢達も驚いた。
「私転校する学校に行く途中だった!約束の時間過ぎちゃってるよ!」
春奈は懐から出したスマホを見て時間を確認しとても焦った様子だった。
「急いで行かないと!じゃあ影羅ごめん!またねー!」
「あ、う・・・うん・・・」
そう言うと春奈は凄いスピードで走りその場を後にした。
「早っ!!」
「あれだけの速さで走れるとはさすが陰陽師だな」
その速さに思わず感心する寝夢達。
その横で影羅は呆然としていた
「行っちゃった・・・」
(連絡先の交換とかもまだしてなかったからなぁ。また会えるかな?)
影羅が窓の外の空を見つめながらボーっとしてるといつの間にかホームルームが始まっていた。
しかし今の影羅は上の空になっていてあまりよく聞いていなかった。
すると教室の扉が開き誰かが入ってくる音が聞こえ影羅は何となくそちらの方を向くと
「転校してきた。四季乃春奈です。よろしくお願いしま・・・」
「・・・」
予想外の人物を見て沈黙してしまった春奈。
同様の理由で沈黙した影羅と目が合い。
「「ええっ!?」」
二人は全く同じタイミングで驚きの声を上げた。
妖怪と陰陽師という正反対の立場ながら友達となった二人は予想より早く再開を果たしたのだった。
影羅の家は立派な和風建築の建物だ。
庭には池や桜の木があり周りの家と比べ明らかに大きく豪華なお屋敷だ。
そんな家には影羅を含め人ならず物達が多く暮らしている。
「にゃ〜〜」
畳が敷かれた居間で寝夢は呑気にゴロゴロと寝転びながら昼寝をしていた。
それをいつもの事と気にせず叉鬼、風矢、氷華達、川奈達は近くでお茶を飲みくつろいでいた。
「ふぅ、美味しいです」
お茶を飲みホッと一息つく氷華。
ちなみに氷華が飲んでるお茶は他のお茶と違い湯気が全く立っておらず氷が入った冷え冷えのお茶だ。
「昨日のがしゃどくろの件。人間達の間ではあまり騒ぎになってないみたいだな」
風矢はスマホでネットニュースを見ながら呟いた。
「すぐに倒せたからですね。妖気が強くなった影響でがしゃどくろの姿を目撃した人間もいたが本気にされず目立ってないようですね」
お茶を飲みながら相槌を打つ叉鬼。
「昨日は大変でしたね」
「えぇ。あのがしゃどくろ中々強敵でした」
氷華と叉鬼は昨日の激しい戦いをしみじみと思い出していた。
「確かにがしゃどくろも大変だったけど〜ボクはその後の方が大変だったな〜」
「後?あぁ、あれですね」
「祠の修復作業の事か」
川奈達が言っているのは昨日、春奈と別れた後の事だ。
その後周辺を散策した影羅達は壊れた祠の残骸を見つけそこにがしゃどくろが封印されていたという事を知った。
その際影羅が「このまま壊れたままじゃ可哀想だね」と言った為急遽祠の修復作業をする事になったのだ。
祠の記録を調べそれを元に用意した木材を切って、組み立ててをした結果突貫工事ながらも中々立派な祠が完成した。
ついでに周りに飛び散ったがしゃどくろの骨の残骸や魂も集め中に埋葬したのだ。
「ちゃんと供養すればもう暴れないかもしれないじゃん?」と影羅の提案だった。
それが予想より時間がかかり終わったのは夜になった後だった。
「確かに大変でしたね」
「影羅様も中々無茶を言うよね〜」
「まぁまぁ、影羅様はお優しいですから。祠を直して埋葬したからがしゃどくろも喜んでるかもしれないじゃないですか」
「確かにな」
「みんな昨日はお疲れ様」
そう声が聞こえ声の方向を向くと庭に繋がる襖から一人の妖怪が入って来た。
入って来たのは腰に刀を携えた狐の耳と尻尾が生えている妖怪だ。
「あ、イナリ」
「今日も鍛錬?真面目だね〜」
「いえ、昨日のように駆けつけられなくては鍛錬の意味がないわ。次は必ず推参するわ!」
決意の表情を浮かべイナリは刀を力強く握った。
「やっぱ真面目だね〜」
「にゃ〜〜」
そんな様子でみんなで話してる中呑気に眠る寝夢の寝息がお構いなしに部屋の中で響くのだった。
「ただいまー」
すると玄関から影羅の声が聞こえてきた。
「あ、影羅様が帰ってきましたね」
「む、もうこんな時間か」
風矢が時計を確認すると十六時になりかけだった。
「じゃあお出迎え〜」
そう言って氷華達は部屋を出て行った。
「にゃ〜〜」
「あなたはさっさと起きなさい!」
「ふにゃっ!?」
みんなが部屋を出て行った後ずっとひたすら眠っていた寝夢に叉鬼は額を軽く叩きそれに驚いた寝夢は飛び起きるのだった。
「もう少し優しく起こしてもいい気が・・・」
氷華達は影羅を出迎えようと玄関に向かっていた。
「影羅様お帰りなさ・・・」
「ただいま。みんな」
「お邪魔します」
玄関に到着し出迎えの挨拶を言おうとしたが影羅の隣にいる人物を見てその言葉は途中で止まってしまった。
「「ええっ!?」」「お〜〜」
星華中学の制服で身を包み影羅の横に立っている春奈。
そんな春奈を見て一同は驚きの声を上げた。
「は、春奈さん!なんでここに!?」
「その制服は星華中学の・・・」
「影羅様の所に転校してきたって事〜?」
「あ、あのそんな一編には答えられませんよ」
質問攻めになり困惑してしまう春奈。
その横で影羅は皆を落ち着かせようとするのだった。
「みんなとりあえず落ち着いて・・・」
「影羅様〜おかえりにゃ〜♪」
「お帰りなさい影羅様」
そんな中少し遅れて寝夢と叉鬼がやってくると
「ええっ春奈!?」
「何故ここに春奈さんが!?」
「そのくだりはもういいよ!」
一足遅れて驚く寝夢達に向けた影羅の声が響くのだった。
「えっと・・・誰?」
さらに遅れてやって来たイナリは一人着いて行けず困惑していた。
「お邪魔します」
影羅達に案内された居間で用意された座布団に座る春奈。
内心思っていたより大きく立派な家だなとかなり驚いていたりしていた。
「どうぞゆっくりしていってくださいね」
「まさか影羅様の学校に転校するなんて思わなかったにゃ」
「うん。私もまさか同じ学校だなんて思わなかったから驚いちゃったよ」
「教室で会った時はお互いに驚いたよ」
既に昨日顔を合わせ共闘もした為春奈は寝夢達と問題無く仲良く話していた。
「あ、でもそこの妖狐の人とは初めましてだね」
「そうですね。初めまして、私はイナリ。主に影羅様の護衛や屋敷の見回りをしています。どうかよろしくお願いします」
春奈が自分の事を言ってると気づいたイナリは軽く自己紹介と挨拶をした。
因みに妖狐とは妖力を得て妖怪化した狐で日本では有名な妖怪だ。
炎や妖術を操り人間を化かすと言われており春奈も戦った経験が何度かあった。
人間の姿の妖狐と会うのは初めてなので春奈は興味深そうにイナリを見ていた。
「所で陰陽師が妖怪達が住む屋敷に遊びに来たりして大丈夫なのか?」
「うーん、本当は駄目なんだけど・・・黙ってれば多分大丈夫かな」
「結構いいかげんにゃ」
「だって本家に知られたら絶対怒られるのよ。初めての友達なんだから黙っておきたいよ」
「それもそっか」
陰陽師と妖怪は敵同士な為春奈が言うようにバレたら何かしらの罰があるかもしれない。そう思い影羅も納得した様子だった。
「あれ、初めての友達?」
春奈の言葉に違和感を感じた河奈が呟くとそれに気付いた春奈がピクッと反応した。
「って事は春奈って今まで友達いなかったの?」
人によっては中々キツイ質問を躊躇なくする河奈。
そう聞かれ春奈は内心戸惑い思わずギクッと反応してしまった。
「え・・・え〜と・・・」
その動揺した答えだけで質問の答えは明白だった。
「・・・いなかったんだ」
「あんたデリカシーないにゃ・・・」
そう言いながら寝夢は呑気にしている河奈をジーッと睨んでいた。
「じ・・・実は私、人見知りで初めての人とは中々うまく話ができないの・・・」
動揺が収まったのか話し始める春奈。
春奈が言うには元々恥ずかしがり屋な上に幼い頃から陰陽師としての修行をしていた為身内以外と接する機会が少なくどんどん見知りになってしまったとの事らしい。さらに修行の為様々な学校に通っていたがやっと話せるようになったと思いきやその度に別の学校へ転校していた為今まで友達を作れなかったらしい。
「でも私達とは問題無く話せてますよね?」
そう氷華は質問するのだが
「それが、仕事柄妖怪と関わる事が多いから段々慣れてきて妖怪相手には平気になったの」
「な、なるほど・・・」
「そっか。それで昨日私とは普通に話せたんだね」
「多分相手が妖怪だって分かって気が緩んだから話せたんだと思うよ。それでもあんなに打ち解けて話せたのは影羅が初めてだけど」
「妖怪相手に気が緩む陰陽師ってどうなんだ」
春奈の話に驚き半分呆れ半分な感想を述べる風矢だった。
そうやって話していると襖が開く音がし一同は誰かがが入ってきた事に気付いた。
「お茶が入ったわよ」
そう言って入って来たのは赤い着物を着て頭に花の飾りを付けた女の子だった。
何杯かのお茶が乗ったお盆を運びながら影羅達の元に近づいてきた。
「ありがとう福」
「いえ、お気になさらず。影羅様」
影羅に福と呼ばれた少女は見た目より大人びた反応をして答えた。
「影羅その子は?」
「あぁ、この子は福。寝夢達と同じ私の仲間だよ」
「初めまして、座敷童子の福です」
「座敷童子!初めて見た・・・」
座敷童子とは人間の子供の姿をした妖怪で住み着いた家には幸せが訪れると言われている。
「小さいのに礼儀正しいんだね」
「小さいのは見た目だけよ。これでも五百年は生きてるのよ」
「え!?」
小学校低学年くらいの見た目の福からそう言われ思わず驚く春奈。
「因みに私も五百歳ぐらいにゃ」
「というかこの家に住んでる妖怪は私達含めてほとんどそれぐらい生きてますね」
「えぇっ!?」
見た目だけで言えば高校生かもう少し上くらいだなっと感じていた寝夢達にも言われさらに驚く春奈。
「そ、そっか。妖怪は見た目が変わらないまま何百年も生きられるからね・・・もしかして影羅も?」
もしかしたら影羅も自分より年上なのでは、と不安になり恐る恐る聞いてみる春奈。
「あ、私は十四歳だよ」
しかし影羅はあっさりと答え春奈は安心するのだった。
「良かった。ちゃんと見た目通りだったよ」
ちゃんと同い年で良かった、そう春奈が思った時だった。
「か〜らからからから」
「?」
「久しぶりのお客人。たっぷりおもてなしするよ〜」
どこからか陽気な声が響いてきて少し戸惑い辺りを見渡す春奈。
一方寝夢達は少しも動揺した様子はなかった。
「あれ、この声って?」
「あいつだろうな」
そんな様子で春奈以外が呑気に会話をしていると突然天井から何かが降りてきた。
「うらめ〜しや〜!」
降りてきた人物そんな声と共に春奈の目の前を何かで覆った。それは和傘だった。
だがそれは明らかに普通の傘ではなかった。何故なら大きな一つ目と舌が伸びる口があったからだ。
普通の人間ならかなり驚く事だろうが春奈は大して驚かず堂々としていた。
「あ、唐傘お化けだ」
「・・・あれ?」
平然とした様子の春奈とは反対にキョトンとした声が聞こえてきた。
傘の後ろから声が聞こえたと思ったら声の主は傘を閉じ姿を現した。
「あ、傘根だ」
「だと思ってましたよ」
傘根と呼ばれた妖怪はかなり驚いた顔をしていた。
「な、なんで驚かないんですか!」
「え〜と、唐傘ってかなり有名な妖怪だから知ってて当然というか、メジャーすぎるというか・・・」
春奈が少し申し訳なさそうに答えるとそれを聞いた傘根は悔しそうに駄々をこね始めた。
「もー!久しぶりに驚かせると思ってたのに!」
「やっぱりやり方が古いんじゃないんですか?」
「それに相手は陰陽師だよ〜驚くわけないでしょ〜」
「むっきー!!」
和傘と自身の青いツインテールを振り回し悔しがる傘根。
「ほらぁ、やっぱり驚かなかった」
「だから止めたのに」
そんな傘根に声をかけたのはいつの間にか部屋に入っていた二人の妖怪だ。
一人は緑色の長い髪を揺らしながら口元から舌をチラリと出しながら喋っていた。
もう一人は頭にリボンを付けた紫髪の妖怪で何と首が伸びており胴体から離れた頭が宙を漂っていた。
「めなか、絵真」
「どうも〜」
「すいません、影羅様。傘根が驚かせたいと聞かなくて」
めなかは呑気に手を振り絵真は申し訳なさそうに謝罪をし二人は正反対の反応を示していた。
「わぁ、垢舐めにろくろ首だ。影羅の仲間には色んな妖怪がいるんだね」
「次々妖怪が出てきても全然動じないのね」
さすが陰陽師だ、とイナリは思わず感心していた。
「お、私達の事分かるのね。嬉しいねぇ。じゃあお近づきの印に・・・」
そう言っためなかは舌をれろれろと動かしながら春奈の方へ伸ばそうと・・・
「やめなさい!」
「あたっ!」
伸ばそうとしたが途中絵真によってどこからか出したハリセンで叩かれ阻止された。
「またやろうとしたんですかめなか?その初対面の人を舐める癖やめた方がいいですよ?」
「な、舐める!?」
「でもこの衝動はなかなか抑えれらない物なんですよねぇ」
もしかして自分はあの舌で舐められる所だったのか、そう思った春奈は身震いしながら密かに絵真に感謝をしていた。
「めなか。私の友達でお客さんの春奈にそれは失礼だよ」
「じゃあ代わりに影羅様舐めさせてください」
「えっ!それはやだ!」
めなかの言葉に悪寒を感じた影羅は咄嗟に移動し寝夢の後ろに隠れた。
「あ、春奈。めなかは人を舐めるのが好きでちょっと変態っぽい所があるけどいい妖怪だからね」
「その説明と様子じゃ説得力ないよ・・・」
寝夢の後ろでめなかを警戒しビクビクした様子で説明する影羅には確かに説得力がなかった。
その後影羅達は驚かす事が出来ず暴れ続けていた傘根をどうにか落ち着かせ、危うく春奈や影羅を舐める所だっためなかを叱りようやく落ち着けたのだった。
「そういえばなんでみんな春奈の事知ってるの?」
「そういえば、私達春奈が来たことは福にしか言ってませんよ。どこで知ったんですか?」
ふと影羅が呟いた疑問に叉鬼が同意し傘根達に聞くと
「あ〜それは」
「それは、わたしが伝えましたー☆」
疑問に傘根が答えようとするとどこからか陽気な声が聞こえてきた。
それと同時に壁に飾ってあった鏡から溢れ出し中から何かが飛び出してきた。
「やっほー、みんな元気?」
鏡から飛び出た妖怪はキラキラとした光を辺りに散らしながら片目をウィンクしながらピースをしポーズを決めていた。
「見羅!」
「あなたが話したんですね」
「はい!影羅様達が帰ってきた時から様子を見ていました☆」
見羅と呼ばれた妖怪は紫の長い髪を靡かせながら宙をふわふわと浮いていた。
「影羅、この妖怪は?」
「あぁ、彼女は見羅。鏡の妖怪雲外鏡だよ」
「はい☆噂大好き!みんなのお姉さん。鏡の妖怪見羅でーす☆」
再びウィンクとピースでポーズを決める見羅。
どこからかキラーンと効果音が聞こえてきそうなその様子を一同は静かに見ていた。
「「「・・・」」」
「鏡の妖怪見羅でーす☆」
「いや聞こえてますよ。二度も言わなくていいですよ」
「冷たいわねぇ。聞こえてるなら何かリアクションしてよぉ」
叉鬼の冷たいリアクションに文句を言いながら宙を漂う見羅。
「え〜と、見羅は鏡と鏡を通して遠くの場所でも会話をする事ができるんだよ」
「相変わらずの噂好きね」
「だって、だって〜影羅様が陰陽師の友達を連れて来たんですよ?こんなニュース話さずにはいられないじゃない?」
「それで傘根達が驚かせに来たんだね〜」
「後先考えずに伝えるから春奈に迷惑をかける事になるんだぞ」
「迷惑をかけたのは傘根達のせいでわたしのせいじゃなくない〜?」
「反省が足りないようですね。では少し御仕置きが必要ですかね」
そう言って立ち上がった叉鬼の手にはいつの間にか薙刀が握られていた。
「わっ!ストップ、ストップ!あなたが怒ると洒落にならないのよ!」
叉鬼の凄まじい気迫に気圧され見羅慌てふためいてしまっていた。
因みに風矢の言葉を聞いた傘根とめなかは「私達迷惑だった?」と言いたげな顔をしそれを見た絵真が「当たり前よ」と言いたげな顔をしていた。
「あらら、叉鬼が怒るとちょっと大変ね」
「叱るのは良いけどこっちに飛び火はしないで欲しいにゃ」
口ではそう言いつも自分達が叱られるわけではため福と寝夢は呑気に眺めていた。
「叉鬼、一旦落ち着いて」
叉鬼を落ち着かせようと慌てながらも叉鬼と見羅の間に入るイナリ。すると
「くす、あはははは」
この緊迫した空気に似合わない笑い声が聞こえてきた。
笑っていたのは春奈だった。
「あ、ごめんなさい。別におかしくて笑っているわけじゃないの。ただなんか楽しくて」
「え、楽しい?」
「うん。私今まで友達がいなかったって話したじゃん。だからこういう賑やかな感じが新鮮なの。一緒に修行してる陰陽師仲間とは滅多に会えないし。だからこうやって賑やかに楽しめて私思ったんだ。やっぱり影羅と友達になって良かったってね」
「春奈・・・・うん。楽しい思いが出来たなら私も春奈と友達なれて良かったよ」
嬉しそうに微笑む春奈を見て影羅も嬉しそうに笑い返した。
「うぅ〜良い話ね〜」
「泣くほど?」
「そんなに泣くとこあった?」
そんな様子を見ていた見羅は感動したのか号泣していた。
「ふぅ。お仕置きは春奈と影羅様に免じてやめておきましょう」
「ほっ、助かった」内心そう思った見羅だった。
「影羅様良い友達ができたみたいね」
「ええ。私達としても仲良くしていきたいですね」
そう言い福とイナリは二人を微笑ましく見ていた。
「よーし!宴会にゃ!これから春奈の歓迎会をするにゃ!」
「お、いいね〜」
「からからから〜賛成!」
「そうと決まれば早速準備ね!」
寝夢の言葉に反応し次々と賛成し盛り上がっていく一同。当の春奈の意見も聞かずに宴会をやるという流れになり準備のため何名かは部屋を飛び出して行った。
「やれやれ、ただ盛り上がりたい口実が欲しかっただけでしょ」
「まぁ良いんじゃないですか。叉鬼も賑やかに盛り上がるの好きでしょう?」
「まぁ、そうですけど・・・」
氷華にそう言われ叉鬼は否定しきれずに顔を逸らしていた。
皆が慌ただしく動く中影羅と春奈は若干置いていかれた様子だった。
「あっという間に話が進んじゃったね」
「やっぱり賑やかで楽しい妖怪達ね」
急遽決まった宴会の準備はあっという間に完了した。
そもそも寝夢達は賑やかに盛り上がるのが好きで宴会をしょっちゅう開催していた。
その為準備も慣れており数時間ほどで料理や会場の準備が出来た。
「えー、それではこれより春奈の歓迎会を始めようと思います。乾杯!」
「「「「かんぱーい!」」」」
流れで影羅が代表で乾杯の温度を取る事になり影羅の一声で宴会は始まった。
そこからは飲んで食べて酔って騒いでのどんちゃん騒ぎだった。
影羅と春奈は勿論未成年の為論酒は飲んでいない。
氷華は忙しそうに用意した料理を運びその調理を食べた春奈は思っていた以上に美味しく驚いていた。
寝夢はマタタビに酔って机にっ突っ伏し眠こけ、叉鬼は酒を十瓶以上も飲んだが全く酔わず飲み続け、絵真は得意の琵琶を鳴らし演奏を披露し傘根は「いつもより多く回していまーす!」と言い傘回しを披露し、皆がそれぞれ思いもいに楽しんでいた。
「あはは、やっぱり賑やかで楽しいや」
そう笑いながら楽しむ春奈。そんな春奈と影羅の絆は確実に深まっていた。
その後も夜が更けるまで楽しい宴会は続くのだった。




