第九十八話 エディタ・アドレ
一般人であれば、到底見ることはできない巨大なクレーター。その中心に、俺は座り込んでいた。
立ち上がろうとするが、ズキリ。と、まるで電撃が直撃したかのような痛みが迸り、その行動を阻止する。
そして、そんな中、彼女の足音が確実に迫ってきていた。思わず彼女が来るであろう方向を向く。
「なぁんだ、結局は口だけだったのね。期待して損したわ。」
そう、彼女はそのボロボロの姿で、息を荒げながらも呟いた。
そして、彼女はその剣を振り下ろそうとする。
「さようなら、自称現代最強の魔法使いさん。」
その言葉に、俺はハッ。と、鼻で笑い飛ばした。
すると、彼女はそれが引っ掛かったのか、顔を寄せた。
「何がおかしいの?」
「いや、なに。確かにお前は最強だよ。まあ、それはパワーだけであって、それ以外はてんでだめだ。なのにも関わらず勝ち誇った気分でいるのが、おかしいんだよ。」
そこまで言うと、彼女の目はさらに濁っていく。
そして、無表情でその剣を振り下ろす。
「なあ、さいごに一つだけいいこと教えてやるよ。勝負ってのは、時に予測不可能な事態が起こるってことをな。」
ピクリと、その剣は勢いを失った。まるで、なにかに固定されているかのように。
予測不可能の事態に、思わず動揺する彼女。そして、そこで俺はその『逆転の一撃』を放つ。
「風は、剣を引き寄せる!」
その瞬間、ズシャリという勝利の音と共に、彼女の心臓はその剣に突き刺された。
その状況を、彼女は受け入れられなかったのか、じたばたと足掻き、何でなんでと疑問の言葉を吐き続けていた。
そして、俺はそんな疑問に答えるべく、その口を開けた。
「それは簡単な話だ。お前には、守るべき物なんてない。だけど、俺は守るべき物があるんでね。」
そうだ。俺はもうなにかを失うわけにはいかない。母と、約束したのだから。
そういって、俺はゆっくりとその体を起き上がらせた。そして、その剣を、思いっきり引っこ抜き、剣を振って、その剣を、そいつに向ける。
「何か、遺言はあるか?って、普通なら言うかもしれないが、俺はそんなたちじゃないんでね。じゃあな。地獄でも制裁が加わることを、祈ってるぜ。」
直後、俺は、彼女の人生にピリオドをつけた。
「やったよ。ユイガ。敵はとったぞ。」
そういって、俺は赤いバンダナを手解き、バンダナを持っている手を、上方に持ち上げた。
しかし、次の瞬間、体が限界だったのか、俺の意識はブラックアウトしていく。その、勝ち誇ったぞ。という達成感を表した笑顔を絶やさず。
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