第九十話 過去 其の一
そうして、僕はそこで目を覚ました。
そう、なんてことない。その村で。
「帰ったよー。ねね、今日のご飯はなに?お母さん。」
すると、僕の母は驚かないでよ?といったような顔つきで、その答えを口にした。
「今日の夕飯は、ステーキよ。」
それと同時に、僕の心臓は高鳴り、そのうれしさのあまり、「やったー!」と、無邪気にはしゃいだ。
そう、そんな家庭があればいいな。そう思っていた。
僕の家庭は、普通じゃなかった。僕の魔法は危険だと言われ、村のみんなから斎下すまれたような目で見られ、おまけに集落へ行くとなると、必ず気味悪がられる。
「はぁ、僕だって普通に過ごしたいのになぁ。」
そう、僕は空を見上げながら、そんなことをつぶやいていた。が、その瞬間、背後から母に抱きしめられた。
「大丈夫。これが普通なのよ。いや、きっと誰よりも幸せな家庭だと、私はそう思っている。」
そうネガティブなことを言う僕とは正反対で、母は優しかった。どんな目で見られようとも、その笑顔を絶やさずに、ずっとその笑顔をみんなに振りまいてきたのだ。
そして、なぜ母がこんなにも優しいのか。それはある男が関係している。
「ああ。その通りだ。いくらお前がなんと言われようと、俺たちが守ってやる。」
そう背後からそんな励ましの声を送るのは、僕の父であり、最強を言われている、エディタ・グイドである。
そう、僕の魔法が強大なのも、父が関係している。
そんな父の言葉に、僕は微笑を浮かべながらも、「ありがとう。」と告げた。
そんな風に、普通ではないが、僕たちは安定した暮らしをしていくのだろうと、ずっとそう思っていた。だけど、そんなある日の出来事だった。
その日は雨だった。だからこそ人気はなく、僕からしたら、自由な日と同義だった。それ故僕はその日は外に出て遊んでいた。のだが、突如雷が降り始めたので、僕は「ちぇっ、もっと遊びたかったのに。」
そう愚痴をこぼしながらも、僕は家まで歩いて帰った。
だが、家まではかなり遠い。大人が歩いて十分ぐらいだろうか。そんな位置に、僕の家はある。
「まあ、それは親が僕のことを心配してくれて、だよね。」
そうつぶやきながらも、僕は歩き続ける。母のもとへと。歩いて歩いて歩き続ける。
そうして、中腹あたりだろうか。僕は、なぜかその時感じ取った。その、嫌な予感を。
「まさか、ね。」
そう期待の意味を込めながらも、僕は少し早歩き気味になりながらも、母のもとに目指していく。
頼むよ。お母さん。
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