第八十三話 現実逃避
「え?」
僕が彼を抱擁していると、彼は、そんな素っ頓狂な声を上げた。
「なんで、こんなことを?」
だけど、そんな言葉を無視して、ただひたすらに僕の想いを伝える。
偽善かもしれない。だけど、やらない善よりやる偽善。だからこそ、僕は彼を救う。
「大丈夫。きっと君は幸せになれる。僕が保証するさ。」
そういって、じっと彼の瞳を見つめる。その青く澄んだ瞳は、なぜか僕に安心感を覚えさせ、心を落ち着かせた。
すると、彼はありがとう。とだけ告げ、その場を後にしようとする。
「いいのかい?お母さんと別れて。」
「いいよ。俺は、過去から逃げずに現実に目を向けるよ。だから、君も過去から逃げないでね?」
その言葉で、僕は目を覚ました。時刻は九時。みんなからはなんとことない朝のように見えるだろうけど、僕からすれば、親友がいないこの世界は、別世界同様だった。
だけど、それでも僕は人生の歩を止めるつもりはない。
そうして、僕は学校へと向かう。
「行ってきます。」
そういって、赤いハチマキを巻いて。
生徒人数がある程度そろったのか、授業が再開され、またA、B、Cクラスの三クラスで運用することになっていた。
そしてそんな中、あの作戦に参加したものたちは校長室にて、作戦会議を行っていた。
「さて、かなり敵の戦力も削れた。あとはいつたたきに行くか。それを決めないとな。」
そういって、片腕しかない先生は、そう告げる。
「なら、二か月後とかどうでしょう。それなら、こちらは満身創痍で行けますし。」
「そうだな。なら、二か月後に決まりだな。」
そのレイナの言葉により、攻めるのは二か月後。ということになった。
ただ、二か月後となるとあっちにのほうも万全の状態で来るんだろう。
なら、鍛えておいたほうがいいのかもしれない。もう、失わないためにも。
そうして、僕は鍛えるべく、屋上へと足を運ばせていたのだが、先客がいたらしい。
僕は、その先客に声をかける。
「先生、どうしたんですか?そんなところで黄昏ちゃって。」
すると先生はなぁ、と一言添え、やがて、その驚愕の一言を僕に告げる。
「さっきの発言から予想したんだが、随分とユイガっぽいことを言うじゃないか。もしかして、そのハチマキが原因か?」
「そうですよ。このハチマキのおかげで。」
すると、先生は笑い出した。
何がおかしいんだ?そう疑問に思う。そして、先生はやがて笑いをやめ、真剣な顔つきで僕の顔を見つめる。
「じゃあ、ユイガの魔法も使えるということだな?」
その言葉に、僕は無言の首肯をする。
「リベレイションに攻めるのは二か月後だ。だが、お前が戦力にならなきゃ意味がないんでな。少しばかし、試させてもらおう。」
次の瞬間、僕と先生の戦いが始まった。
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