第七十九話 レイナ
戦闘が終わり、俺、ユイガは勝ち誇ったようにその拳を上に掲げ、その確かな勝利を掴んでいた。
「終わったわね。さて、これで再びあいつを探せる。行くわよ。」
「わかったよ。」
なんとせっかちな女なのだろう。そう毒を吐きながらも、俺を筆頭にその道を進んでいく。
だが、それからというもの収穫という収穫はなく、俺たちは、再びあの場所に戻ってきていた。
はぁ、とため息をこぼしながらも、目をつむりつつ、俺は考えていた。
「ねぇ、大丈夫?」
急にそんなことを言うレイナ。だけど、心配をかけるわけにはいかない。だからこそ、問題ない。と一言だけ告げ、その今にでも死んでしまいそうな痛みを我慢する。
きっとこの痛みはさっきの倍化魔法の反動なのだろう。一度もこんな使い方したことないもんな。
そうおもいながらも、俺はその箇所を触る。
「え?」
その瞬間、俺の心臓あたりに、違和感を感じた。その異常事態に、思わず目を開ける。
開けた。開けたけど、なんで?
様々な推測が俺の中で交差する。だけど、わかっていることがあった。
「ね、大丈夫?って言ったでしょ?」
俺の心臓を貫いた剣を持っているのは、レイナだということ。そして、さっきまでの痛みはこの剣による
痛みなのだと。
「レイナ__、なんで、俺を?」
ああ。なんでだ?どうしてこうなった?いつからこうだった?レイナはどうして俺を?
あまりの混乱のあまり、考えるたびに疑問が浮かび上がる。だけど、次に発せられるその言葉で、その疑問はすべて解決された。
「簡単じゃない。敵側の戦力は、削っておいて損はない。そうでしょ?」
そういうことだったのか。思わず笑ってしまう。だって、そうしてしまうと、すべての辻褄があってしまう。第二次試験でなんでレイナが幹部を倒せなかったのか、第三次試験で、なんで俺と合流できなかったのか。
「すべては、嘘。だったんだな。」
「大正解。」
そんなことを、嬉々として告げるレイナ。背後を振り向けないが、彼女が今どんな顔をしているのかぐらいわかる。
だが、今はそんなことはどうだっていい。いち早く延命活動を。
「それと、言っておくけど、もうあなたは助からないわ。だって、心臓を貫いたんだから。これを抜いて二分後、あなたは死ぬことになる。それじゃあね。」
そういって、その剣を抜き、去っていくレイナ。そんな彼女を、今の俺が止められるわけもなく、ただひたすらに、その姿を見ることしかできなかった。
そして、そのまま、俺はその光景を見ながらも、考え事をするのだった。
そう、あの、まだ笑って過ごせていた、あの時のことを。
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