第四十一話 卑怯
俺が拠点でくつろいでいると、その異変は急に起こった。俺の視界が黒に染まっていく。爺さんも同様の出来事が起こっていたのか、困惑していた。俺はこの現象について何とか推察するが、次第に俺の意識は闇に落ちた。
そうして俺は目を覚ます。
「...。」
あたりを見渡す。そこで俺は目の前に強大な気配が迫ってきていることに気づいた。思わず戦闘態勢をとって、最大限の警戒を行う。
「到着まで、3。2。1。」
ゼロ。そういった瞬間、俺の目の前でドンという衝撃音がする。それと同時に、土ぼこりが舞う。
やがてその土ぼこりは勢いを失い、その人物が誰だかおおむね理解した。
「ザー、ドリ。」
すると彼は俺を視認したのか彼は、こちらにその狂気に満ちた瞳で、俺を見つめる。そして、俺は赤いハチマキを巻いて、気合を入れる。
「やあ。」
「なんでお前がここにいるんだ?」
「なんでって、そりゃもちろん君の足止めさ。今回は仕事が多いからねー。速めに終わらせたいんだ。」
彼から放たれる殺気の量が倍増し、畏怖の念に駆られる。足はがたがた言い出し、思考もまとまらなくなっていた。
「早めに終わらせられればいいけどな。」
「終わるよ。」
虚勢を張っていたが、それでも微動だにしない彼を見て、さらに恐怖の念を抱いた。
そうして、彼は俺の目の前に現れた。思わず回避行動をとろうとするが、違和感を覚えた。だからこそ俺はあえて回避することはせず、倍化魔法で彼の攻撃を最低限のダメージで済ませた。
「あぶないな。早速攻撃してくるなんて。」
「いいじゃん。これは殺し合いなんだから。それよりも、よくよけなかったね。てっきりよけると思ったんだけど。」
さっきの発言からして、きっとよけていたのなら、俺は。そう想像するだけで、余計恐ろしく感じる。
「予定変更。かな?ちょっと君に興味が湧いちゃった。」
そういって、彼は俺に突っ込んでくる。それを俺は予測しており、彼の攻撃に合間にカウンターを入れる。
「さあ、やってみな。」
次の瞬間、俺の目の前には魔法学校の生徒が現れていた。その光景を見て、俺は思わずその手を引っ込める。
「あのまま殴ればよかったのに。」
俺が手を引っ込めた時には、彼は俺の背後をとっており、そのまま俺は彼に殴られ、数メートル後方に吹き飛ばされる。だが、その衝撃を最小限に抑え、俺はそのまま彼に突っ込む。予想だにしなかったこの一手。さあ、チェックメイトってやつだ。
「動くな。こいつに死んでほしくなかったらナ。」
彼がその言葉を発した直後、俺の体は硬直していた。だって、彼の隣には首元にナイフを当たられて、今にも泣きだしそうな顔をしている、学校の生徒がいたのだから。
「くっ...!卑怯だぞ!」
思わずそう叫ぶ。だが、彼は楽しそうに声を弾ませながら言う。
「さっきも言ったじゃん。これは殺し合いなんだって。」
この時、俺は理解した。彼がいかに性根が腐っているのか。
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