第四十話 異変
転送された俺は、その瞼を持ち上げた。
「ここは。」
そういって視界が悪い森の中、あたりを一瞥し、周囲の状況を確認する。
「敵は、なしか。」
そう安全を確認したので、俺は校長を探すことに専念することにした。その時、木から、何かが揺れる音がした。思わず俺はそこに視線を移し、その音の正体を確かめる。
「こ、校長??」
そこにいたのは紛れもない、校長だった。
校長も俺を見つけたのか俺に大声で助けを求めてきた。
「お、おい!助けてはくれぬか!!」
「あ、はい。」
そういって、俺は気によじ登り校長を助けた。
「ふ、ふう。危なかった。」
そういう校長に俺はふと疑問がよぎったので、その疑問をぶつけることにした。
「校長、あの、さっきなんであそこにいたんすか?」
「あ、あれはななぁ、ちょっと転送魔法をミスっちゃって。」
そういって、はずがしがる校長。そのしぐさに俺は少しかわいいと思ってしまった。だけどそれはいけないと自分を戒め、正気に戻った。
「そうだったんすか。まあ、それもそれでしょうがないっすね。」
そういった瞬間、足音が聞こえた。本来なら戦闘態勢に入るところだが、俺は戦闘態勢に入ることはなかった。だって俺はその足音の正体を知っていたから。
「あ、いたいた!!」
そう無神経に言うレイナを俺はあきれてような顔で見つめる。
「お前、本来ならあいつと一緒にいるはずだろ?」
「いやぁ、だって。」
すると彼女はとんでもないことを言い出した。
「方向音痴なんだもん。」
「は?」
そんな言葉に、俺は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
「方向音痴?」
「そうよ、方向音痴。」
俺はこの時が来るまで、彼女を圧倒的強者で何でもできる才女だと思っていた。だが、今この瞬間それは吹っ飛んだ。思わず手で顔を覆う。
「うそだろ。」
「大丈夫よ。きっとユイガは生きてる。」
「そういうことじゃなくてだなぁ。」
そういって、俺は空を仰ぐ。その青空は青く澄んでいて、海を連想されるほど美しかった。
だが次の瞬間、俺の視界に異変が起きた。
「なんだ、これ。」
視界が黒く染まっていく。だがそんな中、俺は他者にも同じようなことが起きていないか確認した。
「なんじゃ、視界が、黒く?」
やはり、校長もレイナもおそらく同じようなことが起こっているのだろう。
そう推察するが、どんどん俺の視界は黒に染め上げられていく。やばい。そう思った時だった。
「おぬしら!!気をつけろ!!この魔法は!」
そう叫ぶが、視界だけでなく聴覚まで奪われかけていたため、校長の声がよく聞こえなかった。
そして、次第に俺の意識は闇に落ちていく。どんどんと、どんどんと。
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