第二十九話 頼もしい仲間
その疑問が晴れたのと同時に、僕はもう一つ、疑問を抱いた。
「なあ、あんたはなんで、リベレイションに所属しているんだよ。」
そいつは表情を変えぬままその答えを告げる。
「簡単だ。俺も、昔落ちこぼれと言われていたからだ。俺はもともと、あの村の住民じゃない。それは知っているな?」
「ああ。」
そうだ。こいつはつい1年前、あの村に引っ越してきたのだ。
「俺があの村に引っ越す8年前、いや、物心がつく前に俺の両親は殺された。ショックだったよ。なんで殺されたんだって。ずっと疑問だった。」
するとそいつは悔し涙を浮かべながら。
「そうしてある時知ってしまったんだ。俺の両親が殺されたのは、俺がもつこの魔法のせいなんだって。」
どうしてリベレイションに入ったのか、彼の話を聞いて僕は妙に納得した。本当は納得してはいけないのに。敵なのに。だけど、どうしても僕はザードリが憎めなかった。それと同時に、僕は彼の両親を殺した人物に恨みを抱いた。だからこそ、僕は彼に問うことにした。
「じゃあ、誰がそんなことを?」
彼から出た言葉は、僕の予想の範疇を大きく超えていた。だって、
「殺したのは、この国のトップの人間たちだ。きっと、俺が脅威になりうる存在だとみなしたんだろう。だけど、だからと言って、殺すってのは、あんまりだ。そして、俺を庇って死ぬあいつらも、バカだよ。」
そう愚痴をこぼすザードリ。だけど、その目尻には涙がにじみ出ていた。すると彼はその服の袖で涙をぬぐって、こちらを見つめた。
「それでもお前は、俺の前に立ちふさがるのか?俺たちが勝てば、この世界はよりよくなるというのに?」
ああ。確かにそうだ。だけど、僕は見てしまった。あの時、この学校の生徒が、捨て駒にされていたのを。だから。
「うん。だって、君たちのやっていることは間違っているから。」
「ははっ。そうか。そうかそうかそうか。じゃあ。」
すると彼の目からは光はなくなり、そのうつろな目で、僕をにらみつける。
「死んで。」
次の瞬間、またもや僕の眼前に彼は現れた。
俺たちは残党たちを探すために散策をしていた。そうしてその間。俺はさっきの戦いについて考えていた。あの時、俺は先生を見つめているばかりで、何もできなかった。強くなりたい。そう思った俺はさっきの魔法について先生に尋ねることにした。
「先生、さっきのは?」
すると先生は手で頭をかきながら、少しためらいがちに言った。
「あまり知られたくなかったんだが、まあいい。あれはな、俺が生み出した魔法。いうなれば空間魔法といったところか。まあそれであいつを倒したってわけだ。」
空間魔法。それが聞くだけでいかにすごい魔法なのかがわかる。しかも、それを使わなくてもきっと先生は残党程度余裕でかたずけられるんだろう。その時俺は確信した。先生こそが、最強なんだって。それにしても、
「あいつは、どうなっているんだろうな。」
そういって、その曇った空を見つめるのだった。
僕はそいつのナイフを、何とか剣で捌いていた。だけど、捌いても捌いても彼の猛攻は止まらない。やがて、僕はさっきの戦い故か集中力を一瞬、切らしてしまった。
「隙あり。」
そうして僕の体に深い切り傷がつけられる。僕はその箇所を抑えず、反撃に転ずる。だけど、彼はその攻撃を難なく回避し、またもや僕に傷をつける。だが、今回はそれだけでは終わらず、膝蹴りを食らう。
「げほッ...!!」
「おいおい、まだ始まったばかりだぜ?もっとあがいてくれないと、こっちとしても詰まんねぇんだよなぁ。」
そういいつつ、さっきの攻撃で倒れた俺の背中を足で踏みつける。
「うぅ。」
「ほら。ほら。まだまだあがいてくれよぉ。」
すると奴はけるのをヤメ、足で僕の腹を蹴飛ばした。そのせいで、僕は数十メートル後方へと吹き飛ぶ。だが、奴は間髪入れずに殴打をする。
「ごほっ!ごほっ!!うぇ。」
やがて、奴は殴打をやめた。そうして、僕から遠ざかろうとする。おい、まだ終わってないぞ。そう言おうとするが、僕の口は動かなかった。なんで?そう思ったが、僕の意識がやがて落ちていく感覚を感じ取った瞬間、その疑問は消えた。
そうか。この戦い、僕は負けたのか。
俺は、そいつが意識を失ったことを確認することもせず、その場から離れようとした。だが、目の前に、男が立ちはだかっていた。男はこちらを見るなりにやりといやらしい笑い方をする。
「よぉ、あんたがうちの学校に不法侵入してきた犯罪者か?」
「犯罪者とは、少し失礼だな。で、俺に何か用か?」
「当たり前だろ。俺は、あんたをとっちめるためにここに来たんだよ。」
「ほう。では、名前をうかがわせてもらおうか。」
「Aクラス第十五位、オルトだ。」
そうして、俺と奴との戦いが幕を開けた。
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