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第8章 アイドル・ダンジョン 邁進中  作者: みーたんと忍者タナカーズ
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 全ての根源はタイムリープ。

 タイムリープが原因だとしたら、時間が戻る前と何が変わったの?

 リンちゃんの中から東京が消滅している。

 これは宇佐義やお茶の間博士と一緒。

 とは言え宇佐義やお茶の間博士は福岡の人らしいし。

 だとしたら関東の地理に詳しくないだけかもと思っていた。

 しかしこうして秋葉原で活動をしていた仲間の記憶からも東京が消えたとなると、話は変わってくる。

 もしかすると本当に東京がこの世界から消えたのかもしれない。

 じゃあかつての東京のことを覚えているのは何人いるんだろう?

 他の虹コングのメンバーもまた東京を覚えていないのではないのか。

 メンバーに会いたい。

 ここがあの島ならどこかにいるに違いない。

他のメンバーは?

 そうだ、海だ。

 きっと海にいる。

 もともとビーチで遊んでいたんだ。

 それにこの世界はビキニ回。

 ビキニにするのが目的のはず。

 とにかく海に行こう。

「はっ!リンちゃん、なんで服を着てるの!」

 あかりんは思い出した。

 前世の記憶では葉っぱ一枚で過ごしていたはずである。

 リンちゃんはステージ衣装のままではないか。

 あかりんは自分の姿も見てみる。

 ヤバい、可愛い。

 あかりんのためにつくられたようなブリブリの服。

 二人とも服を着ている。

 もしかしたらここは元いた島ではないのでは?

 それとも葉っぱファッションの流行が過ぎ去ってしまったのか?

 どっちにしてもみんなを探そう。

 考えるのはそれからだ。

「リンちゃん、虹コングのみんなを探すよ」

「うん、分かった」

 さてどっちに行こう。

 太陽が沈みかけてる方が西。

 でも方角が分かってもどこがビーチか分からない。

「おしえて、東大脳。ビーチの位置はどこ?」

「分かりました。位置を教えます」

 あかりんの脳の中で会話が行われていた。

あかりんは自分の両方の胸を指差して、

「リンちゃん、私の乳首の位置はここだよ」と言った。

 言ったあとあかりんは真っ赤になる。

「リンちゃんの乳首の位置も教えてよ」

 東大脳が勝手にしゃべり出す。

「嫌だ、あかりん。教えられないわよ」

 そう言って走り出す。

「教えてリンちゃん」

 あかりんは自分の意志に反してリンちゃんを追いかける。

「ねえ、ねえ、乳首の位置を教えて」

「何言わせるの!」とあかりんが叫ぶ。

 逃げるリンちゃんを追いかけるあかりん。

 そしてあかりんはリンちゃんを見失った。

「もおー、逃げられたでしょ」

 あかりんは東大脳に怒る。

「結局、乳首の位置は分かりませんでした」

 東大脳が答える。

「乳首じゃなくてビーチだって」

「ビーチ?ビーチ?」

「何、ビーチも分からないの?」

「東大脳は年中無休でお勉強をしてきた東大生の脳みそに近いのです」

「だから?」

「東大生にはビーチという単語はインプットされていません」

「ビーチも知らないの。海よ、海。砂浜でビキニを着た女の子が寝転がっている場所よ」

「ブー、ブー。エマジンシー!女、裸、受験生の敵」

「何、どうしたの?」

「女、ビキニ、落第、危険。ハニートラップ!ブー!ブー!メンテナンスに入ります」

「もおー。何」

 日が落ちて辺りは暗くなる。

「星がきれい」

 あかりんは見上げた空の美しさに感動していた。

 リンちゃん、一人で大丈夫かな。


 リンちゃんはひとりぼっち。

 じっとしてないと迷子になっちゃう。

 もう迷子だけど。

 怖さを紛らわそうと歌を歌う。

「タンタンタヌキの」

 カサカサと音がする。

 恐怖で凍り付くりんちゃん。

「キャー!」と悲鳴。


 あかりんはリンちゃんの悲鳴が聞こえた。

 悲鳴の方へ走っていく。

 りんちゃんがタヌキに抱きついていた。

「ねえ、僕のこと呼んだ?」

「たぬ吉!可愛い」とリンちゃんはタヌキに頬ずり。

「可愛いって……………………」

 あかりんは呆れた。

 リンちゃんが抱きついていたのは信楽焼のたぬきであった。

「タヌ吉だよ、あかりん」

「そうだね、そんな名前かもしれないね」

「リラックマより可愛い」

 そう言ってタヌキの置物に抱きつくリンちゃん。

「よせよ、本当のことは」と信楽焼のたぬきが照れている。

 リンちゃんの趣味が分からない。

 あかりんが首をひねる。

「テディベアよりも百倍、可愛いよ」

 りんちゃんがタヌ吉を誉める。

 そうだ!

「熊さん!ビーチはどこ?」

「ビーチ?」

「女の子がビキニではしゃいでいるビーチ?」

 タヌ吉が首をひねる。

「使えない熊だな!」

 あかりんがペッ!と吐き捨てる。

「僕は熊じゃないよ、タヌキだよ」

「そうだよ、あかりん、どうみてもタヌキさんじゃない」

「なるほど、そうか」

 じゃあ、熊の下りはなんだったの?

「熊さんならビーチを知ってるかもしれないな」

「本当にぃー、あったまいいぃー。だーい好き」

 リンちゃんはタヌ吉に抱きつく。

「熊さんなら魚を求めて海にも行くから」

 確かにそうだ。

 タヌキは森の生き物だけど、熊は違う。

 熊さんなら知ってるかもしれない。

 この先に熊がいるに違いない。

「あっちのほうに熊さんがいると思うぞ」

 タヌキの置物が指差す方角が分からない。

「取り敢えず行ってみる」

 あかりんがそう言って歩き出すと、りんちゃんはあかりんのあとを走って追いかけてきた。

「タヌキはいいの?」

「うん」

「あんなに気に入ってたのに」

「だってあのタヌキ、王子様だったんだよ」

「王子様?」

「そう、魔女に魔法をかけられてタヌキの置物になってただけみたい」

「それって分かるの?」

「タヌ吉が話してくれた」

「チョロい。リンちゃん、チョロいわ。絶対騙されてる」

 あかりんが可哀想なものを見る目で見つめている。

「僕の顔はトムクルーズとジョニーデップの若い頃に似てるって」

「あのタヌキ、そんな嘘を」

「嘘じゃないと思うよ」

「どうして?」

「だって人を信じてあげないと生きていくのって辛いよ」

「タヌキだけどね。化かされてるんじゃない」

「バカにされてないけど」

「どうみてもアレはただのタヌキの置物だから」

「うそうそ。絶対、イケメン王子様だって」

ああ、こうしてリンちゃんはお茶の間博士に簡単に騙されたんだ。

 あかりんはマトパカ・リンのまっすぐな正確があだになったことを悟った。

「今度あったら魔法を解いて上げるんだ」

 リンちゃんはウキウキである。

「かっこいい王子様だったらいいね」

「あっ!あかりん、横取りしたら、メッ!だからね」

 リンちゃんが頬をふくらます。

「しないわよ!」

「アラサーだから結婚、焦ってるんじゃあー……………………」

「焦ってません」

「そんなんで大丈夫」

 リンちゃんは濡れた子犬を見るような心配そうな目であかりんを見つめる。

 リンちゃん、そんな目で見てたんだ。

 あかりんは永遠の17歳だからね。



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