22
お茶の間博士の夢枕に高校生の男の子が立っていた。
それは間違いなく天馬君であった。
「君は僕を見捨てたんだ」
天馬が声をあげる。
「そんなんじゃないんだ、天馬君」
「君は子供の頃から僕のことが嫌いだったんだね」
「そんなことないよ」
「いや、ウソだ。君はモテモテの僕のことが嫌いだったんだ」
お茶の間博士はウソをついてもしょうがないと思った。
「ああ、そうさ、嫌いだった」
「だからあの時君は僕のことを無視したんだね」
「そうじゃないんだ」
「僕はイジメられてる君を助けて上げたのに、君は僕を見捨てた」
「違うんだ。見捨てたんじゃなくて助けられなかったんだ」
「一言声をかけてくれたら良かったのに……………………」
「声をかけるのが怖かったんだ」
「僕は君に救いを求めたのに……………………」
「いじめの対象になるのが怖かったんだ」
「結局君もイジメる側の人間だってことさ」
「ああ、そうだよ。天馬君の言うとおりさ」
「開き直りかい」
「もういいだろう」
お茶の間博士は叫ぶ。
「なんで夢枕に出てまで僕を苦しめるんだ」
頭を抱えるお茶の間博士。
「いじめっこを憎んだらいいだろう」
「僕は君に憎まれていた」
「天馬君が悪いんだろ。僕が持ってないモノを全て持ってるじゃないか」
「僕は君を許さない」
「なんだよ、女子にモテモテな君のせいでどれだけ僕が落ち込んだと思ってるんだ」
「君は2度目の過ちを犯した」
「なんで死んでまで僕を苦しめるんだよ」
「君は僕のトラウマより女の子にモテることを優先した」
「女の子にチヤホヤされたかっただけじゃないか」
「僕は君を許さない。ずっとずっと呪い続けてやる」
お茶の間博士は大量の汗をかいて目覚めた。
ああ、俺は間違ったのだろうか?
天馬君のトラウマを取り除く方が良かったんだろうか?
ヤンキーやギャルのいるオチャノーマ・サマーよりも優先すべきだったのか。
憂鬱な気持ちでレッスン場に行くとそこは楽園であった。
目の前にひろがる魔法少女な世界。
「ここはプリキュア祭なのか!」
思わずお茶の間博士は目を疑った。
昨日までいたヤンキーもギャルもそこにはいない。
「おかえりなさい、プロデューサーさん」
メイドたちが出迎える。
プロデューサー?ここはアイドルマスターの世界なのか?
「おかえりなさい、お茶の間博士」
ロココが出迎える。
どひゃあー!めちゃくちゃ可愛い!
ロココがスルメイカがぶらさがったスカートを身にまとい、くるりと回る。
「ブラボー!」
思わずお茶の間博士は叫んでいた。
「ブラボーですよ、ロココさん」
スルメイカのにおいがする。
「ああ、呼子のかおりがする。スルメイカは鮮度が命。その身はやわらかくて、口に入れた瞬間に旨味が広がり歯ごたえも絶妙。そのまま刺身で食べるもよし、煮づけや唐揚げにするもよし。イカ墨を使ったパスタやリゾットにするもよし。何をするにしても、その独特の風味が食欲をそそること間違いなし。まして言わんや、絶品は目の前の可愛いロココ。ロココの手にかかれば回るスルメが踊り出す。一口口にいれたなら、スカートに存在していた付加価値がおいしさを2倍、3倍へとふくらます」
お茶の間博士は饒舌に想いを口にした。
「スルメイカ入りのオムライスです。お茶の間博士」
ロココが微笑んでいる。
ロココはさらにケチャップで「LOVE♡」と文字を書く。
「おいしくなーれ。萌え萌えきゅーん」
ロココは手でハートをつくって魔法をかける。
「ブラブラブラボー!」
お茶の間博士が叫んでる。
一口オムライスを食べてみる。
「地球にうまれてよかったー」と叫ぶ。
ああ、ここに来て良かった。
この一口は天馬君のトラウマさえ消してしまいそうだ。
「天馬君。俺の選択は間違いなかった」
ヒラヒラの服を着た御城スミレが出迎える。
「おかえりなさい、プロデューサー」
スミレが一回転するとスミレの花のにおいが舞い踊る。
スミレがお紅茶セットをテーブルに置いた。
なんだ、この可愛らしい女の子は?
萌え萌えマジック全開ではないか。
「おいしくなーれ、おいしくなーれ」と角砂糖を入れるスミレ。
スミレの花びらがカップに舞い散る。
「どうぞ」とスミレが微笑む。
まさに天使の笑顔。
カップをかき混ぜて一口。
「ああ、なんという芳醇な味なんだ。心がキューンとなる驚きの風味。その甘い香りはまさに魔法がかかったかのように魅力的。素材選びには、真摯な想いと愛情が込められていることがわかる。まさに山の手のお嬢様が入れてくれたお紅茶。そこに加わる萌え萌えマジック。ブレンダーの魔法にかけられた魅惑の味わいとお嬢様の癒し。まさに天使ではないか」
「お嬢さん、もし良かったらお名前を?」
「指名ナンバーワンの御城スミレです」
「サンキュー、サンキュー」とヒラヒラの服を着た女が揉み手をしながら現れた。
そして狭いステージにあがった。
「今からショーですわ」とスミレは手を叩く。
「先輩の芸を盗まないと」とメモ帳をとりだし、舞台をじっと見つめるロココ。
舞台を見つめるお茶の間博士。
「サンキュー・キララです」
「サンキュー・西崎です」
「二人揃ってサンキュー・オチャノーマです」
「サマーを忘れてんがなあー」とキララ。
「パイセン、可愛いなあ~。そのメイド服」
「可愛いのは服だけかい」
「靴もかわいいなあ」
「衣装ばっかやなあー。他にはないんかい」
「カチューシャも萌え萌えでんなあー」
「おい!私を誉めんかい」
「ははははは。ウケるー」
「私の顔を誉めなさい」
「超ウケる」
「お前も可愛いなあー」
「パイセンこそ!」
「それ先に言わんかい!」
「服だけですけど……………………」
「それは余計や」
ツッコむキララ。
「ありがとうございました」と舞台を降りる。
「なんだ、今の漫才は?完成度の低い新喜劇風……………………。いわゆるアイドルがM1を狙ってがんばったみたいなネタは」
お茶の間博士ががっかりのため息をついた。
「あの2人、お笑い担当なんです」
スミレが優雅にお紅茶を継ぎ足す。
「ああ、スミレの花咲く頃。この子は目の保養所だ。日本の宝塚。いや、赤羽の宝だ」と悦のため息。
「なんで私たち、名前が変わったんですか?」
西崎が言った。
「サンキュー西崎って芸人じゃないですか!」
「私だって、サンキューキララに改名になったのよ」
「もしかして、私たち、このままお笑い担当になるんですか」
西崎39が涙目で訴える。
「知らないわよ」
「誰がきめたんですか?」
「プロデューサーじゃない?」
「あのハゲの仕業ですか?」
西崎39がお茶の間博士を睨んでる。
「なんであの2人お笑い芸人みたいなことしてるんだ」
お茶の間博士が聞いた。
「わかりません」
スミレが答える。
「あとあのスルメのだけど……………………」
お茶の間博士はロココのスカートにぶら下がってるスルメを指差した。
「ロココもお笑い担当なんじゃないですか」
「えっ?私、お笑い担当なの?」
ロココが目を白黒させている。
「きれい担当も可愛い担当も私1人で十分ですもの」
御城スミレが笑う。
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そのうち引っ越しします