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必死でもモップがけをするお茶の間博士。
「ちーす」とルリが現れた。
ルリはお茶の間博士がまるで存在してないかのように素通り。
そしてナツメの隣に並ぶ。
二人は壁を背にしてじっと立っている。
「くっそ!」とナツメが吠える。
その声にビビリあがるお茶の間博士。
なんだよ、この雰囲気。
どうしてオチャノーマ・サマーにしたんだよ。
他にもいろいろアイドルいたのに。
そうかあの目だ。
ロココの目だ。
濡れた子犬のような目で見つめられて虜になってしまったんだ。
お茶の間博士は自分の名前が似てることに運命を感じた。
そしてオチャノーマ・サマーを応援したいと思った。
「どうして先輩が先に来て待ってんだ。くっそ!」とナツメが時計を見ている。
「こりゃあー、一度しめないといかん」
腕を組んだルリが床に唾を吐く。
ああ、そこ、拭いたばっかり。
お茶の間博士が思った。
「ハゲプロは上下関係がしっかりしてるってことを教え込まないといけませんね」
ナツメがルリに言った。
「うちら、オチャノーマ・サマー。
いったい何を目指して
何をして生きていくんだ」
ルリが突然リリックを紡ぎだす。
「自分のことなのに
他人に頼ってばかりの若者」
それに答えるナツメ。
突然バトルが始まった。
「遅刻するよなやつはしばく。
これ常識」と腕を組んで上下に揺れるルリ。
「それ、女王式。
いつでも先輩女王様。
ハゲプロの常識。
うちらが教えてやるよ、後輩に」
ナツメも体を上下に揺らしてる。
やばいよ、こいつら。
地下格闘家かよ。
本当のストリートファイトをはじめるつもりかよ。
もしかしてあのロココの目。
先輩たちにしめられた後だったんじゃあー。
「強さとホコリを持って自分を貫け」
「偉そうなくせに何もできない大人。
自分勝手で傲慢な大人」
「自分一人じゃ道一つ切り開けない大人」
「そんな大人になりたいのか、後輩。
決めたのは自分だろ!」
「強さと誇りを持って自分を貫け」
二人はグータッチ。
そのまま拳をぶつけ合う。
気がつくとナツメが床でタップをしている。
腕しぎ十字固めが完全に決まっていた。
起き上がると二人は笑い合う。
おいおい!
ほっといたら俺のロココがこいつらにボコボコにされる。
やばい!
そんなことはさせない。
止めないと!
十兵衛、お前を信じてるぞ。
お茶の間博士は緑のサイリュームをとりだして、ぎゅっと握りしめる。
「あのおー」とお茶の間博士が声をかける。
「んだ!ハゲ!」とルリがガンをとばしながら前に出る。
それをナツメがとめる。
「ルリさん、ここは私が」とナツメが走り出す。
そしてお茶の間博士に跳び蹴り。
そのままお茶の間博士は気絶してしまった。
「きゅるるん」という声が遠くから聞こえた。
ななみんがルリとなつめに絡んでる。
「なんだよ、キモいなあ~」
「キモいって言うなっ。プンプン」とななみんが頭の上に拳をのせておこってる。
「オコだぞ!」とななみんがルリを突き飛ばす。
「おこっちゃいやーだ!」
ななみんがナツメの腕にツンツン。
「ったく、これで後輩なら」とナツメは歯ぎしり。
「ねえ、ねえ、ルリルリ。ななみんのお願い、きいてほしーな」
「なんだよ」とルリは素っ気ない。
「だからあー。いつもお願いしてるやつ」
上目づかいでななみんが見つめる。
「ねえ、ななみんと契約して魔法少女になってよ!」
「無理」
「どんな願い事でも必ず叶えてあげるよ」
十兵衛……………………。
お茶の間博士は薄れゆく記憶の中で十兵衛を思い出していた。




