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第8章 アイドル・ダンジョン 邁進中  作者: みーたんと忍者タナカーズ
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 お茶の間博士は同じ場所を何度もモップがけ。

 モップで拭いても拭いても消えない血。

 十兵衛の真っ赤な血だ。

「なんでこんなに消えないんだ」

 あの猫、ふざけやがって。

 俺が天馬を羨んでいる?

 まさか。

 あの落ちこぼれやろうを……………………。

 ふざけるな。

 あいつは自分で勝手に堕ちていったんだ。

 高校時代、あいつは突然イジメの標的になった。

 理由はきっとあいつが顔が良くて頭が良かったからだろう。

 とくに女の子にキャーキャー言われて俺でさえ鬱陶しかった。

 それが1年年上の先輩に目をつけられたんだ。

 あいつは目立ちすぎたのさ。

 繰り返されるイジメの日々。

 やつは俺にまで救いの目を差し伸べた。

 俺が目をそらすとあいつはがっかりした顔でうつむいた。

 そして次の日やつは学校を休んだ。

いや、やつは自殺をしたんだ。

自宅で首をつったんだ。

俺は悪くない。

俺が手を差し伸べたりしたら、今度は俺が標的だ。

だから俺は悪くない。

だからもう俺の前に現れないでくれ。

やっと忘れかけていると言うのに。

頭がおかしくなりそうだ。

そうやってしつこくされると辛いんだよ。

後悔してもしきれないんだよ。

あの時僕が声をかけてあげたら死ななかったんじゃないかって。

僕は今でも天馬君のことを忘れられないんだ。

「どんな願いでも叶えて上げるよ」

 十兵衛が現れた日。

 やつは言ったんだ。

天馬君だって生き返らせて上げるって。

 なんで俺が天馬なんかを。

 天馬のためにどうして俺が……………………。

「願い事は一つだけなのか」

「もちろんそうだ」

「じゃあ何か願い事をしたら、もうお前は俺の前に現れないのか」

 お茶の間博士はきいた。

「君に会うことはある。しかし君は願い事を叶えたんだ。僕はもう君には用はないよ」

「ああ、そうか」

「なんだ、君の願い事は……………………」

「僕の願いは」

「君の願いは……………………」

「アイドルグループオチャノーマ・サマーを僕の思い通りに操りたい」

「うん?」

 十兵衛は首をひねる。

「それはプロデューサーになりたいと」

「そうじゃない。それ以上の存在になりたいんだ」

「うーん……………………。もっと具体的に」

「僕はオチャノーマ・サマーは今のままでは武道館にいける気がしない。だから僕が僕の力でオチャノーマ・サマーを武道館に連れて行きたい」

「つまり君の願いは君の力でオチャノーマ・サマーを武道館でライブができるアイドルにしてあげたい」

「そうそう。そういうことだ」

「それだけでいいのかい」

「それだけでいい」

「オチャノーマ・サマーの誰かと結婚したいでも叶うんだよ」

「それじゃあダメなんだ。今のままじゃオチャノーマ・サマーは武道館なんかに行けやしない」

「分かった。契約成立だね」

「これで君は僕の前に現れないんだろ」

「ああ、会うことはあってもこっちから声はかけないよ」

「分かった」

 こうしてお茶の間博士は十兵衛と契約を結んだ。



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