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第8章 アイドル・ダンジョン 邁進中  作者: みーたんと忍者タナカーズ
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 ベロベロのお茶の間博士が目を覚ますと十兵衛がおなかの上で丸くなっていた。

「十兵衛、お前は可愛いな」

 お茶の間博士が十兵衛を撫でる。

「おはよう、お茶の間博士」

 十兵衛がおなかの上から飛び降り、猫タワーを駆け上がる。

「昨日はあのまま寝てしまったんだな」

「君が寝たから僕も一緒に寝た」

 十兵衛は猫タワーを行ったり来たり。

「ところで君は僕と交わした契約のことをおぼえているかい」

「ああ、もちろん」

 お茶の間博士はフラフラしながら立ち上がる。

「どんな願い事でも叶えて上げると言った」

「もう夢は叶ったと思うんだけど……………………」

「いや、まだ完全じゃない」

「君は欲張りだな」

「まだ半分も叶ってない」

 気がつくと十兵衛が消えている。

「そうさ、僕はもっともっとちやほやされたいんだ」

 そう言ってお茶の間博士は再び寝てしまった。


 マドカがキャンパスに行くとルリとナツメが休んでいた。

 あれはどういう意味なんだろう。

 マドカは昨日一日考えた。

 普段ヒップホップ系ファンションに身を包んでかっこ良くキメている二人。

ルリもナツメも昨日はヒラヒラの服を着ていた。

 あれは夢だったんだろうか。

 黒猫がバラバラになったあとの記憶はない。

目を覚ますと自宅のベットに寝ていた。

だからあの光景じたいが夢だったのかとさえ思った。

しかし今日はルリもナツメも学校を休んでいる。

「まさかね」とマドカは外を眺めてる。

 あの二人に限ってあり得ない。

 二人は根っからのヒップホッパーだ。

 ダボダボの服をいつも着ている。

 ルリはゴールド、ナツメはシルバー。

 二人で腕を組んで並ぶと威圧感さえ感じる。

 喋る言葉はほとんどリリック。

 日常会話も全てラッパー。

 二人が出会うと始まるバトル。

 飛び交うリリックはいつも秀逸。

 あれはやっぱり夢だったんだろう。

 ぼーっとした頭で授業を聴いていると、目の前に黒い猫。

「十兵衛!」

 思わず立ち上がる。

「どうしたサイキョウ。急に立ち上がって」と先生が言った。

 十兵衛はいない。

「あのおー、早退します」

 そう言って授業を抜け出した。

 なんなの?化け猫に取り憑かれたの?

 ベンチに腰掛け、空を見上げるサイキョウ・マドカ。

 と、木から何かが飛び降りた。

 黒い猫である。

「十兵衛!」

「十兵衛って誰のこと?」

 黒猫が言った。

「十兵衛、生きてたんだ」

 黒猫が足下に纏わり付く。

「だから十兵衛って誰のこと?」

 上目づかいの猫は可愛い。

 マドカは思った。

 この猫は昨日出会った猫ではないのかもしれないと。

 いやいや、言葉を喋る猫なんてそうそういない。

「黒猫さん、あなたの名前を教えてよ」

「僕の名前は八兵衛」

 数が減ってる。

 でもこんな偶然ってある。

 見た目は十兵衛じゃない。

 うっかり名前を間違えたんじゃないよね。

「誰がうっかり八兵衛やねん!」

「大阪弁っぽい」

「誰がエセ関西人やねん」

「だからあなたは猫でしょ」

「誰がエセ関西猫やねん」

「モオーええわ」

 マドカがしめる。

 すると八兵衛が駆け寄りマドカの首元にちょこんと座る。

「やっぱ、あんた、十兵衛でしょ」

「十兵衛って誰だい?」

「エセ関西弁を喋る猫」

「じ誰がエセやねん」

「だから」とマドカは猫のしっぽをつかむ。

 そしてブンブンと振り回すマドカ。

 そして遠くに投げ飛ばす。

 八兵衛はすぐさまマドカの元へ舞い戻る。

 そしてマドカの右肩にちょこんと座る。

「ねえ、マドカ、お願い」

 八兵衛の声。

「ねえ、僕と契約して魔法少女になってよ!」

 マドカは再び八兵衛のしっぽを持ってブンブンと振り回す。

「君にはとんでもない才能を感じるんだ」

 八兵衛が言った。

 マドカは八兵衛を地面に叩きつける。

 そして八兵衛のマシュマロみたいなふわふわの顔を踏みつける。

 八兵衛の真っ黒な顔がつぶれて中から餡子が飛びだした。

 いや、餡子のような何かが飛びだした。

「魔法少女なんかになるもんですか!」

 マドカはさらに足で頭をグリグリ。

「僕の誘いを断るなんて、わけが分からないよ」

 八兵衛の声。

「あんなブリブリの服なんか絶対に着ないわよ!」

 そうやって叫ぶマドカの顔は鬼のようであった。

「君は最強の魔法少女……………………」

 八兵衛の口から内臓がとびだした。

 そして八兵衛は動かなくなった。


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