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24歳④

 戦いの準備は次の日の昼前に完成した。

 そして、日暮れ前に隣村に走ったイノシシとタカが帰って来た。二人とも生命力に満ちた元気な若者なのだが、さすがに20時間近く走っていたのでその顔は疲れ果てている。

「イノシシ、タカ御苦労だった。矢や槍はうまく燃やせたか?」ソラがねぎらうように言う。

「それが・・・ソラ・・・」

 様子がおかしい。小さく震えていて、目の焦点が定まっていない。

「どうした?」疲れているのだろうか?

「人を殺しちまったんだ」

「どういうことだ?」タカが堰を切ったようにしゃべりだした。不安なのだろう。

「オレたちはソラの言うように夜明け前に隣のムラについた。そこで矢と槍を燃やそうとしたんだが、矢も槍もひとつのところにまとまってなかった。それをできるだけまとめて、火をつけようとしていたら、ひとりの男に見つかっちまった」タカはそこで言葉をつまらす。イノシシが説明を続けた。

「幸い見つかったのはひとりだけだったんだが、そいつに声でも出されるとまずいと思って、オレは手に持ってた槍をそいつに・・・」

今度はイノシシが言葉につまった。タカが説明を代わる。

「イノシシの投げたやりはまっすぐに飛んで行って、頭にささった。そいつは声も出さずに倒れてそのまま起きなかった。オレたちは集めた矢や槍にすぐに火をつけて急いで帰ってきたんだ」

「オレは人を殺しちまった。どうしよう」ソラは震えている二人の男を静かに見て言った。

「イノシシ。タカ。大丈夫だ。何も心配はない。お前たちはよくやった。それでいいんだ。おい。みんな来てくれ」ソラがみなを呼び寄せる。

「イノシシとタカが帰って来た。二人の勇者は武器を燃やしただけでなく、敵をすでに何人か殺してきてくれた。みな称えてやってくれ」

「殺した?」

「ああ、敵地で武器を燃やすという危険なことを、勇気を持ってやり遂げてくれただけでなく、何人かに襲われ、命を狙われたところを逆に槍で突き殺してきたんだ」ソラは話を大分誇張して伝える。殺しという行為が正当化されるように、魅力的に映るように。

「すげえ」

「どうだった?」

 ソラの説明に、イノシシが単に怯えたはずみでやってしまった殺しは、勇者の蛮勇と意味を変え、みなの心に火をつけた。そして、その場で決まる。人を殺すことは正義。

「いいか。言っておく、戦いでは敵を殺せ。このムラを踏みにじろうとする卑怯な奴らを殺せ。それはいいことだ。それがみなを、ムラを守るってことだ。みな。勝ちたいか?ムラを守りたいか?だったら相手を殺せ」

 いつの間にか、イノシシとタカの心理は、ソラに認められ、不安から安心へ、そしてさらには自己顕示へと変化していた。ソラが言うように自分たちが勇者であるような気がしていた。もともと縄文時代のムラには人殺しの概念がない。概念がなければ、人を殺してはいけないという道徳的な縛りも論理的な説明もない。ゼロの状態、素直な心に殺しは正義と、今、植えつけた。そして、ソラの口から発せられると殺しという言葉はたまらなく魅力的に聞こえる。ソラのマインドコントロールはいともたやすく成功し、みなを戦場の狂気に堕とした。

「おそらく敵がやってくるとしても日暮れ頃だ。みな、疲れているだろうから見張りを残して休んでいてくれ」ソラはそう言いながら、自分自身武者震いが止まらなくなってきていた。できることなら敵にすぐに来てほしいと思っている。早くこの手で槍を打ち込んでやりたいと思っている。ソラにマインドコントロールされたのはソラ自信なのかもしれない。


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