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ファンファーレ  作者: 菅原諒大
第五章 夢見る少女じゃいられない
60/100

5-1

※この物語はフィクションです。登場する人物、競走馬、団体名、施設名、および競走成績などは全て架空のものであり、実在するものとは一切関係ありませんのでご了承ください。

「それでは勝利ジョッキーインタビューです。カコノローレルで見事『スプリングステークス』を制しました、早乙女(さおとめ) 風花(ふうか)騎手に来て頂いております。おめでとうございます」

「ありがとうございます」

 私はそう言って記者に答える。

「まずは今の率直な気持ちをお聞かせください」

 記者はそう言うと、再び私にマイクを向けた。

「はい」

 私はそう返事をした後、一瞬考えてからそれに答える。

「やっぱり、カコノローレルと一緒に勝つことができたのが一番嬉しいです。それから、こんなにいい馬に私を乗せてくれた馬主さんや馬場(ばば)先生にも改めて感謝したいですし、それと同時にこれはまだまだ通過点なので、次走もしっかり気を引き締めていきたいです」

「改めてレースを振り返って頂きたいのですが、出だしからかなり他の馬との差が開いていたと思います。それについては作戦通りだったのでしょうか」

「そうですね。普段から逃げる子なので、今回も逃げの戦法を取りました」

「一〇〇〇メートルの通過タイムが五七秒四。かなりのハイペースでしたが、道中不安ではありませんでしたか」

「特に不安はなかったです。寧ろローレルの気合が充分あると思って乗っていたので、だったらローレルの邪魔をしないような騎乗に徹しようと心がけていました」

「今回七馬身差での圧勝、そして七十四年ぶりの牝馬による『皐月賞』制覇へ王手をかけました。その辺についてはどのようにお思いでしょうか」

「そうですね。先ほども言いましたけど、ここはまだ通過点でしかないので、私自身がしっかり気を引き締めて、ローレルと一緒に最高のレースをしていきたいです」

「最後に、観客の皆さんに一言お願いします」

 記者のその声に、私は一呼吸置いてから答える。

「これからもカコノローレルとともに頑張って参りますので、応援よろしくお願いします」

「カコノローレルで『スプリングステークス』を制しました、早乙女 風花騎手へのインタビューでした。ありがとうございました」

「ありがとうございました」

 私はそう言って、小さく礼をしてからウイナーズサークルへと向かう。曇り空の隙間から、太陽の光が差し込んでいた。

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