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※この物語はフィクションです。登場する人物、競走馬、団体名、施設名、および競走成績などは全て架空のものであり、実在するものとは一切関係ありませんのでご了承ください。
「それでは勝利ジョッキーインタビューです。カコノローレルで見事『スプリングステークス』を制しました、早乙女 風花騎手に来て頂いております。おめでとうございます」
「ありがとうございます」
私はそう言って記者に答える。
「まずは今の率直な気持ちをお聞かせください」
記者はそう言うと、再び私にマイクを向けた。
「はい」
私はそう返事をした後、一瞬考えてからそれに答える。
「やっぱり、カコノローレルと一緒に勝つことができたのが一番嬉しいです。それから、こんなにいい馬に私を乗せてくれた馬主さんや馬場先生にも改めて感謝したいですし、それと同時にこれはまだまだ通過点なので、次走もしっかり気を引き締めていきたいです」
「改めてレースを振り返って頂きたいのですが、出だしからかなり他の馬との差が開いていたと思います。それについては作戦通りだったのでしょうか」
「そうですね。普段から逃げる子なので、今回も逃げの戦法を取りました」
「一〇〇〇メートルの通過タイムが五七秒四。かなりのハイペースでしたが、道中不安ではありませんでしたか」
「特に不安はなかったです。寧ろローレルの気合が充分あると思って乗っていたので、だったらローレルの邪魔をしないような騎乗に徹しようと心がけていました」
「今回七馬身差での圧勝、そして七十四年ぶりの牝馬による『皐月賞』制覇へ王手をかけました。その辺についてはどのようにお思いでしょうか」
「そうですね。先ほども言いましたけど、ここはまだ通過点でしかないので、私自身がしっかり気を引き締めて、ローレルと一緒に最高のレースをしていきたいです」
「最後に、観客の皆さんに一言お願いします」
記者のその声に、私は一呼吸置いてから答える。
「これからもカコノローレルとともに頑張って参りますので、応援よろしくお願いします」
「カコノローレルで『スプリングステークス』を制しました、早乙女 風花騎手へのインタビューでした。ありがとうございました」
「ありがとうございました」
私はそう言って、小さく礼をしてからウイナーズサークルへと向かう。曇り空の隙間から、太陽の光が差し込んでいた。




