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ファンファーレ  作者: 菅原諒大
第一章 メイクデビュー
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1-13

 そしてゲートが開かれた。

 四頭の二歳馬たちが、それと同時にコースへと飛び出していく。その中の一頭にロッキーがいて、僕はその背中に乗っていた。

 四月二十九日、木曜日、昭和の日。ロッキーはゲート試験を受けていた。どんなに素質のある馬でも、開門と同時に発進できなければ、競走馬としてレースに出走できない。これに合格することで、晴れて競走馬として出走する権利が与えられる。合格率は七、八割と高めだが、どうしても不合格になってしまう馬が一定数はいるものだ。

 試験は一頭につき二回行われる。一回目の発走直後の興奮状態でも、落ち着いて次の発走ができるかどうかを見極めるためだ。そしてロッキーは、二回目の試験も難なく突破した。

 これなら、一発で合格できるだろう。

 ロッキーは、どこまでも人のいうことを聞く子だな、と僕はふとそう思った。あんなに闘争本能丸出しなら、一回目にそのままどこまでも走ってしまうのではないかと思っていたけれど、ちゃんとゲートまで戻ってきた。まだ走り足りなかっただろうけれど、それでも僕の指示を聞いてくれたのは、ロッキーが賢い馬であることの証明だった。

 僕は少しずつロッキーを減速させて、次に発走する馬たちの邪魔にならないように、コースの外側を歩かせる。ゲート付近まで来てみると、次の発走準備が進められていた。

 そのゲートの方向から、突然馬の嘶きが大音量で聞こえてきた。

 周りにいた人も馬も、驚くと同時に何事かと思ったのか、ほとんど同じタイミングでそちらに振り向く。それは僕とロッキーも例外ではない。ただロッキーの場合、他の二歳馬たちと比べて一瞬で冷静になり、ゲートから距離をおいて立ち止まった。

 そうは分かっていながらも、僕は他の馬をなだめる時の癖で、ついロッキーの首を撫でる。

 見ると、一頭の芦毛(あしげ)の馬が背中に人を乗せたまま、後ろ足を蹴り上げて暴れていた。ゲートへの枠入りを怖がっている。何となくだがそう思った。

 騎乗者は鞭の柄を使って尻を軽くたたき、落ち着くように促していた。それが収まったタイミングで、係員がもう一度ゲートへ誘導する。しかしそこでまた暴れだし、結局数人がかりでロープを張り、それを後ろから少しずつ近付けることで、ようやく枠入りが完了した。

 係員が離れる。各馬発走準備が整った。

 そしてゲートが開かれた。

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