初めての戦車戦
更新が遅くなって大変申し訳ありませんでした。
年が明けて1929年1月、制空権が取れるようになったのでクチャに攻撃。南方のインド軍との共同作戦である。ロシアの歩兵戦闘車が配備されており、インド軍は一度撃退されたらしい
「ようやくまともに動けるようになったね」
年が明けて1929年1月、コルラの西側の町「クチャ」を攻撃するため、ミカ達機動第1旅団は日本軍と別れて西進していた。
「兵站の負担を軽くするためにジャとツァンパだけでしのぐこともよくあったし、今回の作戦も成功させたいよね、キャロちゃん」
「しかし我々も贅沢になったものだな。ジャでツァンパをこねて空腹を満たすことに文句を言うようになるとは」
気候が厳しく、貧しかったチベットでは、食べ物の質も量も少なかった。料理もそれを補う方向で発達しており、それ故にバリエーションが少なく、彼女たちが生まれる前は、何日もツァンパでしのぐことだってよくあった。
「まるで見てきたような口ぶりですけど、ツェダさんだって生まれたころにはもう夕食は『一汁一菜』が一般的だったんじゃないです?」
もっとも、日英の支援の下で再独立し、ツァイダム盆地で大量の地下資源が見つかってからは急速に国が豊かになった。食生活にもそれは表れており、英領インドからの農作物が輸入されて一般家庭の食卓にも並ぶようになっている。
「何ならたまに『緑茶』を飲むこともできたが?」
「うわー超ゴーマーン、やっぱり豪族だー!」
チベット高原ではチャノキが育たないため、茶葉は贅沢品だ。ジャは一般的な飲料なのでは?と思われるかもしれないが、あのバター茶はお湯に対する茶葉の使用量が非常に少なく、実に葉:湯=1:100にもなる。緑茶は西蔵バター茶の3倍以上の茶葉を消費するため、チベットでは贅沢な飲み物なのだ。
余談であるが、このチベットに茶葉を空輸するビジネスを始めたのは鈴木商店であり、山階耀子には
「商魂たくましい人だなあ」
と半ばあきれられていたりする。
「ところでミカ、クチャって前一度インド軍が攻撃していたよね?なんで私達も援護することになったんだっけ?」
「……出るんですよ」
キャロがミカに話を振ると、ミカは突如上目遣いをしながらおどろおどろしい口調でそう告げた。
「出るって……まさか……」
「そう……漢族官僚に虐殺されたウイグル人の亡霊が、夜な夜な憾みのはけ口を探してイギリス軍に襲い掛かるんですって……」
「うわーこわーい」
キャロがわざとらしく悲鳴を上げる。それを見ていたツェダはため息をつくと、正しい情報を教えることにした。
「……ロシア軍のT-14突撃車が出現するので、それを我々で撃滅するためだ。火砲で除霊ができたら、僧侶の仕事がなくなるぞ」
「後、ロシア系兵力を新疆から叩き出さないと、降伏が望めないというのもあるよね」
チベット的には、宗教も民族も違い、資源も見つかっていない土地をもらったところで何もうれしくないわけである。こちらの戦線はさっさと片付けて、対中華民国に集中したいのだ。
実はこのタリム盆地も地下資源が豊富で、ちゃんと調べれば石油や鉄鉱石なども出るのだが……
「これだけ負け続けてるのに、今の政権がひっくり返らないのはおかしいなと思ってたんだ」
「今の新疆軍を率いている金樹仁は、内政的にも失策続きで、現地ムスリムの反感を買っているらしい。それでも反乱がおきないのは、ロシア人たちが押さえつけているからだろう、というわけだ」
金樹仁は史実同様に迂闊な政治を行い、民衆の支持を失っている。現に、チベットに占領されたコルラは驚くほど平和であり、中には
「異教徒のあなた方に申し出るのも筋違いかもしれませんが、どうか金樹仁とロシア人どもを討ってください」
「彼らは我々ムスリムの事を何一つ尊重してくれません」
と申し出る者すら出ている始末で、チベットの軍政担当者も困惑していた。
「つまり、ロシア人たちの乗った突車を撃滅すれば、新疆との戦争が終わるんじゃないかということですね。日本人の一番弟子を自称する我々の腕がどれだけ通用するか、試させてもらおうじゃありませんか」
「えーと、そうなってしまう、のか?」
「私たちの知っている範囲だと、そうなってしまいますよ、ツェダさん……」
いつも通り締まらない雰囲気になってしまったが、このくらいの方が彼女たちにとっては緊張しすぎなくていいのかもしれない。まだ幼さの残る少女たちにとって、戦場はあまりにも暴力的に過ぎ、救いも無さ過ぎるのだから……
いよいよ次回から装甲戦闘車両同士の戦いが始まります。チベット戦車の実力は、ロシア歩兵戦闘車にどれだけ通用するのでしょうか……




