膠着
続きがなかなか書けないと思ったら何のことはない、話が動かせなくなっているからだ。
という話になりました。
勢いよくコルラに入場したチベットではあったが、そのあと戦線の動きは停滞するようになる。
「今年のクリスマスまでには戻ってこれるって言った奴誰だよ……」
「チベットでそんなこと言う人誰も居ないと思うよミカ」
今日もどこかで聞いたようなセリフを吐くミカに、キャロリンがツッコミを入れた。
「たしかにそうかも」
「そうかも、というかそうだよ。なんか、ミカの言葉のセンスって、なんか独特だよね。弟くんはミカみたいな言葉遣いしないから、家庭環境じゃないみたいだけど」
キャロリンがいぶかしげな視線をミカに向ける。
「なんでだろう……なんでだろう……」
ミカはしばらく首をひねってうんうん唸っていたが、そのうちめんどくさくなって考えるのをやめた。
「ぜんぜんわからん」
「ミカがわからないと誰もわからないんだけど」
「でもキャロちゃん、今日はずいぶんとこんなどうでもいいことに食いつくね」
妙にそわそわしながらミカがキャロリンに切り返す。
「そりゃあんたさあ……」
キャロの目線の先には、これ見よがしに空を飛び回るロシア機の姿があった。
ポリカルポフ I-5
機体構造:複葉
胴体:鋼管羽布張
翼:楕円翼、ジュラルミンセミモノコック
フラップ:スプリットフラップ
乗員:1
全長:6.8 m
翼幅
上翼:10.0 m
下翼:7.3 m
乾燥重量:900 kg
全備重量:1400 kg
動力:シュベツォフ M-25 過給4ストローク空冷星型単列9気筒OHV2バルブ ×1
離昇出力:850hp
公称出力:700hp
最大速度:360 km/h
航続距離:800 km
実用上昇限度: 7500 m
武装:7.7mmPV-1機銃×4(固定)
「敵機が飛び回ってて何もできないんだから、無駄話ぐらいしかすることがないじゃない」
キャロリンはため息をつく。彼女たちは例によって十年式戦闘車の簡易ブルドーザーに乗り、コルラ郊外で前線飛行場を建設する任務に従事していた。しかし、ロプノールの時と違って相手の足が届くうえ、どうやらウルムチに空軍が増派されたようで頻繁に建設現場を襲撃してくるため、建設が進まないのだった。
「十年式で対空射撃ができたら便利なんだけど」
「ミカはともかく、普通の人に当てられると思う?」
「それもそうか……」
こうした事例から、三年式突撃車をオープントップにし、九二式40mm対空機関砲を積んだ対空戦車が製作されることになるのだが、この戦争には間に合っていない。
「こんなことしてちゃ、戦争もなかなか終わらないよね……」
「ジリ貧、あるいは徐々に不利って奴だよね……」
上空ではロプノール飛行場からスクランブル発進したイギリス空軍のゲームコックが、遁走するロシア空軍のI-5を追いかけている。
「もう四六時中上で飛んでてもらうしかない気がする。油は捨てるほどあるし」
「搭乗員と機材が持たないよキャロちゃん」
インフラの関係で部品供給に不安があるため、整備能力が足りてないわけではないのに稼働率がいまいちなのだ。
「制空権が取れないから私達が出撃できない。私達が出撃できないから、印度軍の攻撃がロシア軍機動歩兵部隊に撃退される。あーもっと足の長い戦闘機が欲しい……」
彼女たちの所望する足の長い戦闘機、八七式戦闘機"長元坊"は、この時期日本本土防空と沿海州戦線での航空戦に使うだけで精いっぱいの数しかない。沿海州戦線が終結し、彼らがチベットに飛来するまで、結局こちらの戦線は膠着状態に陥るのであった……。
とりあえずHoI4やってどうするか考えよう……