土木作業
ほとんど閑話みたいなやつです。
「なんだかなあ……」
砲塔の無い豆戦車から外を見ながらミカがぼやく。
「まあ、野戦築城は誰にでも必要なスキルだからね……?」
豆戦車を操縦しながら、キャロリンが答える。
「そうはいってもさ……」
ミカはため息をつくと、愛車のフロントについているドーザーブレードを見る。
「私達工兵じゃないでしょ」
「まあまあ、結局やってることは戦闘車動かすことなんだから、いつもと同じじゃん」
彼女たちは工兵部隊の頼みで、自車にドーザーブレードをつけて飛行場建設予定地の地ならしをしているのだった。
「駆動系が心配だなあ」
「いつも整備してくれるプティは大丈夫だって言ってたけど……」
十年式戦闘車は早々に正面戦闘には使えなくなることが予見されていたため、トレーラーの牽引や今回彼女たちが行っている排土作業にも使えるように、駆動系は頑丈に作られている。主変速機は4速ドグミッションだが、原乙未生の開発した遊星歯車式操行装置が副変速機として働くため、4×3で12の変速段があることになる。
「悪いなお嬢ちゃんたち!おかげで助かってるぜ!」
工兵の一人がミカたちに声をかけた。
「いえ、お役に立てるなら幸いです」
「工兵は予算不足で重機がなくてな。戦闘車の連中にこうやってよく手伝ってもらってんのよ」
どうやらチベット軍では戦闘車部隊に優先して機材を回すため、日本軍では一部部隊が装備している重機の類を持っていないらしい。その代わり、豆戦車にアタッチメントをつけることでいくつかの重機の代替にできるため、必要に応じて戦車乗り達に応援を求めているようだ。
「ん?ちょっと待って?うちの連隊って、今民国戦線にいる主力から引き抜かれてきたんだよね?」
「そうだな」
「工兵の皆さんは、戦闘車部隊に依頼して、こういう人力だと大変な作業をやってもらっていたんですよね?」
「そうだな」
「……今の民国戦線の工兵の皆さん、どうやってこの手の作業をしてるんですか?」
「……勘のいいガキは好きだぜ」
そういうと工兵は冗談めかしてへらへらと笑った。
「え、まさか、本当に人力で?」
「後は馬とかヤクとかで、だろうな。あるもので何とかするのが俺たち下っ端の仕事だ」
その点俺たちは一緒にこっちにこれたから運がいいぜ、と工兵は自虐的な笑みを浮かべる。
「……そうと決まれば作業に励ませていただきます!ここら一帯は終わりましたので、次はどこを均しましょう!」
「お、助かるねえ。じゃあ次はあのあたりを……」
ミカたちの働きにより、ロプノール飛行場は数日のうちにとりあえず航空機が離発着できる状態になったのであった。
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