第二次アルチン山脈の戦い
1928年9月上旬。補充と再編成を終えたチベット機動第1旅団と日本第12師団は、アルチン山脈沿いに存在する新彊・ロシア軍陣地に攻撃を仕掛けた。
「どう?ミカ、新しい主砲は」
キャロが今回も砲手を務めるミカに問いかける。
「やっぱり重いね。でもその分一発の威力はかなりあるよ」
そうこたえると、ミカは弾薬庫から「砲弾」をぬきとった。
「よっこい、しょっ!」
砲弾をあてがい、薬室に向けて殴りこむように押し込むと、鎖栓が勢いよく降りて装填が完了する。
「次の目標は方位5、距離1000の位置にある機銃陣地だ。見えるか?」
「……見えました。照準ヨシ」
「放て!」
75mm級の発砲音とともに勢い良く榴弾が飛び出し、日本兵たちを制圧していた機銃陣地を轟音とともに吹き飛ばした。
≪やっぱりというか、連隊砲が自分で走ってくれるとすげー楽だな≫
≪おかげで助かった。感謝する≫
日本兵が車外電話からお礼を言ってきた。
≪いえいえこちらこそ≫
ミカはこれに流暢な日本語で応対した後、7kgある75mm榴弾をまた薬室にぶち込んだ。
「まだ制式化されていない砲と言うことで心配だったが、悪くはなさそうだな」
今回彼女たちが乗っているのは十年式戦闘車"改"である。車体の方に変更はないが、チベット陸軍工廠によって改設計された大型砲塔と、だぶつき気味の三八式野砲を改造した八四式車載砲を搭載し、火力と砲塔正面装甲が大幅に強化されたチベット独自のモデルであった。
「毘式機関砲の時よりも、腰を据えて撃ちあうならこっちの方がいいと思います。砲に合わせて屋根が動いてくれるので、急斜面でもちゃんと撃てますし」
この新砲塔は天盤の中央部分が車体前後方向に切り欠かれている。しかし、ここを丁度蓋するように板状のカウンターウェイトが主砲についているため、-20°という大俯角を取ることが可能ながら、オープントップのように手榴弾を投げ入れられることもほぼないという優れた設計がされていた。
「でもさすがに1t増えた分だけ動きはちょっと重たいね。もともと軽やかだから、そんなに気にはならないけど」
「走り回っているうちに足回りが壊れないかは気をつけてみたほうがいいかもしれないな」
いかに戦車と言えど、起伏の激しい山岳地帯で機動力を発揮するのは難しい。そうなるといつもとは逆に「歩兵に随伴して」火力を提供する歩兵直協任務を行うことになるのだが、40mm砲では対陣地攻撃力が不足していた。こうした問題をチベットなりに解決しようとしたのが、この十年式戦闘車改なのである。
≪すまん、1km先くらいにまた敵の機銃陣地がある。潰してもらえないか≫
≪合点承知!ちょっと待ってくださいね≫「ツェダさん、目標指示ください」
「了解した。敵の陣地は……方位355の距離900ぐらいと……」
ツェダの導きに従い、ミカは上機嫌で狙いを定めるのだった。
Q:十年式戦闘車改の砲塔がどうなってるのかわからん
A:World of Tanksで改良砲塔を装備したSPICに乗ってめいっぱい俯角を取ればわかるよ