天司と死神のボス攻略
集合して大きな1匹のスライムとなったジャイアントスライムが跳ねて襲いかかる。
ズドンと大きな音を立てて地面にのしかかるスライムをどうにか避けて態勢を立て直した。ケイは弓を、マイは戦斧でジャイアントスライムの核目掛けて攻撃を仕掛けるが大きすぎて核まで攻撃が当たらない。ケイの放った矢はジャイアントスライムの核に届くまでに溶けてしまった。
「弓もダメ、戦斧もダメって事は他の武器でもダメじゃないか!? 無敵か?」
「……分かんない。本当に無敵かも……マイがスライムを引き付けておくからお兄は何か方法考えて」
跳ねて襲い掛かるジャイアントスライムを相手に避ける手段しかない状況を打破しようとケイは部屋を見渡すがあるのは岩の柱のみ。
「もしかしてこれなら?」
柱を倒してスライムに直撃させれば倒せると考えたケイはジャイアントスライムの飛びかかりを回避しながら柱へと近づく。すると柱に[耐久]と書かれたH Pバーのような物が表示された。
ケイは剣を出して柱に攻撃を繰り出すが、ゲージはほんの少ししか削れない。
「こんなの繰り返してたらいくら時間があっても全然足りないって!」
[天使の加護]発動しました
柱を攻撃し続けるケイの画面にスキル発動の表示がされる。10秒以上ダメージを受けなかったからである。スキル発動後に柱を攻撃するとさっきより大きく耐久値が削れた。しかし耐久値のバーはまだ半分以上ある。
「まだ壊れそうに無いな……でもマイのスキルがあれば……」
マイのスキル〈狂人〉が組み合わされば早く破壊できると考えた。ケイはジャイアントスライムを引き付けてくれているマイに言う。
「マイ! 今度は俺がスライムを引き付ける! こっちに来て柱を攻撃してくれ」
「了解!」
静かに返事をしたマイはジャイアントスライムの突撃を回避するとケイの元へ走って向かう。それに合わせてケイもマイがジャイアントスライムを引き付けていた場所へ走り出す。
2人がすれ違う瞬間、手をパチンと合わせて役割を交代させる。
「スライム! 今度は俺が相手してやるよ。俺の可愛い妹じゃなくて悪かったね」
ジャイアントスライムは挑発に乗ったのか、地面をコロコロと転がりながら真っ直ぐ突撃してくる。こちらに向かってくる軌道を冷静に見極め回避をするとジャイアントスライムは壁に激突した。壁にめり込んだジャイアントスライムは崩れた瓦礫の重みで歪な形になっている。ジャイアントスライムの頭上に表示されていたH Pバーも瓦礫のおかげで多少減っている。
「今のうちに数を増やしてやる!」
待ってましたと言わんばかりのケイは剣を持ち、瓦礫の隙間からはみ出したジャイアントスライムの外側に斬撃を与えて分裂させスライムの数を増やしていく。
〈天司の加護〉発動
〈狂人×5〉発動
柱を攻撃するマイの画面に2つのスキルが発動した表示がなされる。スキルが発動した状態で柱を攻撃すると耐久のゲージはどんどん減っていく。
「……いけそう」
「こっちは大変だけどな!」
マイは黙々と攻撃を続けて耐久値を減らしていくなか、ケイはスライムの分裂を進めるがジャイアントスライムは埋もれていた壁から這いずり出てくる。それに加え、分裂したスライムもケイを襲おうとジリジリ詰め寄る。
ジャイアントスライム程ではないが十分大きいスライムが増えたことに対応できるよう剣から盾に持ち替える。飛びかかるスライムを盾で弾いて追い返すがジャイアントスライムはこちらに襲いかかってくる気配がない。
かと思えば、ジャイアントスライムは柱を壊しているマイの方へともの凄いスピードで這いずっていく。
「マイ! 避けろっ!」
危険を警告するがジャイアントスライムはマイを飲み込む寸前。
「……っ! お兄ごめん」
その一言を残してマイはジャイアントスライムに包み込まれてしまった。そのまま動かなくなったジャイアントスライムの中にマイが捕われているのが確認できる。幸いマイは即死にはならず、ジャイアントスライムの中で拘束されている状態で済んでいた。
しかし数秒後、マイの頭上にH Pバーが表示されると徐々に減少していく。そして動こかないジャイアントスライムのH Pは少しずつ回復していた。
「あのままだとマジで死ぬ!」
ケイはマイを助ける為にすぐさま柱の方へと走る。分裂したスライムが邪魔しに入るが、剣で切り裂き、盾で弾く。
「着いた……耐久は、よし! これなら壊せる! 動くなよスライム」
マイのおかげで柱の耐久は破壊寸前のところまできていた。動いていないジャイアントスライムの核に狙いを定め、柱に最後の一撃を与えた。
パリンと耐久ゲージが消えると柱はゆっくりと崩れ落ち、ジャイアントスライムの核にヒットすると、H Pバーが緑から赤まで一気に減っていき最後には全部消え、ジャイアントスライムは動かなくなった。分裂させたスライムは溶けて消えた。それと共にジャイアントスライムの横に大きな宝箱と光輝く扉が現れた。
「お兄ナイス……死ぬかと思った」
「それはこっちも同じだ。んで? スライムの中にいたご感想は?」
「……ヒンヤリしてて気持ちよかった」
談笑する2人にゲームシステムの音声が流れ込む。
『レベル10になりました。これにより天司のアクション〈天司の翼〉が解放されました』
『レベル10になりました。これにより死神のアクション〈闇移動〉が解放されました』
『エクストラスキル〈イメージクラフト〉を習得しました』
先ほどまでレベル4だった2人のレベルの上がり具合に驚きを見せながらも新しく開放されたアクションとスキルを確認する。
〈天司の翼〉
翼を利用してしばらく空を飛ぶことができる。
取得条件
レベル10にすること。
〈闇移動〉
影に潜って移動することができる。影のない場所では使用不可。
取得条件
レベル10にすること。
〈イメージクラフト〉
想像した武器を出現させ扱うことが出来る。想像出来るものは自身が使用した武器に限る。
取得条件
破壊オブジェクトでボスを倒すこと。
使い勝手の良さそうなアクションとスキルに2人は喜んだ。
「やっと天司っぽくなってきた!」
「うん。でもお兄の〈天司の翼〉ってどうやってやるの? お兄の背中何もない」
「イメージすればいいのか? つばさ……ツバサ……翼」
バサッ!
想像するケイの背中に純白な翼が生えた。翼を軽く振るとケイはふわりと浮かび上がり白い羽がヒラヒラと舞い落ちる。
「おおおおおおっ! 格好良い! これが天司! 見てみろよマイ……ってあれ?」
今さっきまでいたはずのマイがいない。
「……こっち」
真下からマイの声が聞こえる。だが聞こえるのは声だけでマイの姿はどこにも見当たらない。すると影からマイが湧き出てきた。
「うわっ! ビックリさせるなよ……マイのスキルも便利そうだな」
「うん。満足」
表情は変わらないが、マイがとても嬉しそうにしていることがケイには分かった。
「あとは〈イメージクラフト〉かぁ……これは後で確認するか。今確認すべきなのは」
2人は宝箱の方に顔を向ける。宝物の大きさに2人は興奮を押さえながらゆっくりと蓋を開けた。