天司と死神の武器選び
[リーブル森林]
風が木々の間を吹き抜ける。心地良い風を受けながら2人は落ちている木葉は踏みしめながらモンスターがいそうな場所を探して歩く。その道ながら、マイは先程の嘘についてケイに問い掛ける。
「ねぇ、さっき人に何で嘘ついたの?」
司が嘘をつく時は必ず舞菜が関わっていることを知っていた舞菜は聞かずにはいられなかった。
「攻略サイトに書かれてたんだよ。プレイヤー狩りに注意しろってな。このゲームは倒したプレイヤーから経験値やお金を得る事ができるっぽい。下手に雑魚モンスターを倒して回るより効率が良いって訳。だから俺たちが初心者じゃない風の嘘ついた。初心者に優しくないよなぁ」
ケイは嘘の理由を話し、ゲームのシステムに呆れたケイは木に手をついてうなだれる。
「でもあの人達がプレイヤー狩りってどうして分かったの?」
「マイも何となく分かるだろ? 初心者に優しくする奴は何か裏がある! あんな事するのはナンパか動画サイトの実況者くらいだっての」
根拠は全く無いが、なぜか説得力のあるケイに思わず「おぉ」と、拍手してしまうマイ。
「でももうバレてると思うけどな。俺たちの装備してるの初期のものだし」
ケイはメニューから装備欄を開く。
ケイ Lv1
エクストラクラス 〈天司〉
〈装備〉
右手武器1 〈素手〉
左手武器2 〈素手〉
武器3 〈なし〉
武器4 〈なし〉
武器5 〈なし〉
頭 〈なし〉
体 〈冒険者の服〉
足 〈冒険者の靴〉
装飾品 〈なし〉
〈なし〉
〈なし〉
スキル
「……なんか装備できる武器枠の数多くない?」
その後、森を歩いていると開けた場所へ出て来た2人。武器を振り回せるスペースも十分あると考えたケイとマイは持っている武器を装備しては振り回すを繰り返して自分にあった武器を模索し始めた。
〜30分後〜
「大分馴染んできたな。さてと……妹よ! どの武器を使いたい? お兄さんが可愛い妹の為に武器を合わせてあげようじゃないか!」
「戦斧……よっ、と」
ケイの言葉に対して冷静に答えるマイは装備メニューから〈銅の戦斧〉をセットすると、大きな戦斧がマイの手に出現する。
「ずいぶんゴツい武器を選んだな……」
「クラスが死神だから鎌使いたかったけど無かったから、手に入るまでの代用……お兄は?」
戦斧をブンブン振り回しながらゆっくりとケイに近づいて行くマイ。
「とりあえず今は剣、杖、槍、弓、盾でやろうと思ってる。後、怖いからソレ止めてくれない?」
「やだ……あれ? そんなに装備できるの?」
マイは片手で戦斧を振り続け、もう片方の手で装備メニューを開く。
マイ Lv1
エクストラクラス 〈死神〉
〈装備〉
右手武器1 〈銅の戦斧〉
左手武器2 〈なし〉
頭 〈なし〉
体 〈冒険者の服〉
足 〈冒険者の靴〉
装飾品 〈なし〉
〈なし〉
〈なし〉
スキル
エクストラスキル 〈死神の力〉
確認してみるが、装備できる数は最大2つまで。普通はそういうもののはず。マイは戦斧をピタリと止める。
「天司のおかげ?」
「その通り。さすが我が妹」
マイの指摘にケイは笑みを浮かべながらメニューを開いてマイに見せる。
エクストラスキル 〈天司の理〉
通常2つまでしか装備できない武器が5つまで装備する事ができる。武器を切り替えて戦うほど火力が上がる。
説明文を読んだマイは「ズルい」と言って、メニューをケイに返す。メニューを閉じたケイは実際に武器を変える方法を実践して見せる。
「この木があるだろ? これを敵と見立てて……遠距離からはこう!」
「…………」
ケイは手に現れた弓を掴むと、木を標的に矢を放つ。放たれた弓が木の幹に見事命中すると、同時に木に向かって走り出した。
「遠距離の次は中距離戦! コイツを……投げる!」
「……おぉ」
そう言うと、ケイの手には弓が消えて今度は槍が現れる。それを槍投げと同じように木に目掛けて投げつけて命中させた。
「最後は接近戦! これで……終わりだ!」
「……おぉ! あっ」
木を斬れる間合いまで近づいたケイは槍を消し、剣を出して木を斬ろうとする。が、出てきたのは剣ではなく盾。
ケイは見事な空振りをしてしまう。
「と、まぁ意識したら変える事が出来るんだけど……結構難しいんだよなぁ。モンスターが多かったり素早かったりしたら尚更」
天司のスキルの1つである〈天司の理〉。武器を切り替えて戦う事が出来る天司がトリッキーなクラスの1つであることを物語っていた。一見簡単そうに見えるが、状況の瞬時な判断、切り替え時の武器形状の想像を戦闘中は常に考えなければならない。天司で火力を出すには武器を切り替える事が必須となる。手軽に火力を出すのなら他のクラスにした方が楽であり楽しめる。気軽にプレイする為に天司はあまりに面倒なクラスなのである。
だが、ケイはその面倒さが面白いと考えた。仮に火力が出せなくてもマイがいるとケイは考えた。
「だから俺が役に立たない時は頼むな」
「……お兄がやられなければ何でも良い」
そう呟くマイに「任せとけ」と言い、ケイは笑顔を見せた。
「ところで、マイは何かスキルとか無いのか?」
「……ある」
そう言ってマイはケイが斬る事ができなかった木に近づき、そして戦斧を構える。