天司と死神の遭遇
今回からゲーム内なので、司と舞菜の名前をケイ、マイとして書いていきます。
噴水を中心にした街の広場にポツンと立っていた。辺りには仲良く談笑しているプレイヤー、非常に頑丈そうな装備で何処かに向かっている人。風呂敷を広げて露店を開いている者など自由にプレイしているのが伺える。
2人は互いに顔を見合わせ、身体に異変がないことを確認すると、とりあえず近場に設置されているベンチに腰掛ける。
「思わずベンチに腰かけたけど、これからどうしましょうか……マイさん?」
「武器装備したい」
ケイの問いに全く興味を示してないマイはメニューを開いて装備をいじり始める。ケイもマイのやり方を真似してメニューを開いて同様の設定を始める。
「武器は〈銅の〇〇〉で一通りあるな。この中から好きな武器を装備しろってことか……」
マイはコクリと頷き、武器を一通り見ては装備しては外し、装備しては外しを繰り返す。その度にマイの太腿辺りに武器が現れては砂粒が風に飛ばされるかのように消える。
「見てても分かんないし、試し斬りに行ってみようぜ」
「分かった」
2人がベンチから立ち上がって広場の出口に向かおうとするが、初心者の2人には出口の場所が分からない。
「とりあえずあの人に聞いてみるか」
ケイは露天を開きながら謎の液体入りのボトルを持って調合しているプレイヤーの所へ向かう。
「あのー、ちょっと良いですか?」
露天商に声を掛けるが、ブツブツと独り言を呟いていてケイ達に気づいている様子はない。
「あのー……もしもし!」
「はいっ! あれ……わわっ!」
露天商はケイの突然の声掛けに驚いてボトルを空中に手放して落ちる寸前、間一髪の所でケイがボトルをキャッチして露天商に手渡す。
「あ、ありがとうございます……危なかったぁ。い、いらっしゃいませ! な、な、何かお探しでしょうか!? このマヒポーションなんてどうですか? 私の最高傑作なんですが!」
「いや、買い物にきた訳じゃなくて、広場の出口に行きたいんだけど……どっち行けばいいですか?」
客では無いと理解した露天商はうなだれながら出口の方に指を差す。
「あぁ……初心者さんでしたか。勝手に舞い上がってすみません。出口はここの道を真っ直ぐ行った所にありますよ……あっ……でも……」
露天商は出口の他に何かを伝えようとしてくれているが口を噤んでしまう。
「ここの道を真っ直ぐですね。ありがとうございます」
会釈をして歩き出すケイ。マイは露天商が勧めてくれたマヒポーションを指差しながら露天商と顔を合わせる。
「今度来る時はソレ買う。道教えてくれてありがとう」
そう呟いてマイはケイの後を追いかける。
「……気をつけてくださいね」
露天商はどことなく楽しげな2人の姿を見送ると、しばらく放置されていたボトルをつかみ上げ、再び調合作業へと戻った。
「お兄、さっきの人何か伝えようとしてた」
「そうか? 商品買わなかったから文句の一つでも言ってやろうとしてたのかもな」
「違うと思う」
ケイの勘違いをマイはすぐさま否定する。2人が歩き続けていると、出口はコチラという看板が前方に立っているのが見える。それと同時に看板の側に数人のプレイヤーが2人をチラチラ見て何か話している。
「マイ、側にいろ」
ケイの小さな声に応えるようにマイは無言でケイの側に寄って歩き続ける。2人が看板の前を通り過ぎようとした時、盗賊の風貌をした男が声をかけて来る。
「お兄さんお嬢さん何処に行くの?」
「2人で高ランクのモンスター討伐に行く所です。所持金が結構カツカツで。装備も新調しようと思ってるんだ。そこ、通してもらってもいいかな?」
(お兄って昔から嘘吐くの上手い)
マイは無表情ではあるが、ケイが瞬時に嘘をでっち上げて流暢に話している姿に感心していた。男はケイのデタラメな嘘を信じたのか、道を空けて2人を通す。
「どうぞどうぞ。そこら辺のモンスター退治だったら俺たちも手伝おうと思ったんだけど、高ランクは流石に厳しいからなぁ。お2人さん頑張って!」
「どうも」と、言って2人は足早に出口に向かい森へと歩いて行く。男は歩いて離れて行く2人の背中見つめながらニヤリと笑う。
「帰り道にお気をつけて」
マイの名前がマナになっていたので修正しました。