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天司と死神のイベント開始

「予想はしてたけど、こんなに大勢集まるのか」


 イベント当日。W W O初の公式イベントでもある為、広場には大勢のプレイヤーで賑わっていた。参加者達は自慢なのか最後の編集なのか判らないが、武器を出現させてあまり意味の無さそうな準備運動をしている。


「……何あれ」


「俺は強いぞアピールだろ。武器出してる時点で対策してくれって言ってる様なもんだろ……待てよ、あっ……武器! マイ、ちょっとここで待っててくれ! すぐ買ってすぐ戻る!」

 自分の装備している武器が剣以外初期武器のことを思い出したケイはマイを残して近くの武器屋へと走って行った。1人残されたマイは近くのベンチに腰掛けると俯いて静かに待つ。


「……あ、私も忘れてた」

 スライムを倒した時にドロップした指輪を持っていることを思い出して装備メニューを開いて確認する。


 [スライムリング]

 スライムから低確率で出現する指輪。

 敵に攻撃を当てるたびにH Pを1%回復する。〈ライフドレイン〉使用中は回復上限が3%に上がる。


 便利な指輪だと素直に思ったマイは装備を押した。すると左手の薬指に[スライムリング]がはめられる。指輪の輝きに思わず見惚れてしまうと同時に1人の虚しさにマイは塞ぎ込んだ。広場は賑わってうるさいくらいなのにマイにはとても静かで、時が止められたような感覚になる。


「……お兄早く戻ってこないかな……お兄」


「……さん。マ、マイさん! 良かったぁ……大丈夫ですか?」


「……メロさん? どうしたの?」

 顔を上げた先には心配そうに見つめるメロの姿があった。


「偶然見つけたらマイさん1人だったので……ケイさんは?」


「……買い物に行ってるから待ってる」


「そ、そうでしたか! 余計なお世話しちゃってすみません……私行きますね……」


「待って……お兄が戻ってくるまで……一緒にいて」

 何かを感じ取ったメロは頷いてマイの隣に座ってしばらく話をする。10分位話をした頃にケイは息を荒げながら戻ってきた。


「……お兄、遅い」


「本当に悪かった……! 店主に捕まって中々抜け出せなくてな……メロさんもごめん! マイに付き合ってもらって」


「だ、大丈夫ですよ! 時間ならありましたし、気にしないでください!」

 謝罪と感謝の意を込めて深くお辞儀をすると、マイも同じくお辞儀をして感謝を示した。メロは慌てて立ち上がると2人に顔を上げるよう促す。と、その時


「これより第一回公式イベント! バトルロイヤルを開催します!」


 広場全体にアナウンスが響き渡る。それを合図に参加する者もしない者も全員が叫び上がって大盛り上がりになった。


「じゃ、じゃあ私も知り合いの所へ戻りますね!」


「メロさん……ありがとう」

 戻ろうとするメロにマイは恥ずかしそうに改めてお礼を言う。


「マ、マイちゃん! お互い、頑張りましょうね!」

 メロは両手で拳を作っての健闘を讃えてトコトコと早足で戻って行った。その後、ケイは土下座とデザートをあげる約束をして何とか許してもらうことに成功した。5分ほど経過した頃、広場中央の噴水が大きく噴き出すと水のスクリーンが表示され、改めてアナウンスが流れる。


「では改めてルールの説明をします。制限時間は2時間、プレイヤー同士で戦うP V Pをチーム戦で行っていただきます! ステージはイベント限定の専用マップ! 倒したプレイヤーの数と倒された回数で算出し、順位を決めます。なお、ソロプレイヤーと2人で組むディオプレイヤーにも公平な戦いをしてもらえる様にボーナスポイントを強化バフとして付与しておきますので頑張ってください! そして上位5位に入ったプレイヤーには称号と限定アイテムが贈られます! 大会の様子はこのスクリーンで中継されるので観戦される方々も楽しんでください! それでは皆さんの健闘を祈ります!」


 アナウンスが終わると広場にいた全員が歓声で盛り上がる中、2人は噴水のスクリーンに興奮していた。

「何あのスクリーンめちゃくちゃかっこいいんだが! 一家に一台欲しいくらい欲しい!」


「……家の中水浸しになるよ……でもお兄の言うことも分かる……」


 そのままスクリーンを注視していると転移のカウントダウンが表示される。数字が0になると参加者は順番ずつ光に包まれていく。そして2人も光に包まれて転移した。





「兄、お兄!」

 マイの言葉に目を開くケイはゆっくりと目を開ける。

 あたりを見渡してみるとさっきいた広場と同じ様に見えるが、やけに薄暗く中央の噴水はボロボロに壊れ、地面は所々ひび割れている。


「広場の廃れたバージョンって感じだな」


「うん。誰か見つけに歩いてみる?」


「その必要はないっぽい。ほら、お客様」

 ケイの指差す方にはしっかり3人組のプレイヤーがこちらに向かって走って詰めてきた。その内の1人がケイの方へジャンプして空中から剣を振り下ろしてきた。


「2人で参加なんて余裕だな! 貰った!」

 回避することも可能だが、〈蒼剣〉を持ったケイは剣をスムーズに横にいなして相手の胴体に素早く一線を与える。


 武器スキル〈迅剣〉発動

 一線を与えられたプレイヤーは光の粒子となって消えた。


「悪いけど、こっちは量より質なんでね」

 簡単に仲間がやられてしまった事により先ほどの勢いがなくなる2人のプレイヤーは剣を構えたままケイを睨む。


「あっ、俺ばっかり見てるとやられちゃうよ」

 ケイの言っていることが理解できないプレイヤー2人だが、1人が背後から突然現れたマイに斬られて倒れる。


「な、なんで後ろに……」


 〈影移動〉発動

「お兄。余計なこと言わない」


「すみません。数が逆転したけど勝負だから許してね」

 そう言ってマイは残りの1人を切り裂いて倒すと、ケイの場所へと戻って鎌を収める。開始1分で1チームを倒したケイとマイは早速広場のスクリーンに写される。


 おい、なんだよあの2人……一瞬で3人倒しやがったぞ!


 上手い奴がサブ垢でやってんじゃねえのか?


 あの女の子可愛いー!


 2人は注目され始めてる事に気付いていなかった。


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