天司と死神の初VR
私が楽しんで書くために多少のご都合主義が入る可能性があるのでご注意ください。ゲームの世界で色々な事ができたら良いな。という妄想しつつ書いているので、それでも気にしないという方に見ていただけると幸いです。
「準備いいか?」
「……うん」
兄の一言に妹は小声で返事を返す。
宅配便から届いた箱に手をかけようとする兄のツカサ。妹の舞菜は司が箱を開けている様を固唾を飲んで見守っている。兄が梱包を外して中身を取り出すと、そこに現れたのは2人が待ち望んでいた物だった。
「「おぉぉぉ!!」」
兄妹は初めて宝石を見たように瞳を輝かせるが、2人にとってそれは宝石以上の価値ある物。それはゲームである。
ゲーム好きな2人の兄妹はVRMMOジャンルの最新ゲームソフト、Wonder World Onlineを始めようと、ネットで注文をしていたのがやっと届いたのだ。
VRゲームは一般的な娯楽物として親しまれており、殆どの人が持っていても不思議じゃない程に普及している。
VRゲームの存在が当たり前になる以前から、そう言ったハードがあることは知っていた2人だったが、発売当初の不具合が発覚し、手が出しづらかったこともありVRゲームという新たなジャンルに踏み出せずにいた。
発売からしばらくした頃、不具合が解消されて人気が出てきたVRジャンルをやろうと2人は期待に胸を膨らませながら商品をポチッたのである。
「お兄、早くやりたい」
物静かな舞菜は頭に装着するギアを手に抱えたままベッドに座り、浮いた足をパタパタと動かして兄を急かす。司は無言でハードの準備を行う。
「……まっ、こんなもんだろ」
準備を終えた司は、伸びをしつつ小さな達成感を得る。
その様子から準備が完了したことを察したマナは即座にベッドへ寝そべり、ギアを頭に装着する。その行動の速さは司に小言を挟ませる暇さえ与えてくれない。
それに加え、ベッドを妹に占領されてしまった司に残された場所は床しか見当たる場所がない。
「あのー。舞菜さん? もう少し寄ってくれたら兄ちゃんが寝そべる位の間ができるから……寄って?」
ギアを装着しているおかげで表情が全く判らない舞菜に対し、兄は無駄な事だと理解してはいるものの、一応聞いてみる。
「……やだ」
無感情に放たれた一言を予測できていた司は「デスヨネ」と、返事を返して側の床に寝そべってギアを装着して電源を入れる。
「「セッション」」
2人は設定を開始した。