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崔浩先生の「元ネタとしての『詩経』」講座  作者: ヘツポツ斎
国風 邶風

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匏有苦葉(節度持った婚姻の勧め/姦淫批判)

匏有苦葉《ほうゆうくよう》 引用7件

婚活 恋愛 淫行批判



匏有苦葉《ほうゆうくよう》 濟有深涉《さいゆうしんしょう》

深則厲《しんそくれい》 淺則揭《せんそくけい》

 フクベにつくのは苦い葉ばかり。

 その川は渡ろうにも、深い。

 深ければ腰までつかり、渡ろう。

 浅ければ裾をちょいとつまめばよい。


有瀰濟盈《ゆうびせいえい》 有鷕雉鳴《ゆうようちめい》

濟盈不濡軌《せいえいふだき》 雉鳴求其牡《ちめいきゅうきぼ》

 やがて渡し場付近の水が満ち満ちる。

 ケンケンとメスのキジが鳴く。

 車を進めてみれば、川は深く、

 車軸すら濡らさずにもおれようか。

 メスキジはオスキジを求め、

 鳴いている。


雝雝鳴鴈《ようようめいがん》 旭日始旦《きょくじつしたん》

士如歸妻《しじょきさい》 迨冰未泮《たいひょうみはん》

 空飛ぶ雁は穏やかに鳴き、

 真っ赤な朝日が顔を出す。

 若者よ、妻をめとるならば、

 氷の解けきらぬ冬の間に。


招招舟子《しょうしょうしゅうし》 人涉卬否《じんしょうごうひ》

人涉卬否《じんしょうごうひ》 卬須我友《ごうすがゆう》

 渡し場の舟子が私を呼んでいる。

 人々が船に乗る中、私は留まる。

 どうして渡ろうとしないのか。

 あの人を待ちたいからなのだ。




〇国風 邶風 匏有苦葉

フクベの葉は食用にはならず、その葉はもっぱら浮きとして、渡河に際して用いられるのだという。渡河に際してはしかるべき振る舞いがあるわけであるが、ここで渡河は「婚姻」にもかかる。

渡河のしかるべき時期は川の水量が少なくなる冬、農閑期。そして婚姻も農閑期になされるべきもの。しかし歌い手の前を流れる川は、春先を迎え、さらに水量を増す。婚姻の時期を外す、つまり婚姻の礼に則らぬ振る舞いをすれば、貴族が乗るような車でさえ水びだしになってしまうではないか、という。

その川のほとりではメスのキジがオスのキジを求め、鳴く。普通はオスのキジが鳴くわけであり、逆である。こちらもやはり婚姻の礼を踏まえぬことが表象される。

婚姻の礼を守りましょう。さすればよき鳥である雁がそなたの行く先を祝うかのように鳴きましょう。朝日もまたその姿を現し、そなたの行く先を照らすのでしょう。「だから、若者よ。農閑期に妻をめとるべきだ、と言っているのです」。

そして時期は再び農繁期に移る。満ち満ちた川に、渡し船を浮かばせる舟子。「渡らんのかね?」と聞かれた歌い手は、その申し出を断る。なぜならば、農閑期まで「渡るのを待つ」のが、正しき振る舞いだからである。

なんだこの詩は。がっつり解説を読み込まぬとさっぱり意味が分からんぞ。



〇儒家センセー のたまわく

「刺衛宣公也。公與夫人並為淫亂。」

宣公ダメ絶対! というか、やたらめったらな淫行を批判する歌である! 詩の途中にある「濟盈不濡軌」句は「川が満ち満ちているのにそこを渡る車の車軸が濡れぬなどといったことがあり得ようか」と解し、不合理極まりないことを意味する! 婚姻の礼に則るのがマナーであるに、きょうびの若者はまるでその通例に従わぬ! まこと嘆かわしきことである!



■時と場合による

「深ければ気合いで泳ぎ切れ、浅ければ袖を掲げて渡れ」。この決まり文句は「状況に応じた振る舞いがあるだろう」的に用いられるそうである。孔子が衛人に「この御仁は自分のやり方を押し通そうとしかされてお乱用だ、それではいかんよ」とこの詩を引いて諫められたところ、孔子が「わかっとるわいそんなこと!」と大人げなく切れておるのが大変に趣深い。


・論語 憲問42

子擊磬於衞。有荷蕢者而過孔氏之門者,曰:「有心哉!擊磬乎!」既而曰:「鄙哉,硜硜乎!莫己知也,斯已而已矣!『深則厲,淺則揭。』」子曰:「果哉!末之難矣!」

・後漢書59 張衡

深厲淺揭,隨時為義,曾何貪於支離,而習其孤技邪?



■北は寒い

・史記117 司馬相如

・漢書57 司馬相如

 其北則盛夏含凍裂地,涉冰揭河

子虚賦という、凄まじく長大な賦の一節に「淺則」になぞらえて用いられておる表現がある。斉のあたりの風俗を歌っておるのか、楚の風俗を歌っておるのか、頭がモーレツにフットーするのでいかんとも判じきれぬのだが、「北の地では夏でも川が凍る」と言い出すのであれば、斉や楚どころではなく、オルドス以北の話をしておるのやもしれぬな。



■遙か遠く鳴くカリ

晋書49 嵆康

雍雍鳴雁,厲翼北游,順時而動,得意忘憂。

嵆康が讒言を受け処刑の獄につながれていたときにものしたという「幽憤詩」の一節である。死を待つだけの場に座しておりながらにして、聞こえてくるカリの鳴き声。



■あたしゃどうすべきかね

後漢書59 張衡

雖有犀舟勁檝,猶人涉卬否,有須者也。

後漢の大文人張衡が己の進退をどのようにすべきかと考える際にものした作品「王漢」中に見える表現である。全編がそのようなノリであるため、「立派な櫂と頑丈な船があってもなお渡ろうとしないのは、人を求めるゆえである」ことには……いかなる意味合いを求めようか?



■婚活夢見たんだよお前

晋書95 索紞

冰上為陽,冰下為陰,陰陽事也。士如歸妻,迨冰未泮,婚姻事也。

索紞は占い師。同時代人の令狐策が氷の上で人と話したという夢を見ると「氷の上は陽、氷の下は陰。それが未だ溶けていないのならば、婚姻に関する夢のことだ」と説明した。



毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E4%BA%8C#%E3%80%8A%E5%8C%8F%E6%9C%89%E8%8B%A6%E8%91%89%E3%80%8B

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