七話
「リズさーん。アンシーさーん、どこですかー?」
家中を手当たり次第探し回っても二人とも気配すら感じない。
二人してどこかに出掛けたのだろうか?
「うがー、もうさっきから頭が痛い!どこいったのよ全く」
私は着替えを済ませ、頭痛を少しでも治める為、外の風をあたりに家を出た。
玄関に出ると一枚の置き手紙が、文鎮代わりの石に挟まって置かれていた。
「なんだろうこれ」
ーーーーーーーーー
ミユリさんへ
リズさんと一緒に森に採取に行っています。
珍しい鉱石が採れる洞窟を知っているとリズさんに伝えたところ、興味を持たれた為、少し遅くなるかもしれません。
洞窟の位置を標した地図を置いていきますのでミユリさんも興味があるならどうぞ来てください。
アンシー
ーーーーーーーーー
「アンシーさんと一緒に採取なんてリズさんなんて羨ましけしからん!これは注意せずにはいられん!」
女の子二人でお出かけとか何も起こらない筈もない。早くしなければ私のリズさんがアンシーさんの手で大人の階段に登ってしまう!!
って何を言ってるんだ私は。
リズさんの事だし、大丈夫だと思うけど、一人は心寂しいし、とりあえず洞窟の場所まで行こうかな。
「待っててね!リズさん!!今愛しのミユリが迎えに行くからね!」
ーーーーーーーーーーー
森に洞窟までの道標の為の印がついた木が何本か点在していた為、洞窟は比較的楽に発見することができた。
おそらくアンシーさんがつけた物なのだろう。
森の景色が全然様変わりしない為目印がなければすぐに迷っていただろう。
洞窟の入り口は人が二人くらい入れそうな小さな穴だ。
「てか、中真っ暗じゃん!うへー灯り持ってくるの忘れたー」
どうしようと思ったのも束の間、よく考えてみれば私自身が灯りとなっている事実に気がつく。
そうだった、私は今豆電球女。恐るものは無い!……神からもらった力を豆電球って…アリサさんがみてたら絶対顔にシワ作ってるよこれ。
中に入ってみると私に纏う光が薄らと辺りを照らしてくれる。
これなら問題なく歩けそうだ。
「リズさーん!アンシーさーん!きましたよー!」
私はゆっくりと歩を進めながら、洞窟に声を響かせる。
洞窟の中はしばらく進むとかなり広がっていき、所々岩壁には幻想的に輝く鉱石が点在していた。
「うわー、凄い綺麗。あれ採ったら高く売れそー」
にしても、どこまで続いているんだろう、この洞窟。全然出口らしき光も見えないしかなり奥深くまで続いていることが分かる。
「もーあの二人どこまで潜ったのよー」
ぐがーと私が頭を掻き毟ると、奥から足音がゆっくりとこちらに近づいているのが聞こえた。
「リズさん!!」
私がその足音に向かって弾んだ声をだして叫ぶと、私の予想を打ち砕く様に別の声が応答する。
それも、とても不快な声で。
「悪いが私は君のお友達じゃないんだ、ごめんね」
ねっとりとした、低い声。
そしてそれは、疑いようもなく『男』の声だった。
足音の主は私のすぐ近くまで来て、仰々しく一礼をする。
芝居めいた礼の後、顔を上げた瞬間、私は吐き気を催した。
なぜなら、その人物はどう見ても男の人間だったからだ。
なんで、なんでなんでなんでなんで。私は確かに女だけの世界に来たはずなのに。どうして、どうして男が…嫌、嫌、私を見ないで……
謎の男の視線に身体が震える。それは恐怖から来る嫌悪。
男は続けて口に出す。
「私の名前はジル・ドレイク。まぁよろしく頼むよ、お嬢さん」