六話
「いただきまーす!!」
アンシーさんの家は思いのほか近く、街を取り囲む森の中に点在していた。
家は小さな民家でアンシーさん曰く、街から許可が下りれば建てる事が許されているらしい。外壁の外に住む物好きはそうそういるものではないらしく、アンシーさんの家以外に民家は見つからなかった。
「こちらの料理に使われている野菜類は森で栽培している新鮮な食材です。お口に合えばよろしいのですが」
「おいひいです!めちゃくちゃ!この飲み物も甘くてサイコー!」
「あんたねぇ……食べ盛りなのは分かるけどもう少し慎み深く食べなさいよ」
「リズさんうーるーさーい。……えい!!」
とスープを掬ったカトラリーをリズさんの口元にお見舞いする。
「うぼ!!!あついじゃらい!なにしゅんのろ!!」
「えへへーいたずらー」
「モグモグ……はぁー。本当くだらないんだから。でもほんと、いい味してるわね」
そう言い放ち、ふんっと顔を横に振る。ツンデレの見本を見せられた様でかなり萌える。中身は気難しい人だけど、こうしてじっくり眺めてるとやっぱりかわいいなぁリズさんは。
「リズさんってかわいいなぁ…」
と本音が口からボロボロと流れる。私の口にはチャックというものが搭載していないらしい。
「はいはい……可愛い可愛い。私は可愛いですよ」
と、リズさんは気怠げに相槌を打つ。私はそれに反応し、若干うざいテンションで絡んでいく。
「もーリズさんってばー自意識過剰ー。でもそんなところが可愛くて…す、き」
「……ねえ、アンシーあんたこの料理の中に何を混ぜたの?この馬鹿、通常時の3倍くらいうざいんだけど」
「あら?おかしいですね。お酒は少量しか使ってありませんし、殆どアルコールは抜けているはずなんですが…」
「ふへ?」
なんの話をしているんだろう。私はいつもと普通、至ってノーマル。お酒は二十歳から。私は15歳の天下の女子高生!…だった。
「あ、ミユリさん、水と間違えてお酒飲んでますね、いつのまに。ジュースと間違えたのでしょうか」
「このリンゴジュースおいちいー」
「聞くまでもないみたいね。全く世話が焼ける」
「よかったら泊まってもらってもいいのよ?ミユリさんとはもう少し力についてお話をしたいですし」
「そうね……じゃあお言葉に甘ようかな」
「ふふ、じゃあミユリさんこっちにベッドがあるから行きましょう」
「うえーい!ピカピカピカピカ!私はれんきゅう!まめれんきゅう!」
アンシーさんが私の腰に手を回し、立ち上がらせてくれる。
うへへ美人さんに介護されてるぅわたしぃ。うれしぃー!
その姿をリズさんは何も言わずじっと見ていた。いつものようにだらしない顔をしている私を呆れているのかと思ったが、なぜかその顔は真剣に思えた。
「………」
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そして、私が目が覚めた時、家の中はもぬけの殻になっており、リズさんも消えていた。
……頭……痛い