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前提が間違ったラブコメ  作者: rice in tonjiru
第一章
10/13

真実

放課後の教室。教室に残り談笑していた者も、今さっき帰っていった。


いま教室内にいるのはたったの三人。


『だから言っただろ、ケンジ。俺の言う通りにすれば間違いないって。』


『あ、あぁ、、すまねぇ。』


『この前はお前が任せろと言ったから任せたが、失敗しやがって。結構な上玉だったぞ。』


一人の少年が舌打ちする。


『、、悪い。』


『苛つくとすぐ周りが見えなくなるのが、お前の悪い癖だ。まぁ、今回の“演技“は悪く無かったな。腕っぷしだけだと思っていたが、そこは見直した。』


『あの女がチョロかっただけじゃねぇの?』


今まで閉口していたもう一人が口を挟む。


『いや、あの女は見た目に反して警戒心がかなり強い。元から俺に気が合ったが、それだけじゃ足りなかった。“機会“を作って完全に心を掌握する必要があった。』


『でも、まさか本当に向こうから告ってくるとは思わなかったぜ。さっすが、ナオヤだな。』


『ふふっ、あぁ、、あとは、仕上げだ。』






♦︎

家に帰るなり、私はそのままベッドに飛


び込んみ、枕を抱きしめた。


今日学校で吉野くんと遊ぶ約束をしてしまった。


やばい、やばい!どうしよう!


浮かれた私は、その後の授業に集中できる筈もなく、ずっとそのことを考え続けて今に至る。


少し落ち着いたところで、私は吉野くんとの約束を思い出す。


今日の夜(吉野くんは委員会に所属しているらしく、夜なのだが)、私は吉野くんとデートする。


あの日、私が吉野くんに告白し、告白された日以来、特に変わらなかった関係に終止符が打たれる。


服装はどうしようかとか、会話繋がるかな?とか色々考えることがあった。


とりあえずデートは夜なので、それまでに出来ることは済ませておきたい。


吉野くんのことを考えながらも、僅かながらの思考で覚えていた数学の課題を終わらせようと、鞄に手を突っ込んでみたところ、課題ノートは見当たらなくて、、。


あ、しまった!


誤ってノートを学校に置き忘れたことを思い出し、私は急ぎ学校へと引き返したのだった。






♦︎

校庭は既に部活動で賑わっている。それに反して校舎内は閑散としていた。


誰もいない廊下を進み、自分の教室まで行くと、声が、した。


吉野くんの声だった。


彼は委員会の筈じゃ、、


他にも人がいるようだった。


そっと顔を出し、教室の中を覗き見る。


窓際付近に集まった、三人の影。


一人は知らない。


一人は吉野くん。


そして、もう一人、、米沢 健司。


なんで、彼と吉野くんが?


盗み聞きしているみたいになっていてとても罪悪感があった。


今から教室に入っていって、吉野くんに理由を聞けばすぐにわかる。


だけど、、気になってしまった。


教室の外から見た彼は、いつもの、あの優しげな笑みを浮かべた彼とは、何かが違っていた。


『あの女がチョロかっただけじゃねぇの?』


一人の男の声。


『いや、あの女は見た目に反して警戒心がかなり強い。元から俺に気が合ったが、それだけじゃ足りなかった。“機会“を作って完全に心を掌握する必要があった。』


吉野くんの、声。


『でも、まさか本当に向こうから告ってくるとは思わなかったぜ。さっすが、ナオヤだな。』


米沢の声。


名前は出ていない。だけど、誰のことなのかぐらいはわかる?


気付いたら、涙が私の頬を伝っていた。


わからない、わからない。


もう何も。


これが、現実だということぐらいしか。


彼の笑顔(善意)偽物(偽善)だった。


完璧な人間なんて、いない。


どこかに劣った、醜い部分が隠れているんだって。


知っていたけど、飲み込めない。


私は声を殺して泣いた。


泣いて、泣いて、涙が渇くまで泣いた。


そして、私はそっと立ち上がり、家に戻ったのだった。






♦︎

吉野 和也は、誰にでも優しい人間だ。だけど、本当の彼はそうじゃない。


本当の彼は、性根の腐った、真正の悪人だった。


彼の善意は、全て計算された偽物で、それが、私の憧れた彼の真実だった。


悔しくて、悲しくて、哀しくて。


家に帰った私は、もう一度、声を上げて泣いた。


受け入れたくなかった。けど、受け入れるしかなかった。


最後の一滴まで絞り出した私は、涙で汚れた顔を拭い、時計を見遣る。


本当なら、吉野くんとのデートを心待ちにしていただろう時間。


真実を知る前であれば。


とても悲しかった。だって、自分の初恋が終わってしまったから。


だけどそれ以上に、すごい、悔しい。


私の人を見る目もまだまだだな。


完全に騙されてしまっていた。


彼に惚れてしまっていた。


彼が、好きだった。


だから、、最後に一つだけ。


意を決した私は、服を着替え、化粧をし、家を出て向かう。


彼との、約束の場所へと。

まさかのモブキャラ的な、最初の三人組が一章のラスボス。

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