約束をしました
とても、とても悲しいことがあったのです。
とても、とても乗り越える自信がなかったのです。
とても、とても長い時間が過ぎたのです。
そういう過去が、あったのです。
今、私が思うのは。
あと、20年後まで、生きていなければならないということなのです。
あの日、私は、心を閉ざしました。
あの日、私は何も見えなくなりました。
あの日、私は消えたいと願ったのです。
でも、消えることは、できないのです。
あの夜、私は一人、町へと出ました。
私の求める、誰かを求めて。
あの夜、私はただ、歩き続けました。
私を求める、誰かを求めて。
あの夜、私は、足を止め、ふと、縁石に、腰を下ろしたのです。
長い時間、そこに、一人、いたのです。
長い時間、そこで、何も考えられず。
長い時間、そこから、動き出せなかったのです。
おねえさん。
どうしたの。
だいじょうぶ。
見ず知らずの、青年が、私に、声を、かけたのです。
真夜中三時半、一人で座っている私を見て、
真夜中三時半、一人で歩いていた青年は、
真夜中三時半、躊躇うことなく、声をかけたのです。
私は、何も言えず。
私は、足元を見つめ。
私は、顔をあげ、こたえました。
わたしは、
人を、
待っているから。
そっか。
はやく。
かえりなよ。
青年は、立ち去りました。
私の待ち人は、私を思ってくれる、誰か。
私の待ち人は、私が思う、誰か。
私の待ち人は、この世界にいない。
私の待ち人は、ここには来ないと、私は、知っていたのです。
待っていても来ない人を、待ちたいと思ったけれど。
待っていても、待ち人は、来ない。
待っていても来ないなら。
待たないでいいよね。
だれもいない。
私は、一人。
だれもいない。
私は、一人。
だれもいないけれど。
私に声をかけてくれた人がいる。
帰りなさいと言ってくれた人が、この世に一人、確かにいた。
今、私は一人だけれど。
今、私が生きていくことを決意したならば。
いつか。
私は。
今の私を振り返ることができるようになるでしょう。
誰もいない私は、自分に約束をしました。
この世界に、私が、一人だというのであれば。
私自身が、私に、約束しましょう。
私は、私を、見守る。
私は、私を、認める。
私は、私が、好き。
あの時、私は約束をしたのです。
60歳になった自分に、約束をしたのです。
今から必ず生きていくから。
60歳になったときに、私にメッセージをください。
今、私は生きているよと。
今、悲しい気持ちを乗り越えて、生きているよと。
今、私は、25歳のあなたを思っているよと。
長い夜を過ごした私は、
新しい朝を迎えました。
朝を迎えた私は、生きることができました。
いつの日からか、私はメッセージを送るようになりました。
今日は気分がいいよ。
今日はいいことがあったよ。
今日は涙が出たよ。
今日は少し落ち込んだよ。
今日は誰かを励ましたよ。
今日は自分をほめたよ。
40歳の私も今、25歳の私に、毎日メッセージを送り続け。
40歳の私も今、25歳の私を、応援し。
40歳の私は今、25歳の私が、40歳まで生きることを知っている。
悲しい気持ちを思い出す日はあるよ。
悲しい気持ちでつぶれそうになる日もあるよ。
悲しい気持ちは思い出すものになるよ。
あの日の悲しみを思い出して、
あの日の悲しみに飲まれることなく、
あの日の悲しみを持ったまま、今、生きているからね。
私が60歳になった時。
私は25歳の私を思うでしょう。
25歳の私が60歳の私にお願いをしたように、
60歳の私も、25歳の私にお願いをするかもしれません。
何をお願いするのかは、60歳になるまで、わからないのです。
だから私は、あと、20年、生きていかなければ、ならないのです。
今日は、エイプリルフールですね(o≧▽゜)o