第7話「ありったけの魔力」
試験官ミドルは息を呑む。
魔力測定器を破壊する程の魔力を秘めた2人と、剣士でありながら平均の4倍近い数値を叩きだした男。
これらを束ねるリーダーが今、魔力測定器の前へと足を踏み出した。
「(あれがこの神童たちを束ねるリーダーか……。見た目は幼く物静かだが、恐らく相当な実力を隠し持っているに違いない。一体どんな破壊魔法を出してくるんだ……!?)」
前者の3人の異常さに、ミドルのハードルは一気に高まる。
辺りを夜風が透き通り初め、真白の少女を覆う。
真剣な表情で両手を突き出したモモは、己に潜むあらゆる力と能力を駆使し……全身全霊を込めて魔法を放った──!
「──……ていっ!」
ぽんっとモモの手のひらから薄い水色をした泡ようなものが飛び出し、ふわふわと宙を舞うように的へと向かう。
だが、途中で力尽きたかのように地面へと落ちると"ポチャ"っと聞こえるか聞こえないか分からないくらいの小さな音を出して消えていった。
──辺りが静寂に包まれる。
「……す、スゲェ!!」
「……す、すげぇ!?」
「……す、すごーい!?」
「……え?」
三人の驚く表情と、試験官ミドルの間抜けな声が被さった。
疲れ果てたかのように地面へとへたり込むモモ、三人はそこへ駆け寄ってまるで宝石でも発見したかのように歓声を轟かせた。
「リ、リーダーが魔法を放ったぞ!!」
「いつの間に練習してたの!?」
「これで無能力者なんかじゃないって証明できるぞ!流石俺達のリーダーだ!」
オォー!!っとモモを担ぎ込む3人。
それに対しモモはやり遂げた顔で三人にグッドサインを出すと、とても誇らしい笑顔を見せつけた。
「や、やりました……!」
「いややりました……!じゃねぇよ!?なんで!?え?俺が間違っているのか?あの魔法は実はすごいものなのか!?」
混乱するミドルにクロエは説明する。
「いやあれはそもそも魔法というよりただの魔力の塊みたいなものに近いな。でもスゲェよリーダー!努力だけでここまで伸びるなんて、きっとアタシらよりも遥かに才能があるに違いねぇ!」
「人間はやっぱり成長できるってことなんだね、ルナ感動して涙が……」
「これはもう結果を見るまでもない。合格だろう、感動だけで合格できる」
「いや出来ねぇよ!?なんでそうなるんだ!?え、アンタはもしかして魔法が使えないのか!?」
「たった今使えました」
「ちっっっげぇよ!!あの二人見たいな強靭で破壊的な魔法は使えないのかって聞いてるんだよ!」
ミドルがこれまでにない迫力でツッコミを炸裂させるが、モモは首を傾げて頷く。
「はい、私は無能力者ですから」
ポカーンと口を開けて佇むミドル。
幾秒か経ってハッと正気に戻ると、首を振って何かの間違いだと自分へ言い聞かせた。
「ま、まぁいい。取り乱して悪かった。次の試験だ」
次の試験会場へと移る彼らの様子を理事長室から覗いていた理事長は大笑いをしていたが、彼らがこの事実を知ることは無かった。