第3話「エアラリス学園」
葉っぱを掻き分けた先には、明らかに怪しい男の集団が潜んでいた。
フードを被り、高価そうな物品をいくつも袋に入れてある。
クロエはその集団を発見し、小さく呟く。
「盗賊団か。……腕が鳴るぜ」
少女とは思えないほど男勝りなその物言いに、モモは目を閉じ小さく頷く。
「いきましょう」
「おっやるんだなリーダー!」
「いえ、無視していきましょう」
モモの訂正に静寂が訪れた。
「……え?えっちょ、おい!」
数秒置いて固まったクロエがハッとし、その場を立ち去るモモを追いかける。
「どうしてだ!ウチらなら楽勝だろう!」
「そういうのを慢心と言うんです。彼らを倒したところで今の私達になんのメリットもありませんし、相手の土俵で戦ってはリスクが大きすぎます。私達の命は一つですから」
「当然の判断だな」
「モモの言う通りだね~」
他の二人はモモの意見に賛同している様子だ。
しかしあまり素の頭が良くないクロエは、なぜ倒しにいかないのかと困惑している。
「土俵?リスク?なんのことだ?あ、おい待ってくれよリーダー!」
「学園を急ぐのが先決です、盗賊団に構っている暇はありません」
優しい声色で意外と堅実な言い方をするモモ。
もう長い時を過ごしているこの仲ではそれも気にならないものの、他の人が聞いたらそのギャップに驚くんじゃないだろうか。
これから向かう『学園』という単語に、モモが他の人達と上手くやっていけるか不安になるクロエだった。
◇◇◇
日が沈み始め、陽の光が街を橙色に照らしていく。
予定通り半日ほどかけて街──大都市イデアル国に着いたクロエたちは、その街の中でも更に大きな学園を眺めていた。
「わーおっきい……!ここがなんちゃら学園!」
「エアラリス学園」
ルナの天然さにブラッドがツッコむ。
ここイデアル国で最も大きいとされる学園──エアラリス学園。
国の中で最も優秀な生徒たちが度重なる試験を何度も受け面接をし、それを通った者だけが無事入学を果たせるという最難関学園でもある。
クロエたちはそんな最難関の学園に入ろうとしていたのだ。
「そんじゃいくか」
「確か理事長室に向かえばいいんだよね!」
「ああ」
普段からテンションの高いルナはさておき、クロエやブラッドも内心うずうずしている様子。
モモはそれらをみて、微笑ましく思いながら3人の後ろを歩いていた。
「──楽しい学園生活になるといいなぁ……」