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第2話「4人の神童と」


木々の生い茂る草原を歩きながら、ルナは下げていた両手を思いっきり上げて根を上げる。


「んもー!こんなんじゃ街まで辿り着かないよ~!」


背後にある森林で迷い、もう10日間ほどこの地方から抜け出せていない。

とぼとぼと歩くルナに対し、先頭で手際よくモンスターを追い払いながらまだまだ元気絶好調といった様子の少女、クロエがいた。


「ははは!いいじゃねぇか少しくらい。それにここで自然の恵みを味わっていってもバチは当たらねぇよ。もしかしたら大地の魔法を習得できるかもしんねーぞ?」


男勝りした喋り方で冗談紛れに言うクロエだが、そんな言葉をルナは真摯に受け止めて聞き入る。


「えっ!ほんと?」

「いやうそだが」

「もー!!」


三文芝居に騙されたルナは、ポコポコとクロエの背中を叩く。

クロエは少しあきれた様子で目前のモンスターを火の魔法でこんがり焼いてる。

森林地帯なのもあって精密な操作(コントロール)が求められるのはいうまでもないだろう。

そんな二人の背後から男が忽然と現れた。


「朝から二人とも元気だな」

「あ!ブラッドおはよ~!」

「おはようルナ、クロエも」

「おう、相変わらず神出鬼没だな」


ブラッドと呼ばれる男は二人に挨拶を交わすと、ふたつある鞘のうち上段の方を抜刀し、モンスターと戦っているルナとクロエの支援に回る。

森林地帯に蔓延るモンスターは比較的レベルが低い、故に数が多い。

魔法で一掃出来れば簡単な話なのだが、当然それは出来ない。というよりやってはならない。

唯一範囲魔法を取得しているクロエが火の範囲魔法をこの森林地帯で放ったとしよう。──お察しだ。

だがそれならば火じゃなく、土や風などの魔法を使用すれば問題はないじゃないか。とクロエは疑問に思ったが、パーティのリーダーに止められたため致し方なく抑えていた。

逆に斬撃や殴打と言った物理系の攻撃方法ならば、範囲を気にすることなく力を発揮できる。

つまり、剣術の才能に長けたブラッドが起床したことによって、このパーティの効率は格段に上がったのだ。


「今日中に着きそうか?」


ブラッドがクロエの隣に立ち先頭から襲い掛かる大蛇のようなモンスターを一刀両断する。


「まぁ夕暮れまでにはな」


そして体を分断されながらも上半身と下半身で捨て身の攻撃をする大蛇を、鬼火の様な青い火魔法で燃やし尽くす。

二人は息のまさにピッタリと言った感じだった。


「……おはようございます。ふわぁ……ぅん……」


そんな、モンスターと戦っている3人の中に無警戒の少女が割って入った。


「おはよ~モモ!」

「おはよう」

「おうリーダー、まだ寝ぼけてんのか?」

「……はい、少しだけ」


彼女は夜桜(よざくら)(もも)。このパーティの中を取り仕切るリーダーたる存在だ。

モモはまだ寝ぼけてるといった様子で、ウトウトとしながら歩いている。


「モモは朝弱いからね~」

「まだ寝ててもいいんだぞ?」


モモに迫りくる巨大な蜂のモンスターを風魔法の刃で真っ二つにするクロエ。そのあと料理でもするかのようにこんがりと焼いた。


「いえ、()に負担を掛けたくはありませんし。それにこの森の地形を頭に入れておきたいので」

「そうか、あんまり無理するなよ~」

「いざとなったら私がいるからねモモ!」


そう言ってルナはモモの頭を撫でる。

人類最古に途絶えた伝説魔法のひとつ、その中で最も有用とされる蘇生を可能とするただ一人の才女。それがルナ・クリニカル。

彼女が傍に居るだけで、そのパーティは言葉通りの不滅となる。


「ありがとうルナ」


優しく撫でるルナに対し、それを上回る優しい声で返事をするモモ。

そのあまりに純粋な感謝の言葉にルナは悶絶し、そして飛び上がった。


「んーっ!やっぱりモモは可愛いっ!!」

「ルナもとてもかわいいですよ」

「モモすきーっ!!」


思わず抱き着くルナ。その微笑ましい光景をやれやれと溜め息を尽きながらも見守るクロエとブラッド。

そこまで年の差がないはずなのに、まるで二人の親と二人の子供みたいな構図が出来上がっていた。


──それから約数十分ほど。4人は未だに迷宮のような森林地帯を歩いていると、ふと人の遠方から気配を感じる。


「……なにか」

「「「……──!」」」

「……いる」


モモの後に3人ともその存在に気づき、気配があった方角を注視する。

およそ200mほど先に強靭そうな男がフードを被り、辺りに罠を張っていた。

その姿は傭兵とも、護衛とも言えない。ただひとつ言える呼称名は──


「──!……あれは、盗賊団か?」


森林地帯のど真ん中で、クロエたちは盗賊団を見つけてしまった。



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